2025年12月15日

日銀短観(12月調査)~堅調な景況感をはじめ、日銀の今月利上げを正当化する内容

経済研究部   主席エコノミスト

上野 剛志 (うえの つよし)

研究・専門分野
金融・為替、日本経済

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■要旨
 
  1. 12月短観では、注目度の高い大企業製造業で景況感が小幅ながら改善した。関税の影響が限定的に留まった一方、円安の進行と世界的なAI関連需要などが追い風となった。大企業非製造業では株高や価格転嫁が支えとなったものの、コスト上昇や消費者マインドの低迷が抑制要因となり、景況感が横ばいとなった。
     
  2. 先行きの景況感は総じて悪化が示された。製造業では、関税への警戒感が燻っているとみられる。非製造業では、物価高による消費の腰折れや人手不足への懸念のほか、円安による原材料費増加や日中関係悪化に伴うインバウンド需要減少への警戒が台頭したとみられる。
     
  3. 2025年度の設備投資計画(全規模)は前年比8.9%増と上方修正された。例年、12月調査では中小企業を中心に投資額が上乗せされる傾向が強いほか、資材価格や建設費の上昇も上振れ要因となっている。しかし、実態としても、企業収益が過去最高レベルに達して投資余力が改善しているほか、人手不足を背景とする省力化やDXの推進など構造的な課題への対処に向けた投資需要が続き、投資計画をけん引していると考えられる。
     
  4. 物価関連項目は総じて堅調を維持しているほか、資金繰り判断DIや金融機関の貸出態度判断DIは小動きに留まり、緩和的な金融環境が続いていることを示唆している。
     
  5. 日銀は今月の決定会合での利上げ実施に対する前向きな情報を発信し、利上げに向けた地ならしを進めてきた。このため、日銀にとって今回の短観は利上げに向けた国内経済についての最終確認材料に位置付けられる。今回の短観では、景況感や設備投資・収益計画がそれぞれ堅調を維持していることや、物価関連項目の高止まり、緩和的な金融環境の継続が示唆されている。景況感の先行きの悪化は企業の警戒感を示しているものの、先行性が高いわけではない。今回の短観は利上げの実施を正当化する材料と言えるだろう。

 
景況感は製造業・非製造業ともに横ばい圏(大企業)/主な業種別の業況判断DI(大企業)

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(2025年12月15日「Weekly エコノミスト・レター」)

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経済研究部   主席エコノミスト

上野 剛志 (うえの つよし)

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