2026年01月29日

フィリピンGDP(25年10-12月期)~公共投資の遅れが響き、成長率は低水準にとどまる

経済研究部   准主任研究員

斉藤 誠 (さいとう まこと)

研究・専門分野
東南アジア経済、インド経済

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【概要】

フィリピンの2025年10-12月期の実質GDP成長率は前年同期比3.0%1となり、前期(7-9月期:同3.9%)から一段と減速し、市場予想2の3.7%を大きく下回った(図表1)。国内需要の弱さが続く中、成長率は低調な水準にとどまり、景気の減速感が一層明確となった。

支出別に見ると、民間消費(同3.8%)や政府消費(同3.7%)は底堅い伸びを維持したものの、総固定資本形成が同▲7.2%と大きく落ち込んだ。とりわけ建設投資の減少が成長の重石となった。一方、財・サービス輸出は同13.2%と二桁の伸びを示し、純輸出の成長率寄与度は+1.9%ポイントへと拡大した。

産業別にみると、建設業の不振を主因に鉱工業が成長率を押し下げた。建設業(同▲7.1%)は政府の汚職スキャンダルの影響から、公共事業における執行遅延や投資計画の見直しが生じた可能性が高い。この影響は基礎金属や化学製品などの素材系製造業にも波及し、鉱工業全体の伸び(同▲0.9%)を抑制した。一方、GDPの約6割を占めるサービス業(同5.2%)は、内需関連分野に加え、教育や保健・社会福祉といった公共・準公共サービスが堅調に拡大し、景気の下支え役となった。
 
1 2026年1月29日、フィリピン統計庁(PSA)が2025年10-12月期の国内総生産(GDP)統計を公表した。
2 Bloomberg調査

【支出別の詳細】

民間消費は前年同期比3.8%(前期:同4.1%)と小幅に低下した(図表2)。内訳をみると、交通(同5.9%)が持ち直した一方、食料・飲料(同3.8%)が鈍化し、住宅・水道光熱費(同▲0.1%)が停滞した。サービス関連を中心に一定の底堅さは維持されたものの、家計消費全体としては力強さを欠く展開が続いている。

政府消費は同3.7%となり、前期の同5.8%から減速した。

総固定資本形成は同▲7.2%(前期:同0.5%)と減少に転じた。設備投資が同▲2.6%と減少したほか、建設投資が▲10.1%と大幅に落ち込んだ。設備投資の内訳を見ると、全体の約半分を占める輸送用機器(同▲2.1%)や産業用機械(同▲10.2%)と減少したほか、一般工業機械は同2.8%とプラスを維持したものの、伸びは前期から鈍化した。

財・サービス輸出は同13.2%(前期:同7.4%)と二桁の伸びとなった。内訳では、財輸出が同22.8%と大きく加速した一方、サービス輸出は同2.5%と緩やかな増加にとどまった。また財・サービス輸入は同3.5%(前期:同3.2%)と小幅に加速し、財輸入(同3.3%)が増加する一方、サービス輸入(同4.2%)は減速した。その結果、純輸出は成長率寄与度が+1.9%ポイントとなり、前期の+0.9%ポイントから拡大し、外需が成長率を押し上げる構図が一段と明確となった。
(図表1)実質GDP成長率(支出別寄与度)/(図表2)支出別の成長率

【産業別の詳細】

産業別に見ると、鉱工業の減少が成長率を押し下げる一方、サービス業が引き続き景気の下支え役となった(図表3)。

鉱工業は前年同期比▲0.9%となり、前期の同0.7%から減少に転じた。まず製造業は同1.6%増と小幅なプラスにとどまった(図表4)。製造業の内訳をみると、主力のコンピュータ・電子機器(同11.1%)が大きく加速し、食品加工(同6.2%増)も堅調だった一方、基礎金属(同▲38.0%)や化学製品(同▲10.7%)、石油製品(同▲6.7%)が低迷し、製造業全体の伸びを抑制する要因となった。また建設業(同▲7.1%)と電気・ガス・水道(同▲1.6%)が低迷した。一方で鉱業・採石業(同5.3%)は2四半期連続で堅調な伸びとなった。

GDPの約6割を占めるサービス業は前年同期比5.2%となり、前期の同5.4%から小幅に低下したものの、底堅い伸びを維持した。内訳を見ると、宿泊・飲食業(同5.9%増)や運輸・倉庫業(同5.0%)、卸売・小売業(同4.6%)といった内需・対面型サービスが引き続き安定した伸びを示したほか、金融・保険業(同5.6%)や不動産業(同4.5%)も堅調に推移した。加えて、公共行政・防衛(同7.9%)、教育(同7.8%)、保健・社会福祉サービス(同11.5%)など公共・準公共サービスの高い伸びが、サービス業全体の成長を押し上げた。一方、情報通信(同2.1%)は緩やかな伸びにとどまった。

農林水産業は同1.0%(前期:同2.9%)と鈍化した。家禽・卵生産(同8.9%)が好調だったほか、漁業・養殖業(同4.1%)と畜産(同1.5%)が改善したものの、パライ(同▲5.2%)やサトウキビ(同▲0.3%)などの主要作物の減少が重石となった。
(図表3)実質GDP成長率(産業別寄与度)/(図表4)産業別の成長率

【今後の注目点】

(図表5)インフレ率と政策金利 2025年後半にかけての成長減速は、金融引き締めの影響が残る中、公共事業の執行遅延を背景に投資が急減速したことが主因とみられる。10–12月期も成長率が3%にとどまり、短期的には低成長が続く可能性がある。

金融環境については、フィリピン中央銀行(BSP)が2025年12月に政策金利を4.5%へ引き下げた(図表5)。金融緩和効果は徐々に浸透しつつあるが、今後の追加利下げ余地は限られてきており、金利面からの景気押し上げ効果は限定的とみられる。

外部環境は依然として不透明である。10–12月期には財輸出が二桁増となるなど外需が成長を下支えしたが、米国の関税政策を巡る不確実性や世界的な需要減速を踏まえると、こうした輸出の好調が持続するかは見通しにくい。加えて、観光を中心とするサービス輸出は回復が遅れており、外需全体が安定的な成長源となるまでには時間を要しよう。

財政面では、政府が2026年度予算で公共インフラ整備計画「ビルド・ベター・モア」に約1兆5,560億ペソ(約4兆円)を配分しており、公共投資は中期的な景気下支え要因となる見込みである。ただし、公共事業の執行は新年度入り後に持ち直す可能性があるものの、再承認や調達プロセスの遅れから、その効果が本格化する時期は後ずれするリスクも残る。

以上を踏まえると、2026年の景気は年初にかけて弱含んだ後、年後半にかけて持ち直す展開が想定される。ただし、外需環境の悪化や公共投資の回復遅れ次第では下振れリスクも残る。2026年通年の実質GDP成長率は5%前後になる見通しである。

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(2026年01月29日「経済・金融フラッシュ」)

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