2025年12月11日

米FOMC(25年12月)-市場予想通り、政策金利を▲0.25%引き下げ。金融政策決定では3名が反対票

経済研究部   主任研究員

窪谷 浩 (くぼたに ひろし)

研究・専門分野
米国経済

文字サイズ

■要旨
 
  • 政策金利を▲0.25%引き下げて3.5–3.75%とし、短期国債購入の柔軟な実施方針を追加。政策判断では3名が反対票を投じ、委員会内の意見対立が鮮明となった。
     
  • 声明文では失業率の判断が小幅に下方修正され、政策金利ガイダンスに「程度と時期」が加わるなど、当面の据え置きを示唆する表現が初めて盛り込まれた。
     
  • SEPでは成長率見通しが上方修正される一方、失業率とインフレ率は小幅下方修正。政策金利の中央値見通しは据え置きとなり、26–27年は年1回の利下げ、28年は据え置きが示された。


■目次

1.金融政策の概要:政策金利を▲0.25%引き下げ。3名が反対票を投じた
2.金融政策の評価:タカ派的な利下げも、パウエル議長の記者会見はハト派的
3.声明の概要
4.会見の主なポイント(要旨)
5.FOMC参加者の見通し
 

1.金融政策の概要

1.金融政策の概要:政策金利を▲0.25%引き下げ。3名が反対票を投じた

米国で連邦公開市場委員会(FOMC)が12月9-10日(現地時間)に開催された。FRBは市場予想通り、政策金利を▲0.25%ポイント引き下げ3.5-3.75%にすることを決定した。また、バランスシート政策について、必要に応じて短期国債を購入する方針が示された。今回の金融政策決定ではミラン理事が▲0.5%の利下げを主張して反対したほか、シカゴ連銀のグールズビー総裁とカンザスシティ連銀のシュミッド総裁が政策金利の据え置きを主張して反対するなど、3名が反対票を投じた。

今回発表された声明文では、景気判断部分で失業率に関する評価が小幅下方修正された一方、景気見通し部分の変更はなかった。金融政策ガイダンス部分では政策金利の追加的な調整の検討に関して、当面の据え置きを示唆する「程度と時期」の表現が追加された。

FOMC参加者の経済見通し(SEP)は前回(9月)から成長率が上方修正された一方、失業率とインフレ率が小幅下方修正された(後掲図表1)。

政策金利見通し(中央値)は前回から据え置かれ、1回0.25%ポインとして、26年と27年の利下げ回数は1回、28年は据え置きが示された。長期金利見通しも前回から変更はなかった。

2.金融政策の評価

2.金融政策の評価:タカ派的な利下げも、パウエル議長の記者会見はハト派的

政策金利の0.25%ポイントの引き下げは予想通り。前回(9月)会合から雇用の下振れリスクが顕著となる中で、26年の政策金利見通しが据え置かれたのは予想外だった。

声明の金融政策ガイダンス部分で「程度と時期」の表現がはじめて追加されたのは24年12月会合で、その後5会合に亘って政策金利が据え置かれたことから、この表現変更は当面利下げを見送ると受け取られた。また、25年の政策金利見通しのドットチャートで政策金利の据え置き支持が6名に上ったことから、今回の金融政策決定は当初はタカ派的との見方が強かった。

一方、パウエル議長の記者会見では政策金利が中立金利の範囲内に収まったとし、追加調整を判断する上で良好な位置にあるとして利下げを急がない姿勢を示した。しかしながら、関税によるインフレが一時的との見方を示したほか、4月以降の雇用が減少していた可能性に言及するなど労働市場の下方リスクを強調したことで市場では記者会見はハト派的との見方が広がった。

当研究所は今回の結果を受けて、FOMC内で政策金利見通しが2極化する中、今後も労働市場の顕著な減速が続くと予想しており、利下げ時期は後ズレする可能性はあるものの、26年に2回(3月、6月)利下げの見通しを維持する。

3.声明の概要

3.声明の概要

(金融政策の方針)
  • これらの目標達成を支え、また、リスクバランスの変化を踏まえて委員会はFF金利の誘導目標水準を0.25%ポイント引き下げ、3.75-4.0%とすることを決定(今回削除)
  • これらの目標達成を支え、また、リスクバランスの変化を踏まえて委員会はFF金利の誘導目標水準を0.25%ポイント引き下げ、3.50-3.75%とすることを決定(今回追加)
  • 委員会は12月1日をもって証券保有総額の縮小を終了する(今回削除)
  • 委員会は準備預金残高が十分な水準まで減少したと判断し、継続的に十分な準備預金供給を維持するため、必要に応じて短期国債の購入を開始する(今回追加)
 
(フォワードガイダンス)
  • 委員会は雇用の最大化と長期的な2%のインフレ率の達成を目指す(変更なし)
  • FF金利の目標レンジの追加的な調整の程度と時期を検討する際には、委員会は入ってくるデータ、進展する見通し、およびリスクのバランスを注意深く評価する(「程度と時期」”the extent and timing of”の表現を追加)
  • 委員会は最大限の雇用を支え、インフレを2%の目標に戻すことに強くコミットしている(変更なし)
  • 金融政策の適切なスタンスを評価するにあたり、委員会は経済見通しに対する今後の情報の影響を引き続き監視する(変更なし)
  • 委員会は目標の達成を妨げる可能性のあるリスクが生じた場合には、金融政策のスタンスを適宜調整する用意がある(変更なし)
  • 委員会の評価は労働市場の情勢、インフレ圧力とインフレ期待に関する指標、金融情勢、国際情勢など幅広い情報を考慮する(変更なし)
 
(景気判断)
  • 入手可能な指標は経済活動が緩やかなペースで拡大していることを示唆している(変更なし)
  • 雇用増加は今年に入り鈍化し、失業率は9月にかけて上昇した(失業率の上昇に関して前回の「8月までは低水準を維持した」“remained low through August”から「9月にかけて」”through September”に表現変更)
  • より直近の指標もこうした動向と一致している(変更なし)
  • インフレ率は年初から上昇し、やや高めの水準で推移している(変更なし)
 
(景気見通し)
  • 経済見通しの不確実性は依然として高い(変更なし)
  • 委員会はデュアル・マンデートの両サイドのリスクに高い注意を払っており、雇用に対する下方リスクがここ数か月で高まったと判断している(変更なし)

4.会見の主なポイント(要旨)

4.会見の主なポイント(要旨)

記者会見の主な内容は以下の通り。
 
  • パウエル議長の冒頭発言
    • 入手可能な公的・民間セクターのデータは、雇用とインフレの見通しが10月の会合以降、大きく変化していないことを示唆している。労働市場の状況は徐々に緩和傾向にあり、インフレはやや高止まりしている。目標達成を支援し、雇用と物価上昇率に対するリスクのバランスを考慮した結果、委員会は0.25%ポイント引き下げることを決定した。
    • 政策金利の効果的な管理を支援するため、長期にわたり十分な準備金の供給を維持する目的のみで、短期国債の購入を開始することを決定した。
    • 雇用増加ペースは年初から大幅に鈍化した。鈍化の大部分は移民減少と労働参加率の低下による労働供給の減速を反映している可能性が高いが、労働需要も明らかに軟化している。
    • インフレ率は22年半ばから大幅に緩和したが、長期目標(2%)からやや高い水準にある。関税の影響を反映して財インフレが加速した一方、サービス部門はデフレ傾向が継続している。
    • 短期的にはインフレリスクは上方へ、雇用リスクは下方へ偏っており、困難な状況だ。雇用目標とインフレ目標の間の緊張関係を乗り切る上で、政策にリスクのない道筋は存在しない。合理的な基本シナリオとして、関税がインフレに及ぼす影響は比較的短命であり、物価水準の一時的な変動に留まると見込まれる。しかし、雇用への下方リスクがここ数ヵ月高まったことで、リスクのバランスは変化した。
    • 9月以降の政策スタンス調整により、政策金利は中立金利の妥当な推定値の範囲内に収まり、今後のデータ、変化する見通し、リスクのバランスに基づき追加調整の程度と時期を判断する上で良好な位置にある。
 
  • 主な質疑応答
    • (声明文の「程度と時期」の表現追加は当面の現状維持を示唆しているのか)9月以降の政策調整により、政策金利は中立金利の幅広い推定範囲内にあり、経済の推移を見守る態勢が整っている。新たな表現は、今後のデータを入念に評価することを示している。
    • (来年の見通しが楽観的な要因)消費支出が回復力を見せているほか、データセンターやAI(人工知能)関連支出が企業設備投資を支えており、財政政策も拡張的である。また、政府機関閉鎖の影響で26年の成長率が0.2%ポイント押し上げられることも影響している。
    • (成長率上振れでも失業率見通しが低下しない要因)AIの影響も含めた生産性上昇が背景にある。年間2%の生産性上昇を前提とすれば、雇用創出を伴わずに高い成長を持続できる。
    • (本日の複数の反対意見により、近い将来の利下げのハードルは上がったか)FOMC参加者は「インフレが過度に高く、低下させたい」、「労働市場がなんかしており、さらにリスクがある」といる点で一致している。意見が分かれるのはそれらのリスクをどう評価するか、最終的にどちらが大きなリスクと考えるか。1月会合までには相当量のデータが得られるため、データ動向を注視する。
    • (90年代には3回利下げ後、利上げに転じた。中立金利に近づく中、利上げの可能性)現時点で利上げが誰かの基本シナリオだと考えていない。政策金利の方向性は、現状維持か小幅利下げか、それ以上の利下げのいずれかだ。
    • (10月会合で「霧の中ではスピードを落とす」とした発言と今回の利下げの整合性)10月時点では利下げに確証はなかった。本日の利下げの要因は、労働市場が緩やかに減速していることに加え、インフレはサービスが低下する一方、関税による財インフレの上昇が相殺して若干低めに推移しているため。
    • (関税によるインフレ押し上げ期間)関税インフレは発表から効果がでるまで数ヵ月を要する。新たな関税発表がなければ、財のインフレ率は26年の第一四半期にピークを迎えるだろう。
    • (雇用は雇用統計が示すより悪いと考えているのか)年2回実施される過去の改定からは雇用統計の雇用者数は過大計上が続いていると考えている。我々は月間6万人が過大計上されていると推計している。このため、4月以降の月間平均増加数の4万人は、実際は2万人減少している可能性がある。

5.FOMC参加者の見通し

5.FOMC参加者の見通し

FOMC参加者(FRBメンバーと地区連銀総裁の19名 )の経済見通しは(図表1)の通り。

前回(9月)見通しとの比較では、実質GDP成長率では25年、27年、28年が前回から+0.1%ポイント上方修正されたほか、26年が前回の+1.8%から+2.3%に+0.5%ポイントの大幅な上方修正となった。失業率は27年が前回の4.3%から4.2%に▲0.1%ポイント下方修正された。コアPCE価格指数は25年が+3.0%、26年が+2.5%と前回からそれぞれ▲0.1%ポイント下方修正された。
(図表1)FOMC参加者の経済見通し(12月会合)
(図表2)政策金利見通し(年末時点) 政策金利の見通し(中央値)は、25年が3.6%(前回:3.6%)と前回から据え置かれた(図表2)。一方、ドットチャートではFOMC参加者19名のうち、今回のFOMC会合で政策金利の据え置きを支持した参加者が6名に上ることが明らかとなった。

26年は3.4%(前回:3.4%)と前回見通しから据え置かれ、1回の利下げ方針の維持が示された。もっとも、ドットチャートは政策金利の据え置きが7名、1回の利下げが4名、少なくとも2回の利下げが7名と政策金利見通しにバラツキがあることを示した。

27年が3.1%(前回:3.1%)、28年が3.1%(前回:3.1%)とこちらも前回見通しから据え置かれた。この結果、27年が1回の利下げ、28年は政策金利の据え置き方針が維持された。

長期見通しは3.0%(前回:3.0%)と前回から変更はなかった。

本資料記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と完全性を保証するものではありません。
また、本資料は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。

(2025年12月11日「経済・金融フラッシュ」)

Xでシェアする Facebookでシェアする

経済研究部   主任研究員

窪谷 浩 (くぼたに ひろし)

研究・専門分野
米国経済

週間アクセスランキング

ピックアップ

【米FOMC(25年12月)-市場予想通り、政策金利を▲0.25%引き下げ。金融政策決定では3名が反対票】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

米FOMC(25年12月)-市場予想通り、政策金利を▲0.25%引き下げ。金融政策決定では3名が反対票のレポート Topへ