2021年08月31日

鉱工業生産21年7月-自動車生産は低迷が続くが、全体としては堅調を維持

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.7月の生産は2ヵ月ぶりの低下

鉱工業生産・出荷・在庫指数の推移 経済産業省が8月31日に公表した鉱工業指数によると、21年7月の鉱工業生産指数は前月比▲1.5%(6月:同6.5%)と2ヵ月ぶりに低下したが、事前の市場予想(QUICK集計:前月比▲2.5%、当社予想は同▲2.3%)は上回る結果となった。出荷指数は前月比▲0.6%と2ヵ月ぶりの低下、在庫指数は前月比▲0.6%と2ヵ月ぶりの低下となった。

7月の生産を業種別に見ると、内外の設備投資の回復を受けて、生産用機械が前月比1.6%と好調を維持し、デジタル関連需要の強さを背景に、電子部品・デバイスも同0.9%の上昇となったが、半導体不足の影響緩和で6月に前月比22.6%と急回復した自動車が同▲3.1%と落ち込んだ。
財別の出荷動向 財別の出荷動向を見ると、設備投資のうち機械投資の一致指標である資本財出荷指数(除く輸送機械)は21年4-6月期の前期比9.9%の後、7月は前月比▲0.8%となった。また、建設投資の一致指標である建設財出荷指数は21年4-6月期の前期比4.2%の後、7月は前月比▲2.4%となった。7月は資本財(除く輸送機械)、建設財ともに低下したが、均してみれば底堅さを維持している。GDP統計の設備投資は21年1-3月期に前期比▲1.3%の減少となった後、4-6月期は同1.7%の増加となった。製造業を中心とした企業収益の改善を背景に設備投資は持ち直しの動きが続いていると判断される。

消費財出荷指数は21年4-6月期の前期比▲2.9%の後、7月は前月比0.1%となった。耐久消費財は前月比2.4%の上昇となったが、非耐久消費財が同▲0.8%の低下となった。

GDP統計の民間消費は21年1-3月期に前期比▲1.0%の減少となった後、4-6月期は同0.8%の増加となったが、均してみれば低水準で横ばい圏の動きが続いている。7月以降も緊急事態宣言が継続していることから、対面型サービスを中心に消費の低迷は長引くことが見込まれる。21年7-9月期の民間消費は2四半期ぶりの減少となる可能性が高い。

2.自動車の下振れリスクは高いが、全体としては堅調を維持

製造工業生産予測指数は、21年8月が前月比3.4%、9月が同1.0%となった。生産計画の修正状況を示す実現率(7月)、予測修正率(8月)はそれぞれ▲2.8%、▲1.2%であった。

予測指数を業種別にみると、6月に前月比17.6%と急回復した輸送機械は、7月に同▲3.6%と再び落ち込んだ後、予測指数は8月が同▲7.3%、9月が同3.1%となっている。東南アジアにおける新型コロナウイルス感染拡大を受けた部品調達難の影響が十分に織り込まれていない可能性もあり、自動車生産は当面下振れリスクの高い状態が続くだろう。
最近の実現率、予測修正率の推移/輸送機械の生産、在庫動向
21年7月の生産指数を8、9月の予測指数で先延ばしすると、7-9月期の生産は前期比3.0%となる。緊急事態宣言やまん延防止等重点措置の悪影響はサービス業を中心に表れ、製造業への影響は限定的にとどまっている。自動車の低迷はしばらく続くものの、生産用機械、汎用・業務用機械、電子部品・デバイスなどのその他の業種が好調を維持することにより、製造業の生産活動は全体としては先行きも堅調を維持することが予想される。
 
 

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

(2021年08月31日「経済・金融フラッシュ」)

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