2026年02月05日

インドネシアGDP(25年10-12月期)~内需主導で約3ぶり高成長、外需は一時調整

経済研究部   准主任研究員

斉藤 誠 (さいとう まこと)

研究・専門分野
東南アジア経済、インド経済

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【概要・見方】

インドネシアの2025年10–12月期実質GDP成長率は前年同期比5.39%となり、2022年半ば以来、約3年ぶりの高水準となった(図表1)。設備投資の回復とサービス業の拡大を軸に、内需主導で比較的高い成長率を実現した。 

内需では、家計消費が引き続き堅調に推移したほか、機械・設備を中心に設備投資が回復基調を強めた。2025年9月に投入された16.2兆ルピア規模の経済対策の一部が年末にかけて顕在化し、現金給付や観光支援、公共交通補助などを通じて、家計消費やサービス需要を下支えしたと考えられる。これらの政策効果は、2026年前半にかけてさらに広がる見通しである。

外需については、財輸出の伸びが鈍化した。7–9月期にみられた駆け込み輸出の反動に加え、米国の通商政策を巡る不透明感が、企業の輸出姿勢を慎重化させた可能性がある。ただし、12月には輸出が回復しており、輸出全体が減速局面に入ったとは言い難い。一方、輸入は資本財を中心に加速し、その結果、純輸出の成長寄与は縮小した。

産業別にみると、第三次産業が引き続き成長の主軸となり、運輸・倉庫業や情報・通信、宿泊・飲食業などのサービス関連が堅調に拡大した。物流や人流の回復が続くなか、卸売・小売業も安定した伸びを維持し、内需の底堅さを裏付けている。第二次産業では、製造業が堅調に推移したものの、鉱業・採石業の減少が続き、全体としては緩やかな成長にとどまった。一方、第一次産業は前期に続き堅調な拡大を維持した。
(図表1)実質GDP成長率(支出別寄与度)/(図表2)支出別の成長率

【支出別の詳細】

家計最終消費支出は前年同期比5.11%と、交通・通信や外食・宿泊などを中心に堅調に推移し、前期(同4.89%)から加速した(図表2)。消費マインドの持ち直しが、引き続き成長を下支えしている。

政府最終消費支出は前年同期比4.55%となり、前期(同5.66%)からやや鈍化した。

総固定資本形成は前年同期比6.12%と、前期(同5.04%)から加速した。内訳をみると、その他の設備投資(同▲5.05%)や住宅(同3.74%)は低調だったものの、機械・設備投資(同22.16%)が大幅に増加したほか、輸送機器も同7.29%と伸びが加速し、全体を押し上げた。

財・サービス輸出は前年同期比3.25%と、前期(同9.14%)から伸びが鈍化した。内訳では、財輸出が同3.39%、サービス輸出が同1.81%となり、いずれも増勢が弱まった。外国人観光客数は堅調に推移したものの、1人当たり消費額の伸び悩みや観光以外のサービス輸出の弱さを背景に、GDP統計上のサービス輸出は伸びが鈍化したとみられる。

一方、財・サービス輸入は同3.96%と、前期(同0.86%)から加速した。内訳をみると、財輸入は同5.07%と伸びが高まった一方、サービス輸入は同▲3.39%と減少した。その結果、純輸出の成長率寄与度は▲0.01%ポイントとなり、前期の+2.05%ポイントから大きく縮小した。

【産業別の詳細】

第三次産業の堅調な拡大が続くなか、第一次産業が回復した(図表3)。

第三次産業は前年同期比6.48%と、前期(同6.79%)から小幅に鈍化したものの、引き続き堅調な伸びを維持した。内訳をみると、運輸・倉庫業(同8.98%)や情報・通信(同8.09%)、ビジネスサービス(同7.90%)、宿泊・飲食業(同7.15%)が高い伸びを示したほか、構成割合の大きい卸売・小売業(同6.07%)も堅調に推移した。加えて、金融・保険(同7.92%)が回復した。一方、公共・防衛・社会保障(同1.63%)や教育(同3.43%)、不動産(同3.71%)は緩やかな伸びにとどまった。

第二次産業は前年同期比3.65%と、前期(同3.69%)に続いて緩やかな成長にとどまった。内訳をみると、全体の約2割を占める製造業(同5.40%)は堅調に推移したものの(図表4)、鉱業・採石業(同▲1.31%)の減少が続いたほか、建設業(同3.89%)と電気・ガス・水供給業(同3.55%)は伸び悩んだ。

第一次産業は前年同期比5.14%と、前期(同4.93%)に続いて堅調な拡大となった。
(図表3)実質GDP成長率(産業別寄与度)/(図表4)産業別の実質GDP成長率

【今後の注目点】

今後は、足元の経済成長を支えている設備投資の回復が持続するかが最大の注目点となる。10–12月期に大幅な増加を示した機械・設備投資が、生産能力の拡張や中期的な投資計画につながるかに加え、政府による経済対策の効果が2026年前半にかけて内需をどの程度下支えするかが焦点となろう。

政策面では、プラボウォ政権が任期満了を迎える2029年までに実質GDP成長率を8%へ引き上げる目標を掲げている点が注目される。2026年度予算案では、インフラ整備や産業基盤の強化、食料安全保障、社会支出の拡充などが重視されており、成長率の底上げを意識した姿勢が示されている。一方、金融政策については、インドネシア中銀が1月の会合でも政策金利を4.75%に据え置き、4会合連続で現状維持となった。インフレの上昇傾向やルピア安への警戒から金融緩和に踏み切りにくい環境が続いており、当面は財政政策や構造改革による成長押し上げ効果への依存度が高まるとみられる。

外需については、10–11月にみられた輸出の一時的な鈍化と12月の回復を踏まえると、現時点で構造的な減速局面に入ったと判断するのは早計である。もっとも、米国の通商政策を巡る不透明感は引き続き残っており、輸出の先行きは外部環境に左右されやすい状況が続くとみられる。

全体として、インドネシア経済は当面、内需を軸とした比較的高めの成長を維持する可能性がある。一方で、8%成長の実現には、財政運営と金融政策の制約を踏まえつつ、着実に政策を実行していく力が問われる局面にある。

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(2026年02月05日「経済・金融フラッシュ」)

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経済研究部   准主任研究員

斉藤 誠 (さいとう まこと)

研究・専門分野
東南アジア経済、インド経済

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