2025年12月09日

景気ウォッチャー調査2025年11月~緊張続く日中関係、現状判断DIは7ヵ月ぶりに悪化~

経済研究部   研究員

佐藤 雅之 (さとう まさゆき)

研究・専門分野
日本経済

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■要旨
 
  • 2025年11月の景気の現状判断DI(季節調整値)は前月差0.4ポイント低下の48.7と、7ヵ月ぶりの低下となった。内閣府は基調判断を「景気は、持ち直している」と据え置いている。
     
  • 2~3か月先の景気の先行きに対する判断DIは、前月差2.8ポイント低下の50.3となった。
     
  • 台湾有事を巡る日中関係の緊張が高まるなか、インバウンド需要などへの影響を懸念する声が寄せられ、企業心理を押し下げる一因となっている。
     
  • また、物価高の長期化に伴い、来客数の減少や家計負担の重さを指摘するコメントもみられ、消費活動には弱さが残る。
     
  • さらに、熊の出没が相次いだことにより、東北を中心に観光客や買物客の減少が報告されており、地域経済への影響を注視する必要がある。


■目次

1.景気の現状判断DI(季節調整値)は前月差0.4ポイント低下の48.7
2.日中関係の悪化はインバウンド需要などに影響
3.景気の先行き判断DI(季節調整値)は、前月差2.8ポイント低下の50.3
 

1.景気の現状判断DI(季節調整値)は前月差0.4ポイント低下の48.7

1.景気の現状判断DI(季節調整値)は前月差0.4ポイント低下の48.7

内閣府が12月8日に公表した景気ウォッチャー調査によると、25年11月の景気の現状判断DI(季節調整値)は前月差0.4ポイント低下の48.7と、7ヵ月ぶりの低下となった。

地域別では、全国12地域中、6地域で上昇、6地域で低下した。最も上昇幅が大きかったのは北海道(前月差5.7ポイント)で、最も低下幅が大きかったのは甲信越(同▲4.6ポイント)であった。

現状判断DI(季節調整値)の内訳をみると、家計動向関連が前月差▲0.2ポイント、企業動向関連が同▲1.2ポイント、雇用関連が同▲0.5ポイントであった。内閣府は基調判断を「景気は、持ち直している」と据え置いている。
景気の現状判断DI(季節調整値)/現状判断DI(季節調整値)の変動要因

2.日中関係の悪化はインバウンド需要などに影響

2.日中関係の悪化はインバウンド需要などに影響

家計動向関連では、サービス関連(前月差0.5ポイント)や小売関連(同0.1ポイント)は小幅に上昇したが、住宅関連(同▲3.3ポイント)や飲食関連(同▲2.8ポイント)が大きく低下した。住宅関連のコメントをみると、「当地の土地価格や建築単価が高止まりしていることで、購入価格が客の想定を超えている。住宅ローン金利も上昇傾向にある。これらのことから、客の購入意欲が低下している(北海道・住宅販売会社)」など、不動産価格の高騰が需要減少に影響していることがうかがえる。また、飲食関連のコメントでは、「飲食店では、週初めには来客数がゼロの日もあり、週末も大口の予約がなければ満席には程遠い(東海・一般小売店[酒類])」や「会社員の来店が減り、領収書を利用できる客の割合が増えていることから、家計の厳しさがうかがえる(南関東・その他飲食[居酒屋])」など、物価高が続いていることで来店客数が減少していることがうかがえる。

さらに、東北では熊の出没が相次いでいる影響もみられ、「熊の出没に関する問合せが多く、予約のキャンセルも若干出ている(東北・観光型ホテル)」や「熊の出没で年配客の来店が減少している(東北・一般小売店[医薬品])」などのコメントがみられた。

企業動向関連では、非製造業(前月差0.3ポイント)が小幅に上昇した一方、製造業(同▲2.7ポイント)が大幅に低下した。台湾有事を巡り日中関係が冷え込んでいることから、「外交的な問題で中国からのインバウンドが減り、人気レジャー施設やガイドブックに載るような飲食店は穴場となっている(東海・通信業)」や「中国向け製品の動きが止まっている。全体量は少ないが、影響は少し長引きそうな気配がある(近畿・食料品製造業)」などのネガティブなコメントがみられた。

下図は、景気ウォッチャー調査の「景気判断理由集(現状)」のコメントをもとに計量テキスト分析1を行い、共起ネットワーク2を作成したものである。景況感が悪化したと判断した回答者のコメントには、中国、関係、高騰といった単語が多く含まれていることが読み取れる。
「景気判断理由集(現状)」のコメント
 
1 分析にはKH Coder 3(樋口2020)を使用した。
2 共起ネットワークとは、よく一緒に使われる語同士を、線で結んだネットワークのことである

3.景気の先行き判断DI(季節調整値)

3.景気の先行き判断DI(季節調整値)は、前月差2.8ポイント低下の50.3

2~3か月先の景気の先行きに対する判断DIは、前月差2.8ポイント低下の50.3となった。先行き判断DIの内訳をみると、家計動向関連(前月差▲2.8ポイント)、企業動向関連(同▲3.2ポイント)、雇用関連(同▲2.0ポイント)のすべてのDIが低下した。

家計動向関連では、「円安が進んでいることから、多くの食品メーカーにおいて、原材料の価格負担が増しており、来年も値上げしなければならないとの声が上がっている。物価上昇が続くことで、客の節約志向がますます強まることが懸念される(北海道・スーパー)」や「商材の値上げもあり客単価は伸びているものの、来客数は増えていない。コンビニではなく安価なドラッグストアに客が流れている(南関東・コンビニ)」などの声が聞かれた。

企業動向関連では、「原材料費や人件費の高止まりが続くなか、飲食店では価格転嫁に限界もあり、採算を維持するためのコスト削減や支払条件の見直しが増えている(南関東・広告代理店)」など、コスト高が事業運営に重くのしかかっている様子がうかがえる。

雇用動向関連では、「例年、年末年始から1月の終わりにかけては、求職者、求人者共に動きが低調になる(東海・人材派遣会社)」など、季節要因もあって、企業の採用活動には慎重な姿勢がみられた。
景気の先行き判断DI(季節調整値)/先行き判断DI(季節調整値)の変動要因
景気ウォッチャー調査の「景気判断理由集(先行き)」のコメントをもとに計量テキスト分析を行い、共起ネットワークを作成すると、景況感が悪化すると判断した回答者のコメントには、値上げ、物価、受注といった単語が多く含まれていることが読み取れる。
「景気判断理由集(先行き)」のコメント
2025年11月調査の結果は、景況感は現状、先行きともに悪化していることを示すものであった。台湾有事を巡る日中関係の緊張が高まるなか、インバウンド需要などへの影響を懸念する声が寄せられ、企業心理を押し下げる一因となっている。また、物価高の長期化に伴い、来客数の減少や家計負担の重さを指摘するコメントもみられ、消費活動には弱さが残る。さらに、熊の出没が相次いだことにより、東北を中心に観光客や買物客の減少が報告されており、地域経済への影響を注視する必要がある。

本資料記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と完全性を保証するものではありません。
また、本資料は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。

(2025年12月09日「経済・金融フラッシュ」)

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