2021年08月20日

消費者物価(全国21年7月)-基準改定後のコアCPI上昇率はマイナスが継続

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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1.新基準のコアCPI上昇率はマイナスが継続

消費者物価指数の推移 総務省が8月20日に公表した消費者物価指数によると、21年7月の消費者物価(全国、生鮮食品を除く総合、以下コアCPI)は前年比▲0.2%(6月:同▲0.5%)となり、下落率は前月から0.3ポイント縮小した。事前の市場予想(QUICK集計:▲0.4%、当社予想も▲0.4%)を上回る結果であった。

生鮮食品及びエネルギーを除く総合(コアコアCPI)は前年比▲0.6%(6月:同▲0.9%)、総合は前年比▲0.3%(6月:同▲0.5%)となった。
消費者物価指数は今月分より2015年基準から2020年基準へと切り替えられた。基準改定に伴うコアCPI上昇率の改定幅は、21年1~6月の平均では▲0.4%ポイントだが、基準改定直前月の6月は▲0.7%の大幅下方改定となった。4月に開始された大手各社のスマートフォン向け低価格プランによる携帯電話通信料の大幅下落の影響が旧基準よりも新基準のほうが大きくなったことがその主因である。
消費者物価上昇率(生鮮食品を除く総合)基準改定による改定幅の推移/基準改定で下方改定された消費者物価上昇率(生鮮食品を除く総合)
コアCPIの内訳をみると、電気代(6月:前年比▲1.7%→7月:同▲0.3%)、ガス代(6月:前年比▲1.3%→7月:同▲1.2%)の下落幅が縮小し、ガソリン(6月:前年比17.9%→7月:同19.6%)、灯油(6月:前年比21.9%→7月:同25.2%)の上昇幅が拡大したことから、エネルギー価格の上昇率が6月の前年比4.3%から同5.8%へと拡大した。
消費者物価指数(生鮮食品除く、全国)の要因分解 また、食料(生鮮食品を除く)は前年比0.1%(6月:同▲0.1%)と9ヵ月ぶりのプラスとなった。一般外食が前年比0.4%(6月:同0.3%)と伸びを高めたことに加え、原材料価格の高騰を受けて食用油、マーガリン、調理食品などの上昇率が高まった。

さらに、宿泊料の伸びが6月の前年比0.6%から同17.3%へと急速に高まったことがコアCPIを大きく押し上げた。

コアCPI上昇率を寄与度分解すると、エネルギーが0.43%(6月:0.32%)、食料(生鮮食品を除く)が0.02%(6月:▲0.02%)、携帯電話通信料が▲1.13%(6月:同▲1.08%)、その他が0.48%(6月:0.29%)であった。

2.コアCPI上昇率のプラス転化は9月と予想

旧基準のコアCPI上昇率は21年5月に1年2ヵ月ぶりにプラスに転じていたが、新基準では20年8月以降マイナスが続いているという形に改められた。
コアCPIに対するエネルギーの寄与度 先行きについては、既往の原油高の影響でエネルギー価格の上昇ペースが加速し、コアCPI上昇率への寄与度は7月の0.43%から年末には1%近くまで高まることが見込まれる。

また、ほぼゼロ%の伸びにとどまっている食料(生鮮食品を除く)だが、川上段階の輸入物価、国内企業物価ではすでに価格が大きく上昇しており、今後は原材料価格上昇によるコスト増を転嫁する動きが徐々に広がる可能性が高い。

さらに、8~12月は前年の「Go Toトラベル」による宿泊料の大幅下落の裏が出ることもコアCPIの押し上げ要因となる。

現時点では、コアCPI上昇率は旧基準から4ヵ月遅れの21年9月にプラスに転じ、年末にはゼロ%台半ばまで伸びを高めると予想している。「Go Toトラベル」の裏が出ることによる押し上げ効果が剥落する22年1月以降はいったん伸びが低下するが、携帯電話通信料の大幅下落の影響が一巡する22年度入り後には、コアCPI上昇率はゼロ%台後半まで伸びを高める可能性が高い。
 
 

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

(2021年08月20日「経済・金融フラッシュ」)

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