2021年11月12日

英国GDP(2021年7-9月期)-サービス業を中心に回復が進む

経済研究部 主任研究員 高山 武士

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1.結果の概要:前期比1.3%と減速したが、回復が継続

11月11日、英国国家統計局(ONS)はGDPの一次速報値(first quarterly estimate)および月次GDPを公表し、結果は以下の通りとなった。
 

【2021年7-9月期実質GDP、季節調整値)】
前期比は1.3%、予想1(1.5%)より下振れ、前期(5.5%)から減速した(図表1)
前年同期比は6.6%、予想(6.8%)より下振れ、前期(23.6%)から減速した

【月次実質GDP(7-9月)】
前月比は7月▲0.2%、8月0.2%、9月0.6%となり、7月は落ち込んだが、その後はプラス成長が続いた

(図表1)英国の実質GDP成長率(需要項目別寄与度)/(図表2)英国・ユーロ圏主要国のGDP水準(コロナ禍前との比較)
 
1 bloomberg集計の中央値。以下の予想も同様。

2.結果の詳細:サービス部門が着実に回復する一方、他部門の足取りは重い

英国の21年7-9月期の実質成長率は前期比1.3%(年率換算5.1%)となり、4-6月期に続き2四半期連続のプラス成長となり、実質GDPはコロナ禍前(19年10-12月)比で▲2.1%の水準まで回復した。ユーロ圏と比較すると、スペインやポルトガルといった一部の国よりは回復が進んだものの、ユーロ圏全体と比較するとやや遅れているという状況にある(図表2)。
(図表3)英国の月次GDPの推移 月次GDPでコロナ禍後の動きを追うと(図表3)、イングランドで行動制限の緩和がほぼ撤廃された7月(7月19日にほぼ撤廃)は前月比でやや低下したが、その後は改善が続いており、9月単月でみると、コロナ禍前(19年12月)まであと0.6%の水準まで迫っている(図表3)。
部門ごとの月次GDPの水準は、コロナ禍前と比較して、農林水産部門が▲12.4%、生産部門(鉱工業)が▲1.5%、建設部門が▲1.7%、サービス部門が▲0.2%であり、農林水産部門を除いて、コロナ禍前の水準にかなり近づいている。ただし、経済活動の再開により順調に回復が進んだサービス部門に対して、他部門の回復の足取りは重い。7-9月の建設部門は4-6月と比べて活動水準が低下し、生産部門の回復も鈍い。特に、生産部門は自動車生産の低迷から直近の9月の成長率がマイナスとなった。

図表4ではより細かい産業分類の月次GDP(2019年12月比)を、コロナ禍後の昨年ピーク(20年10月)、直近ボトム(21年1月)、最新値(9月)の3種類で示している。9月は行動制限の影響を大きく受けていた住居・飲食業が大きく回復し、コロナ禍前との比較でプラス圏(4.5%)に到達、芸術・娯楽業(▲4.1%)もコロナ禍前の水準に近づき、これらがサービス部門全体の回復に寄与している。一方、サービス部門のなかでは、その他サービス業(▲19.8%)の回復が遅れている。
(図表4)業種別のGDP水準
成長率を需要項目別に確認すると、7-9月期では、個人消費が前期比2.0%(4-6月期7.1%)、政府消費が同0.9%(8.1%)、投資が同0.8%(0.8%)、輸出が同▲1.9%(6.2%)、輸入が同2.5%(2.4%)となった。純輸出の前期比寄与度は▲1.13%ポイント(0.95%ポイント)、コロナ禍前比では、個人消費が▲5.0%、政府消費が8.8%、投資が▲3.8%、輸出が▲22.2%、輸入が▲11.4%だった。個人消費を中心に回復が進む一方、EU離脱後の貿易量は引き続き少ない。
(図表5)英国の名目GDP(所得別) 最後に名目GDPを確認すると、7-9月期は前期比1.4%(4-6月期は3.1%)となった(図表5)。雇用維持政策の縮小により補助金控除後の税負担が増加、また雇用者報酬も順調に増えている。営業余剰は前期比で減少しているものの、ONSは推計の際の調整値が大きくなっており、調整値を除けば増加が続いている点を補足している。
 
 

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経済研究部   主任研究員

高山 武士 (たかやま たけし)

研究・専門分野
欧州経済、世界経済

(2021年11月12日「経済・金融フラッシュ」)

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