2021年10月01日

日銀短観(9月調査)~大企業製造業の景況感改善は鈍化、非製造業は低迷継続、先行きの見方は総じて慎重

経済研究部 上席エコノミスト 上野 剛志

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■要旨
 
  1. 9月短観では、堅調な海外経済や設備投資需要の持ち直しを受けて注目度の高い大企業製造業の業況判断DIが18と前回6月調査から4ポイント上昇した。景況感は堅調を維持しているものの、半導体をはじめとする部品不足の深刻化や原材料価格の高騰が抑制要因となり、改善ペースは鈍化している。また、大企業非製造業では、原材料の高騰に加えて行動制限措置の延長・拡大が対面サービス需要の逆風となり、業況判断DIが1ポイントの上昇に留まった。大企業(全産業)と中小企業(同)の景況感格差は18ポイントと2011年3月調査以来の水準に拡大している。大企業に比べて海外経済回復の恩恵を受けにくい中小企業の回復が遅れている。
     
  2. 先行きの景況感は総じて弱含みとなった。製造業では自動車の減産や中国経済減速による影響への懸念が現れている。一方、非製造業では冬場に向けてコロナ感染の再拡大が懸念される。特に日本は脆弱な医療体制が行動制限措置導入に繋がりやすいだけに、楽観に傾きにくい。
     
  3. 2021年度の設備投資計画(全規模全産業)は、前年度比7.9%増へ上方修正され、前年度の落ち込みから大幅に持ち直すとの計画が維持された。例年、9月調査では中小企業において計画の具体化に伴って上方修正される傾向が強いほか、製造業を中心に企業収益が持ち直した結果として投資余力が回復していること、昨年度から今年度へ先送りされた計画が存在することがその理由として考えられる。ただし、コロナ禍の収束が未だ見通せないうえ、厳しい事業環境が続く対面サービス業の投資低迷が抑制に働いたとみられ、6月調査からの上方修正幅は例年の平均値をやや下回った。
     
  4. ソフトウェア投資額は前回から若干下方修正されたものの、前年度比14.3%増と大幅な増額計画が維持されている。企業において、オンライン需要への対応やDX、リモートワークへの対応などが進められているとみられる。
業況判断DIの製造業・非製造業間格差がさらに拡大(大企業)/主な業種の業況判断DI(大企業)
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経済研究部   上席エコノミスト

上野 剛志 (うえの つよし)

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

経歴
  • ・ 1998年 日本生命保険相互会社入社
    ・ 2007年 日本経済研究センター派遣
    ・ 2008年 米シンクタンクThe Conference Board派遣
    ・ 2009年 ニッセイ基礎研究所

    ・ 順天堂大学・国際教養学部非常勤講師を兼務(2015~16年度)

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