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- Amazon Rufusが示す「消費と生成AI」の新たな関係-消費への生成AIの浸透がもたらす「期待」と「リスク」(1)
2025年12月03日
Amazon Rufusが示す「消費と生成AI」の新たな関係-消費への生成AIの浸透がもたらす「期待」と「リスク」(1)
03-3512-1813
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1――消費者はAIに消費の判断をどこまで委ねるのか
1|Amazon Rufusのリリース──号砲が鳴ったショッピングAIアシスタント
2025年は、消費の現場において生成AIが本格的に浸透し始めた節目の年となった1。今後、生成AIが消費の接点に入り込み、検索・比較・選択・購入といった消費者の意思決定プロセスそのものに介入するようになれば、消費者行動はこれまで以上に大きな変化を迎えると思われる2。消費者が何を買うのか、どの情報を信頼するのか、そしてどこまでAIに判断を委ねるのか、こうした領域は、生成AIの浸透とともに今後さらに揺れ動く可能性がある。
こうした環境の中で、大手ECのAmazon.comは、利用者の商品比較や選定をサポートするAIショッピングアシスタント「Amazon Rufus(ルーファス、以降“Rufus”)」をリリースした。米国では2024年7月に全ユーザーへ展開され、日本でも2025年7月に提供が開始されている。Rufusの登場は、その新しい流れの号砲とも言える出来事であり、AIが購買の前処理から最終判断まで伴走する未来を現実のものとして示しつつある。
1 本稿で生成AIを用いたショッピングサポート機能の事例として取り上げる大手ECのAmazonによる「Amazon Rufus」(2025年7月国内提供開始)の他、Yahooでも生成AIが商品選びをサポートする「お買い物AIアシスタント」機能が2025年10月に提供開始された。PR TIMES. https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001424.000129774.html
なお、決済機能まで実装されたChatGPT ShoppingやPerplexity Shopは、まだ日本国内ではサービス未提供となっている。
2 ユーロモニターインターナショナル「ボイス・オブ・ザ・コンシューマー:デジタルコンシューマーサーベイ(2024年3月~4月実施)」(n=18,956)/アジア太平洋、欧州、ラテンアメリカ、中東北アフリカ、北米、サブサハラ・アフリカなどの地域を対象とした国際調査。レポートによれば消費者はアプリやAIなどのテクノロジーを活用しながら支出の最適化を図ろうとする動きが広がりを見せており、消費者の約4人に1人が「ショッピング時に商品をおすすめしてくれる機能こそ生成AIのメリットである」と回答している。
2025年は、消費の現場において生成AIが本格的に浸透し始めた節目の年となった1。今後、生成AIが消費の接点に入り込み、検索・比較・選択・購入といった消費者の意思決定プロセスそのものに介入するようになれば、消費者行動はこれまで以上に大きな変化を迎えると思われる2。消費者が何を買うのか、どの情報を信頼するのか、そしてどこまでAIに判断を委ねるのか、こうした領域は、生成AIの浸透とともに今後さらに揺れ動く可能性がある。
こうした環境の中で、大手ECのAmazon.comは、利用者の商品比較や選定をサポートするAIショッピングアシスタント「Amazon Rufus(ルーファス、以降“Rufus”)」をリリースした。米国では2024年7月に全ユーザーへ展開され、日本でも2025年7月に提供が開始されている。Rufusの登場は、その新しい流れの号砲とも言える出来事であり、AIが購買の前処理から最終判断まで伴走する未来を現実のものとして示しつつある。
1 本稿で生成AIを用いたショッピングサポート機能の事例として取り上げる大手ECのAmazonによる「Amazon Rufus」(2025年7月国内提供開始)の他、Yahooでも生成AIが商品選びをサポートする「お買い物AIアシスタント」機能が2025年10月に提供開始された。PR TIMES. https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001424.000129774.html
なお、決済機能まで実装されたChatGPT ShoppingやPerplexity Shopは、まだ日本国内ではサービス未提供となっている。
2 ユーロモニターインターナショナル「ボイス・オブ・ザ・コンシューマー:デジタルコンシューマーサーベイ(2024年3月~4月実施)」(n=18,956)/アジア太平洋、欧州、ラテンアメリカ、中東北アフリカ、北米、サブサハラ・アフリカなどの地域を対象とした国際調査。レポートによれば消費者はアプリやAIなどのテクノロジーを活用しながら支出の最適化を図ろうとする動きが広がりを見せており、消費者の約4人に1人が「ショッピング時に商品をおすすめしてくれる機能こそ生成AIのメリットである」と回答している。
2|ECサイトの中に常駐する「AI販売員」~Amazon Rufusとは何か?
Rufusは、Amazonが保有する膨大な商品カタログ、カスタマーレビュー、コミュニティQ&A、そしてWeb上の信頼できる情報を統合して学習した、会話型のショッピングアシスタントである3。
ユーザーはAmazon.comのトップ画面のナビゲーションバーにある「Rufus」ボタンをクリックすると、ページにチャットウィンドウが開き、AIとの対話が始まる。
従来どおり、検索バーに商品名やキーワードを入力して検索することもできるが、Rufusはその検索機能と連動しながら動作する。Rufusが会話形式で質問に答えて理解を深め、検索バーは関連商品の一覧を提示するという役割分担がなされている4。言わば、Rufusは「チャットができる検索バー」ではなく、ECサイトの中に常駐して接客を行う「AI販売員」として振る舞う存在とも言えるだろう。
3 Amazon. (2024). Amazon’s next-gen AI assistant for shopping is now even smarter, more capable, and more helpful.
https://www.aboutamazon.com/news/retail/amazon-rufus-ai-assistant-personalized-shopping-features
(アクセス日:2025年11月21日)
4 Amazon. (2024). How customers are making more informed shopping decisions with Rufus, Amazon’s generative AI-powered shopping assistant.(アクセス日:2025年11月21日)
Rufusは、Amazonが保有する膨大な商品カタログ、カスタマーレビュー、コミュニティQ&A、そしてWeb上の信頼できる情報を統合して学習した、会話型のショッピングアシスタントである3。
ユーザーはAmazon.comのトップ画面のナビゲーションバーにある「Rufus」ボタンをクリックすると、ページにチャットウィンドウが開き、AIとの対話が始まる。
従来どおり、検索バーに商品名やキーワードを入力して検索することもできるが、Rufusはその検索機能と連動しながら動作する。Rufusが会話形式で質問に答えて理解を深め、検索バーは関連商品の一覧を提示するという役割分担がなされている4。言わば、Rufusは「チャットができる検索バー」ではなく、ECサイトの中に常駐して接客を行う「AI販売員」として振る舞う存在とも言えるだろう。
3 Amazon. (2024). Amazon’s next-gen AI assistant for shopping is now even smarter, more capable, and more helpful.
https://www.aboutamazon.com/news/retail/amazon-rufus-ai-assistant-personalized-shopping-features
(アクセス日:2025年11月21日)
4 Amazon. (2024). How customers are making more informed shopping decisions with Rufus, Amazon’s generative AI-powered shopping assistant.(アクセス日:2025年11月21日)
3|Amazon Rufusの接客を受けてみる──相談チャットに見る「AI店員」の現場
実際に、Amazon Rufusは販売員としてどのように振る舞うのだろうか。そのやり取りを見ていくことにする。
ヘッドセットの購入を検討しているサイト利用者(筆者)が、まず
「ヘッドセットが欲しいのですが」
と切り出す(チャットする)と、Rufusはすぐに商品リストを提示するわけではない。代わりに、次のように用途や条件を丁寧に聞き出してくる。
「どのような目的で使用されますか?(ゲーム、Web会議、音楽鑑賞など)」
「有線・ワイヤレス、どちらかご希望はありますか?」
「どのくらいの予算をお考えですか?」
それに対して、
「主に目的は、WEB会議です」
と答えると、Rufusは次のようにニーズを整理する。
「複数人での会議にはスピーカーフォン、画面共有が必要ならWebカメラ、個人での会議にはヘッドセットがおすすめですが、そちらは検討されますか。」
このようなやり取りによって、最初は曖昧だった「ヘッドセットが欲しい」というニーズが、「Web会議」「1人」「オフィス」「ノートPC」「予算5,000~15,000円」といった利用シーンが具体化されていく。
続けて、より評価(ユーザーレビュー)の高い商品に絞り込みたいと思い、
「他の方々のユーザーレビュー(評価)が高い商品はどれでしょうか?」
と尋ねると、Rufusはレビュー情報を要約し、快適性・音質・接続安定性などの評価軸を提示する。これにより、利用者は「どう比べればよいか」という「物差し」を手に入れ、その基準に沿ってRufusが複数の商品をおすすめとして示してくれる。
ここで少し意地悪な質問として、
「この、あなたがトップで推奨しているこのヘッドセット商品Aは、私に、必ず適していると思いますか?」
と聞いてみたところ、Rufusは
「それは個人差がありますので必ずとは言えません。ただ、多くの人がこの商品を支持しています」
と答え、リスクに配慮しつつも、そっと利用者の背中を押してくる。
さらに続けて、
「たとえ購入後に困ったことが生じても、Amazonには返品できる期間がありますので…」
と返品ポリシーへのリンクを説明しながら、利用者を自然にクロージングへと誘導していく。
実際に、Amazon Rufusは販売員としてどのように振る舞うのだろうか。そのやり取りを見ていくことにする。
ヘッドセットの購入を検討しているサイト利用者(筆者)が、まず
「ヘッドセットが欲しいのですが」
と切り出す(チャットする)と、Rufusはすぐに商品リストを提示するわけではない。代わりに、次のように用途や条件を丁寧に聞き出してくる。
「どのような目的で使用されますか?(ゲーム、Web会議、音楽鑑賞など)」
「有線・ワイヤレス、どちらかご希望はありますか?」
「どのくらいの予算をお考えですか?」
それに対して、
「主に目的は、WEB会議です」
と答えると、Rufusは次のようにニーズを整理する。
「複数人での会議にはスピーカーフォン、画面共有が必要ならWebカメラ、個人での会議にはヘッドセットがおすすめですが、そちらは検討されますか。」
このようなやり取りによって、最初は曖昧だった「ヘッドセットが欲しい」というニーズが、「Web会議」「1人」「オフィス」「ノートPC」「予算5,000~15,000円」といった利用シーンが具体化されていく。
続けて、より評価(ユーザーレビュー)の高い商品に絞り込みたいと思い、
「他の方々のユーザーレビュー(評価)が高い商品はどれでしょうか?」
と尋ねると、Rufusはレビュー情報を要約し、快適性・音質・接続安定性などの評価軸を提示する。これにより、利用者は「どう比べればよいか」という「物差し」を手に入れ、その基準に沿ってRufusが複数の商品をおすすめとして示してくれる。
ここで少し意地悪な質問として、
「この、あなたがトップで推奨しているこのヘッドセット商品Aは、私に、必ず適していると思いますか?」
と聞いてみたところ、Rufusは
「それは個人差がありますので必ずとは言えません。ただ、多くの人がこの商品を支持しています」
と答え、リスクに配慮しつつも、そっと利用者の背中を押してくる。
さらに続けて、
「たとえ購入後に困ったことが生じても、Amazonには返品できる期間がありますので…」
と返品ポリシーへのリンクを説明しながら、利用者を自然にクロージングへと誘導していく。
このようにRufusは、単に商品を並べるAIではなく、消費者と接しながら「今、何をどう考えればよいか」というステップを意識した、店舗に実在する店員さながらの役割をインタラクティブに果たしていく(表1)。
2――従来の生成AIとショッピング特化型AIとの違いは何か
従来のEC体験では、検索バーにキーワードを入力し、絞り込み条件を設定し、複数のタブで商品ページやレビューを読み比べ、別ページで返品条件を確認するなど、ユーザーの自力操作が前提となっていた。Rufusは、これら一連の機能を1つのチャットに集約する「ハブ」として振る舞う点に大きな違いがある。
つまりRufusは、「検索」「比較」「Q&A」「カスタマーサポート」というECの主要機能を、一つの会話体験として再構成した新しいフロントエンドであると言えるだろう(表2)。
つまりRufusは、「検索」「比較」「Q&A」「カスタマーサポート」というECの主要機能を、一つの会話体験として再構成した新しいフロントエンドであると言えるだろう(表2)。
これらのデータは強力で、前章のヘッドセット購入時の会話例では紙幅の都合で省略したが、実際には特定ブランドのマイク数やスピーカー構成、Amazon限定モデルの有無、USB-C/A対応といった詳細仕様まで補足するなど、商品ページの深部にある情報を引き出して説明する能力が確認できる。
さらにRufusは、商品ページ、検索バー、画像検索(Lens)、価格アラート、自動購入機能などと密接に連携している点も特徴的である。最新の30日・90日間の価格履歴を可視化し、「今の価格はお得か」を判断できるようにされているほか、価格が指定値まで下がると通知する「価格アラート」、そして「〇〇の旅行に必要なもの一式」など、目的起点でリストを生成し、そのままカートにまとめて追加する機能なども実装されている。
こうしたデータ活用と機能連携により、Rufusは単なる検索補助ではなく、消費者に適した情報の抽出・比較・推薦・購入まで消費者行動を一気通貫で支援するECの総合アシスタントへと進化しつつある。
5 AmazonRufusは、Amazonが提供する生成AI基盤「Amazon Bedrock」で動作する大規模言語モデル(LLM)である。Bedrockとは複数のAIモデルを統一的に扱えるクラウド基盤で、Rufusは用途に応じて最適なモデルを呼び出している。
6 AWS. (2024). How Rufus scales conversational shopping experiences to millions of Amazon customers with Amazon Bedrock.
https://aws.amazon.com/jp/blogs/machine-learning/how-rufus-scales-conversational-shopping-experiences-to-millions-of-amazon-customers-with-amazon-bedrock/ RufusがAmazon Bedrock上のLLMと外部ツール(検索・データベース)を組み合わせたRAG構造で構築されていることなどが技術的に解説されている。(アクセス日:2025年11月21日)
7 RAGとは「Retrieval-Augmented Generation(検索拡張生成)」の略で、AIが回答する際に外部のデータベースやWeb情報を検索し、その内容を取り込んだ上で文章を生成する仕組みを指す。生成AIの思い込みによる誤回答を減らし、商品仕様や価格などの事実情報を正確に反映できる点が特徴で、Rufusが商品仕様やレビュー内容を詳細に説明できる背景にもこの仕組みがある。
さらにRufusは、商品ページ、検索バー、画像検索(Lens)、価格アラート、自動購入機能などと密接に連携している点も特徴的である。最新の30日・90日間の価格履歴を可視化し、「今の価格はお得か」を判断できるようにされているほか、価格が指定値まで下がると通知する「価格アラート」、そして「〇〇の旅行に必要なもの一式」など、目的起点でリストを生成し、そのままカートにまとめて追加する機能なども実装されている。
こうしたデータ活用と機能連携により、Rufusは単なる検索補助ではなく、消費者に適した情報の抽出・比較・推薦・購入まで消費者行動を一気通貫で支援するECの総合アシスタントへと進化しつつある。
5 AmazonRufusは、Amazonが提供する生成AI基盤「Amazon Bedrock」で動作する大規模言語モデル(LLM)である。Bedrockとは複数のAIモデルを統一的に扱えるクラウド基盤で、Rufusは用途に応じて最適なモデルを呼び出している。
6 AWS. (2024). How Rufus scales conversational shopping experiences to millions of Amazon customers with Amazon Bedrock.
https://aws.amazon.com/jp/blogs/machine-learning/how-rufus-scales-conversational-shopping-experiences-to-millions-of-amazon-customers-with-amazon-bedrock/ RufusがAmazon Bedrock上のLLMと外部ツール(検索・データベース)を組み合わせたRAG構造で構築されていることなどが技術的に解説されている。(アクセス日:2025年11月21日)
7 RAGとは「Retrieval-Augmented Generation(検索拡張生成)」の略で、AIが回答する際に外部のデータベースやWeb情報を検索し、その内容を取り込んだ上で文章を生成する仕組みを指す。生成AIの思い込みによる誤回答を減らし、商品仕様や価格などの事実情報を正確に反映できる点が特徴で、Rufusが商品仕様やレビュー内容を詳細に説明できる背景にもこの仕組みがある。
3――2026年は、消費と消費者行動へのAIインパクトが本格的に拡大する年へ
1|「賢い消費」を模索する2025年の消費者~生成AI等のテクノロジーへの期待
「Wiser Wallets(賢い消費)」8とは、長引く不安定な経済環境や物価上昇の中で、価格に敏感になりつつも、「単に安い」よりも付加価値や信頼性を重視する戦略的な消費スタイル9を指す。
マクロの家計消費データを見ても、「何を削り、何を守るか」について家計内で選別する傾向が見られており10、こうした動きから、物価上昇や不安定な社会・経済環境の中で、消費者が情報収集に裏打ちされた「後悔のない消費」や「確かな情報に基づく選択」=賢い消費行動を模索する姿が浮かびあがる。
先行研究では、物価高と不確実性が続く中で、消費者は価格比較アプリやAIレコメンドなどのテクノロジーを活用しながら、情報収集を行い、支出の最適化を図ろうとする動きが広がっているとされる11。こうした技術に対する期待から、AIによる支援を前向きに受け止める姿勢が広がりつつある12ことが伺える。
8 Euromonitor International. (2024). Wiser wallet consumers worry about cost and expect added value from purchases. Euromonitor International.
9 たとえば日本では、2024年秋に美容・衛生用品大手の花王が発売したヘアケアシリーズ「THE ANSWER(ジ アンサー)」が象徴的である。同社が「花王100年の研究の集大成」と位置づける先端ヘアケア技術を信頼と付加価値として訴求し、「日経トレンディ 2025年上半期ヒット大賞&下半期ブレイク予測 美容部門 大賞」など複数の賞を受賞し、高い支持を集めた。
10 家計消費(2人以上の世帯)の主要支出項目(名目値)について、コロナ渦を挟んだ2015年と2024年の年間支出額を、全国総合CPI(2020年=100)をデフレーターとして実質化して後で比較すると、衣服:147,643円 → 110,435円(約▲25%)、教養娯楽:364,449円 → 334,449円(約▲8%)、通信:156,245円 → 130,280円(約▲17%)と大きく減少している一方、保険医療:155,933円 → 169,749円(約+9%)、食料:954,900円 → 994,680円(約+4%)、外食:172,735円 → 172,901円(ほぼ横ばい)となっている。衣服・通信・娯楽を削減しつつ、外食をある程度維持し、食事や健康・医療(医薬品、健康食品・サプリ、診療・整骨など)への支出が増加しており、守るところと削るところを明確に選ぶ家計行動の傾向が伺える。 総務省統計局. (2025). 家計調査 品目分類別 年間支出金額(二人以上の世帯・単身世帯).総務省統計局. (2024). 消費者物価指数(2020年基準) 年平均.
11 Lim, W. M., et al. (2023). Evolution and trends in consumer behaviour: Insights from Journal of Consumer Behaviour.
2009~2022年に同誌に掲載された737本の論文を対象に、ビブリオメトリクス手法で消費者行動の進化を整理し、「情報処理(例:レビュー依存、アプリ比較)」「消費共同体(例:クラスタ、推し活、界隈)」「消費価値(慎重消費、ご褒美消費、小さな贅沢 など)」「サステナブル消費(フードロス、環境配慮 など)」「世代間消費(シニア市場、Z世代 など)」「ブランド関係(ブランドパーソナリティ、クラフト志向)」「消費者倫理(不祥事、炎上、ボイコット、グリーンウォッシュ)」「条件付き関係(単身世帯増加、コロナ後の環境変化など)」といった8つの主要テーマを示している。生成AIに関連して、特に最初の「情報処理(例:レビュー依存、アプリ比較)」が該当する。
12 Euromonitor International. (2024). Wiser wallet consumers worry about cost and expect added value from purchases. Euromonitor International.
「Wiser Wallets(賢い消費)」8とは、長引く不安定な経済環境や物価上昇の中で、価格に敏感になりつつも、「単に安い」よりも付加価値や信頼性を重視する戦略的な消費スタイル9を指す。
マクロの家計消費データを見ても、「何を削り、何を守るか」について家計内で選別する傾向が見られており10、こうした動きから、物価上昇や不安定な社会・経済環境の中で、消費者が情報収集に裏打ちされた「後悔のない消費」や「確かな情報に基づく選択」=賢い消費行動を模索する姿が浮かびあがる。
先行研究では、物価高と不確実性が続く中で、消費者は価格比較アプリやAIレコメンドなどのテクノロジーを活用しながら、情報収集を行い、支出の最適化を図ろうとする動きが広がっているとされる11。こうした技術に対する期待から、AIによる支援を前向きに受け止める姿勢が広がりつつある12ことが伺える。
8 Euromonitor International. (2024). Wiser wallet consumers worry about cost and expect added value from purchases. Euromonitor International.
9 たとえば日本では、2024年秋に美容・衛生用品大手の花王が発売したヘアケアシリーズ「THE ANSWER(ジ アンサー)」が象徴的である。同社が「花王100年の研究の集大成」と位置づける先端ヘアケア技術を信頼と付加価値として訴求し、「日経トレンディ 2025年上半期ヒット大賞&下半期ブレイク予測 美容部門 大賞」など複数の賞を受賞し、高い支持を集めた。
10 家計消費(2人以上の世帯)の主要支出項目(名目値)について、コロナ渦を挟んだ2015年と2024年の年間支出額を、全国総合CPI(2020年=100)をデフレーターとして実質化して後で比較すると、衣服:147,643円 → 110,435円(約▲25%)、教養娯楽:364,449円 → 334,449円(約▲8%)、通信:156,245円 → 130,280円(約▲17%)と大きく減少している一方、保険医療:155,933円 → 169,749円(約+9%)、食料:954,900円 → 994,680円(約+4%)、外食:172,735円 → 172,901円(ほぼ横ばい)となっている。衣服・通信・娯楽を削減しつつ、外食をある程度維持し、食事や健康・医療(医薬品、健康食品・サプリ、診療・整骨など)への支出が増加しており、守るところと削るところを明確に選ぶ家計行動の傾向が伺える。 総務省統計局. (2025). 家計調査 品目分類別 年間支出金額(二人以上の世帯・単身世帯).総務省統計局. (2024). 消費者物価指数(2020年基準) 年平均.
11 Lim, W. M., et al. (2023). Evolution and trends in consumer behaviour: Insights from Journal of Consumer Behaviour.
2009~2022年に同誌に掲載された737本の論文を対象に、ビブリオメトリクス手法で消費者行動の進化を整理し、「情報処理(例:レビュー依存、アプリ比較)」「消費共同体(例:クラスタ、推し活、界隈)」「消費価値(慎重消費、ご褒美消費、小さな贅沢 など)」「サステナブル消費(フードロス、環境配慮 など)」「世代間消費(シニア市場、Z世代 など)」「ブランド関係(ブランドパーソナリティ、クラフト志向)」「消費者倫理(不祥事、炎上、ボイコット、グリーンウォッシュ)」「条件付き関係(単身世帯増加、コロナ後の環境変化など)」といった8つの主要テーマを示している。生成AIに関連して、特に最初の「情報処理(例:レビュー依存、アプリ比較)」が該当する。
12 Euromonitor International. (2024). Wiser wallet consumers worry about cost and expect added value from purchases. Euromonitor International.
2|日本の生成AIの主利用は、依然として「調べるためのツール」
2025年において、生成AIとは、主に消費者に「何かを調べてくれる、情報を与えてくれるツール」であった。
実際、2024年の総務省のAIの利用に関する調査によれば、生成AIの利用率も全体の26.7%にとどまるが、全体の1割強が調べものにAIを使い、1割がコンテンツの要約や翻訳の用途で活用している。
一方、自分の好みに合った提案をAIから受け取る利用者は2割未満にとどまっている。旅行のスケジュール管理病気や健康のアドバイズなどをAIに任せる行動も同様に3%未満に留まっており、実際の消費において、自らの消費判断をAIに委ねるような使い方はまだまだこれからの状況である(数表1)。
2025年において、生成AIとは、主に消費者に「何かを調べてくれる、情報を与えてくれるツール」であった。
実際、2024年の総務省のAIの利用に関する調査によれば、生成AIの利用率も全体の26.7%にとどまるが、全体の1割強が調べものにAIを使い、1割がコンテンツの要約や翻訳の用途で活用している。
一方、自分の好みに合った提案をAIから受け取る利用者は2割未満にとどまっている。旅行のスケジュール管理病気や健康のアドバイズなどをAIに任せる行動も同様に3%未満に留まっており、実際の消費において、自らの消費判断をAIに委ねるような使い方はまだまだこれからの状況である(数表1)。
しかしRufusのように、消費者の購買プロセス全体に生成AIが深く介入し、ECプラットフォームに埋め込まれたショッピング特化LLM(Large Language Model/大規模言語モデル)が大手ECサイトに登場したことで、今後は、ChatGPTなどの汎用AIとは異なる「実際にモノを買うAI」の存在感が広がることが予想される。
これまでも従来型の機械学習AIは、「平均的な消費者像」に留まらない、多様なターゲットに対するマーケティングを可能にしてきた。一方、Rufusのように膨大なコマースデータと個々の顧客情報を統合するエージェントAIは、「消費者の良きパートナー」として機能し、本人でさえ気づいていない購買行動の複雑性を読み解き、最適化された価値提案を行う可能性を秘めているとも言えるだろう13。
13 AmazonRufusについては、消費者(ユーザー)行動に関する膨大な一次データ(ファーストパーティのショッピングデータ)を持っているため、一般的な生成AIサービスと比べてコマース分野で大きなアドバンテージを持っているとされる。
しかし、リリースされてから約1年が経過している米国のSNS上でのコメントでは、「Rufus が私たちの個人情報を十分に活かしているようには感じられない」「なぜその商品をおすすめするのか、どんなトレードオフがあるのかの説明が競合(例:ChatGPT Shoppingや、Perplexity Shop)と比べて弱い」「商品を並べるけれど、本当の意味で比較はしてくれない。それぞれの違いをきちんと比較するところまではしてくれなかった。」「自分の購入履歴を参考にしてほしいと頼むと、『購入履歴はご自身でご確認ください』と回答された」など、ユーザー体験の観点で、まだまだ消費者から十分な支持は受けていない様子も伺える。
これまでも従来型の機械学習AIは、「平均的な消費者像」に留まらない、多様なターゲットに対するマーケティングを可能にしてきた。一方、Rufusのように膨大なコマースデータと個々の顧客情報を統合するエージェントAIは、「消費者の良きパートナー」として機能し、本人でさえ気づいていない購買行動の複雑性を読み解き、最適化された価値提案を行う可能性を秘めているとも言えるだろう13。
13 AmazonRufusについては、消費者(ユーザー)行動に関する膨大な一次データ(ファーストパーティのショッピングデータ)を持っているため、一般的な生成AIサービスと比べてコマース分野で大きなアドバンテージを持っているとされる。
しかし、リリースされてから約1年が経過している米国のSNS上でのコメントでは、「Rufus が私たちの個人情報を十分に活かしているようには感じられない」「なぜその商品をおすすめするのか、どんなトレードオフがあるのかの説明が競合(例:ChatGPT Shoppingや、Perplexity Shop)と比べて弱い」「商品を並べるけれど、本当の意味で比較はしてくれない。それぞれの違いをきちんと比較するところまではしてくれなかった。」「自分の購入履歴を参考にしてほしいと頼むと、『購入履歴はご自身でご確認ください』と回答された」など、ユーザー体験の観点で、まだまだ消費者から十分な支持は受けていない様子も伺える。
3|顧客に寄り添う存在になれるか~利便性や最適化が進む一方、慎重に向き合うべき論点も
Rufusという名前は、かつてAmazon.comのオフィスにいたウェルシュ・コーギー犬の名に由来する。
飼い犬のRufusは倉庫を歩き回り、会議にも頻繁に参加する従業員のマスコット的存在であったという。そのDNAを引き継ぐ形で、現在のAIとなったRufusも顧客に寄り添う存在として位置づけられている。
しかし同時に、Rufusに限らず、エージェント型AIが消費者に極めて近い位置で行動を支援するようになることは、消費者行動の観点から新たなリスクも生み出すとも考えられる。
たとえば、このようなショッピングAIの一部のユーザーからは「商品を『おすすめ』はしてくれるが広告と推奨の境が曖昧なのではないか、という指摘も見られており、利便性や最適化が進む一方で、消費判断の自動化、商品選択の誘導、消費生活における依存・拡大など、慎重に向き合うべき論点が見え隠れする。
次回から、こうした生成AIエージェントが今後の消費の現場でどのように活用され、消費者とどのような関係を築いていくのか、そのメリットとリスクについて、消費や生活の観点から広く考察していく。
Rufusという名前は、かつてAmazon.comのオフィスにいたウェルシュ・コーギー犬の名に由来する。
飼い犬のRufusは倉庫を歩き回り、会議にも頻繁に参加する従業員のマスコット的存在であったという。そのDNAを引き継ぐ形で、現在のAIとなったRufusも顧客に寄り添う存在として位置づけられている。
しかし同時に、Rufusに限らず、エージェント型AIが消費者に極めて近い位置で行動を支援するようになることは、消費者行動の観点から新たなリスクも生み出すとも考えられる。
たとえば、このようなショッピングAIの一部のユーザーからは「商品を『おすすめ』はしてくれるが広告と推奨の境が曖昧なのではないか、という指摘も見られており、利便性や最適化が進む一方で、消費判断の自動化、商品選択の誘導、消費生活における依存・拡大など、慎重に向き合うべき論点が見え隠れする。
次回から、こうした生成AIエージェントが今後の消費の現場でどのように活用され、消費者とどのような関係を築いていくのか、そのメリットとリスクについて、消費や生活の観点から広く考察していく。
(2025年12月03日「基礎研レター」)
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2025年12月01日
News Release
【Amazon Rufusが示す「消費と生成AI」の新たな関係-消費への生成AIの浸透がもたらす「期待」と「リスク」(1)】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。
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