2025年12月15日

株式バブルと実体経済-AIバブルの潜在リスク

経済研究部   主任研究員

高山 武士 (たかやま たけし)

研究・専門分野
欧州経済、世界経済

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■要旨

・地政学リスクや米国の政策不確実性が高まるなかでも、AI関連の高成長期待を背景に株価は堅調に推移しており「バブルではないか」との見方が増えている。

・本稿では、近年のバブル崩壊事例と実体経済の関連を確認したうえで、現在の株高局面についても考える。主な内容は以下の通り。
 

・株高は日本や欧州と比較して米国で突出している。米国株は歴史的に見て特に割高感が強まっており、利益水準(PER)との対比や名目GDPとの対比(バフェット指標)で見ると、近年では最高水準である。

・一方で、金価格対比で見た米国株には過去の極端な過熱局面ほどの割高感は確認されない。

・近年のバブルとその崩壊の代表例は「日本の不動産バブル」「ITバブル」「サブプライムバブル」であり、その実体経済への影響の度合いは(1)バブル資産の規模や広がり、(2)債務との結びつき(レバレッジ)に左右されていた。

・「日本の不動産バブル」「サブプライムバブル」は、株価だけでなく、不動産(住宅)価格も上昇・下落したことが特徴であり、不動産が担保融資と深く結びついていたため、バブル崩壊が信用収縮を伴い実体経済に深刻な影響を及ぼした。一方で「ITバブル」は株式中心の上昇と下落であり、保有が上位層に偏っていたことや与信との結びつきが相対的に弱かったことから、実体経済への悪影響は限定的だった。

・現在の株高は、「住宅・不動産価格は過熱していない」「民間部門のレバレッジが高くない」「株価は高いが株式保有が富裕層に集中している」という点でITバブル期の状況に近い。

・ITバブル同様、現在も技術革新の実体経済の押し上げ期待が剥落することで株価が調整するリスクを内包していると見られる。ただし、仮に株価が調整した場合、逆資産効果による高所得層消費の減速はあり得るものの、信用収縮を伴うような実体経済の大幅悪化に至るリスクは小さいと考えられる。

・一方で、政府部門主導の豊富な通貨供給状態はITバブル期には見られない特徴である。豊富な通貨量は、株式を含む資産全体が下落することへの耐久性を高める要因となり得るため、一部の株式が下落しても、代わりに他の株式や他の金融資産が押し上げられやすい状況と見られる。

・ただし、政府部門の借入(レバレッジ)拡大の背景にある拡張的な財政政策や、その結果としての政府部門の信用リスクの増加は、金利やインフレを通じて株価や実体経済に悪影響が生じる可能性を想起させる。



■目次

1――はじめに
2――株価の割高感
  1|PERとバフェット指標(株価とフロー指標との比較)
  2|金価格との比較、相対株価(株価とストック指標との比較)
3――近年のバブル崩壊と実体経済
  1|バブル崩壊の実体経済への波及経路
  2|バブル崩壊が実体経済に大きく波及したケース(不動産バブル)
  3|バブル崩壊の実体経済への影響が限定されたケース(ITバブル)
  4|サブプライムバブル崩壊後の日本経済(バブル崩壊の震源地ではないが
   実体経済が落ち込んだケース)
4――今回の株高局面
  1|ITバブルとの共通点
  2|ITバブルとの相違点(政府部門のレバレッジ)
  3|まとめ

本資料記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と完全性を保証するものではありません。
また、本資料は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。

(2025年12月15日「基礎研レポート」)

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経済研究部   主任研究員

高山 武士 (たかやま たけし)

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