2025年12月12日

欧州経済見通し-不確実性は高いが底堅い成長が続く

経済研究部 常務理事 伊藤 さゆり

経済研究部 主任研究員 高山 武士

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■要旨
 
  1. 25年に入り、ユーロ圏経済はトランプ関税に翻弄されてはいるものの、経済への悪影響はこれまで限定的にとどまっている。7-9月期の実質成長率は前期比0.3%(年率換算:1.1%)、前年比1.4%となり底堅い推移が続いている。
     
  2. 11月のHICP(速報値)は総合指数伸び率で前年比2.2%、コア指数伸び率で同2.4%となった。総合インフレ率は今年前半から2%前後、コアインフレ率は総合インフレ率よりやや高いものの2%前半で安定推移しており、ECBの目標は概ね達成されている。
     
  3. ECBは今年6月に政策金利(預金ファシリティ金利)を中立金利推計(1.75-2.25%)の中央値である2.0%まで引き下げた後、7月以降は全会一致で政策金利を据え置いている。ラガルド総裁は現在の金利水準を「様子見する良い位置」と評し、政策理事会メンバーも様子見する価値が高いとの見解は概ね一致している。
     
  4. 今後も現在課されている関税率が続くとの想定のもとで、引き続き所得環境の改善を受けた消費の回復が進み、防衛・インフラ関連の公共支出が成長を支えると予想する。一方で、輸出環境の改善の遅さや民間投資の低迷が成長の重しになるだろう。成長率は25年1.4%、26年0.9%、27年1.2%と予想する。また、インフレ率は25年2.1%、26年1.9%、27年1.9%と予想する。緩やかな成長が続き、インフレ率が概ねECBの目標通りに推移するなかで、政策金利は予測期間にわたって据え置きが続くと予想する。
     
  5. 成長率、インフレ率ともに上下双方に不確実性が存在する。上方リスクとして経済環境の改善を受けた予想以上の景況感改善など、下方リスクとして公共投資の遅延、米国の関税強化や米中の経済環境悪化といった外部環境のさらなる悪化などが指摘できる。
(図表1)ユーロ圏の実質GDP/(図表2)ユーロ圏の物価・金利・失業率見通し
■目次

1.経済・金融環境の現状
  (関税政策を巡る状況)
  (実体経済:7-9月期は安定成長を実現)
  (企業景況感は総じて上向き)
  (労働市場は良好な状況)
  (物価・賃金:インフレ目標をほぼ達成)
  (財政政策:26年の財政スタンスは25年対比で中立的)
  (金融政策・金利:ECBは様子見姿勢を強める)
2.経済・金融環境の見通し
  (見通し:緩やかな成長の継続を予想)
  (リスク:上下双方にリスク)

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(2025年12月12日「Weekly エコノミスト・レター」)

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