2025年12月19日

英国金融政策(12月MPC公表)-票が分断するなか、今回は利下げを決定

経済研究部   主任研究員

高山 武士 (たかやま たけし)

研究・専門分野
欧州経済、世界経済

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1.結果の概要:政策金利の引き下げを決定

英中央銀行のイングランド銀行(BOE:Bank of England)は金融政策委員会(MPC:Monetary Policy Committee)を開催し、12月18日に金融政策の方針を公表した。概要は以下の通り。
 

【金融政策決定内容】
政策金利(バンクレート)を3.75%に引き下げる(5対4、4名は4.00%で据え置きを主張)

【議事要旨等(趣旨)】
前回の会合以降、よりインフレの持続性が強まるリスクは目立たなくなる一方、中期的な需要の弱さから生じる中期でのリスクは残っている
現在の証拠に基づけば、政策金利は緩やかな低下経路を継続する可能性が高い。しかし、さらなる政策緩和の判断はより慎重に(closer call)なるだろう

2.金融政策の評価:利下げサイクルは継続見込みだが、判断はより慎重に

イングランド銀行は今回のMPCで市場予想の通り1、政策金利を3.75%に引き下げた。決定は5対4(4名は据え置き主張)であり、据え置き派と利下げ派がほぼ拮抗する結果となった。なお、前回11月会合でも5対4と票が割れていた。比較的中立派であるベイリー総裁のみが、判断を変更しており、前回は(政府の予算案が未公表だったこともあり)さらなる証拠を待つことに価値があるとして据え置きに投票していたが、(政府の予算案を受けた見通しへの暫定的な評価も踏まえて)今回は利下げに投票した形となった。

声明文では経済やインフレ率の評価を「前回の会合以降、よりインフレの持続性が強まるリスクは目立たなくなる一方、中期的な需要の弱さから生じる中期でのリスクは残っている」とし、インフレ上振れリスクが軽減しているとされた。さらに、前回か引き続き「政策金利は緩やかな低下経路を継続する可能性が高い」と利下げサイクルの途中であることを示唆する表現が残った。一方で、「しかし、さらなる政策緩和の判断はより慎重に(closer call)なるだろう」として、利下げペースは利下げペースが緩慢になることも明示された。市場参加者は11月時点の予想中央値で26年末までにさらに2回の利下げを実施し、3.25%まで引き下げるとしている(なお、「中立金利」の予想中央値は3.0%)。

財政措置の効果もあってインフレ率は一時的に2%近くまで低下する公算が高くなったものの、実際の政策決定では、今回据え置きを主張したタカ派メンバーが構造的なインフレ圧力の懸念を抱いていることもあって、当面は利下げ派と据え置き派の意見が分かれる状況が続くと見られる。
 
1 例えば、ブルームバーグの予想中央値。

3.金融政策の方針

今回のMPCで発表された金融政策の概要は以下の通り。
 
  • 12月17日に終了した会合で、委員会は多数決により政策金利(バンクレート)を3.75%に引き下げることを決定した(5対4で決定2)、4名は政策金利を4.00%に維持することを希望した
 
  • CPIインフレ率は前回の会合以降に3.2%に低下した
    • 2%目標は上回っているものの、現時点では短期においてより迅速に目標に向かって低下すると見られる
    • 制限的な金融政策を反映し、また経済成長が緩慢で、労働市場の弛み(slack)が生じるなかで賃金上昇率やサービスインフレも緩和を続けている
 
  • 金融政策はCPIインフレが中期的に2%で落ち着き、その達成を取り巻くリスクをバランスさせるよう設定される
    • 前回の会合以降、よりインフレの持続性が強まるリスクは目立たなくなる一方、中期的な需要の弱さから生じる中期でのリスクは残っている
 
  • さらなる金融政策の緩和の程度はインフレ見通しの動向に依存する
    • 24年8月以降の政策金利は1.50%ポイント引き下げられ、金融政策の制限度合いは低下した
    • 現在の証拠に基づけば、政策金利は緩やかな低下経路を継続する可能性が高い
    • しかし、さらなる政策緩和の判断はより慎重に(closer call)なるだろう
 
 
2 政策金利の維持を主張したのは、グリーン委員、ロンバルデリ委員(副総裁)、マン委員、ピル委員。前回は据え置きが決定されるなかで、ブリーデン委員(副総裁)、ディングラ委員、ラムスデン委員(副総裁)、テイラー委員が利下げを主張した。

4.議事要旨の概要

議事要旨の概要(上記金融政策の方針で触れられていない部分)において注目した内容(趣旨)は以下の通り。
 
(現在の経済状況)
  • 予算案で発表された措置のいくつか、特に家計のエネルギーに課されている規制費用の一時的な削減、燃料税の変更は4月のインフレ率を0.5%ポイント引き下げると見られる
    • 11月以降の予算報道やその他の最近のCPIに関する報道、ポンド建て石油・ガスの先物曲線の下方シフトにより、中銀スタッフは26年4-6月期のCPIインフレが2%に接近すると見ている
 
(秋季予算)
  • 11月26日に秋季予算が公表され、予算責任局から経済・財政見通しが示された
    • 追加の財政措置には次が含まれる
      • 短期的な支出増として、事前に公表されていた社会保障給付削減の撤回、ユニバーサルクレジットの児童2人上限の撤廃
      • 短期を超えてこれらの支出増は、将来の増税、主に所得税の基準値引き上げの2030-31年までの凍結によって相殺される見込みである
      • より小さな財源として、給与天引き年金拠出に対する国民保険料の引き上げ、不動産・貯蓄・配当税の引き上げがある
 
  • 11月の金融政策報告書と比較して、中銀スタッフはこれらの追加措置が今後2年間のGDPをおよそ0.1-0.2%押し上げ、その後3年目以降は将来の増税を通じた財政緊縮によりGDPを押し下げると暫定的に見積もった
 
  • 予算にはまたインフレに短期的に直接的な影響を及ぼす一連の措置が含まれ、4月のCPIインフレ率を0.5%ポイント低下させると見られた
    • その後、予算政策の間接的な影響により、2027年および2028年のインフレ率はおよそ0.1-0.2%ポイント押し上げられると見られる
 
  • 委員会は計画で示されている今後数年間の財政全体について確認した
    • これまで公表された財政政策は累積で今後3年間のGDPギャップをおよそ1%ポイント拡大させると見られる
    • この予想される拡大に対して3年後より先については、予算による追加の寄与はほとんどない
    • また、報告書では中央見通しに加えて、具体的な金融政策の対応策を示す詳細なシナリオが提供されている
 
(概要と委員会での議論)
  • 総合インフレ率は短期的に目標まで低下すると見られるが、委員会は中期的にインフレ率が2%で持続的に安定することに引き続き焦点をあてる
    • 最新のデータは総じて好ましいものだが、リスクは双方向に存在する
 
  • 引き続きメンバー間でインフレに対する主なリスクに対する重みは異なっている
    • 最近の高インフレによる2次的効果をより懸念する何人かのメンバーは予算によるインフレ率への短期的な影響はこれらのリスクをある程度軽減する可能性がある
    • しかしながら、特に目標を上回るインフレ率が長期化したことを踏まえると、持続性のリスクは依然として残っており、フォワードルッキングな指標では来年の賃金上昇率が引き続き高く推移する可能性が示唆されていた
    • これまでインフレ持続の懸念をあまり抱いていなかったメンバーにとっては、残る上振れリスクがさらに軽減し、需要や労働市場の急速な悪化の可能性による下振れリスクがより明確に重要となった
 
(当面の政策決定)
  • 5名のメンバー(ベイリー、ブリーデン、ディングラ、ラムスデン、テイラー)は今回の会合で政策金利を0.25%引き下げることを希望した
    • ディスインフレ過程は順調に進んでおり、鍵となる疑問はどの程度インフレ率が2%で安定するかにある
    • このグループのうち3名(ベイリー、ブリーデン、ラムスデン)はインフレの上振れリスクが引き続き解消していると判断したが、特に労働市場や賃金の最新状況の評価を続けるとした
    • このグループのうち2名(ディングラ、テイラー)は経済活動とインフレ率の下振れリスクをより重視している
    • 消費の低迷と失業率の上昇は、インフレの持続性を抑制するにはすでに十分だった
 
  • 4名のメンバー(グリーン、ロンバルデリ、マン、ピル)は今回の会合で政策金利を4%に維持することを希望し、構造的な要因から生じるものも含めてインフレの持続性をより重視した
    • 最近のディスインフレの進展を認めつつも、サービスインフレ、賃金上昇率、インフレ期待に関する現在およびフォワードルッキングな証拠は目標と整合性な水準より引き続き高かった
    • これは賃金と価格設定行動のより持続的な変化の兆候である可能性がある
    • これらのメンバーは金融政策が実質的に制限的であるとは確信していなかった
    • こうした上振れリスクを緩和するには、より長期の金融引き締めが正当化された

本資料記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と完全性を保証するものではありません。
また、本資料は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。

(2025年12月19日「経済・金融フラッシュ」)

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