2021年09月03日

参加者不在の市場は機能しない

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官庁や取引所が主導して新しい市場を創設し金融商品を導入する際に、海外の類例を参考にすることがある。ところが、これまでの例では、市場が作られたものの、ご祝儀取引が途絶えてしまうと取引量が枯渇し、機能しなくなった市場が幾つか見られる。

資本主義経済において、市場は重要な役割を果たす存在である。行き過ぎを抑えるために介入を求められることもあるが、“神の見えざる手”が機能するのは、需要と供給とが出会うことで市場価格が形成されるためである。ところが、場の提供者主導だったり、監督目的などで人為的に作られた市場では、参加者のニーズに適合せず、出会いがなくなり使えない市場になることがある。

当面の課題対応や市場改革の実績作りといった目的などから、安易に新しい市場の創設を企むことは、必ずしも適切なものでないかもしれない。参加者のニーズを把握し、それに沿った市場でなければ、利用者が集まらず市場は十分に機能しないことだろう。

企業がESG経営に取組み、機関投資家がESG投資を意識することは世界的な風潮であり、それに抗う必要はない。しかし、風潮にかこつけて関連する権限や市場を奪い合うことは、国民経済の観点から考えると、決して望ましいものではないと考えられる。
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(2021年09月03日「ニッセイ年金ストラテジー」)

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