2025年12月03日

生成AIと著作権-利用と権利保護の両立にむけて

保険研究部   研究理事 兼 ヘルスケアリサーチセンター長

松澤 登 (まつざわ のぼる)

研究・専門分野
保険業法・保険法|企業法務

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7――生成物の著作物性

生成AIで作成した生成物に著作権は認められるかという問題がある。昨今、ネット上で流布されているAI作成のキャラクター画像が、相互に似たようなものがしばしば見受けられる。生成AIにより出力した生成物について著作権を主張できるのであろうか。

まず、生成AI自身が著作者となるかどうかについて、著作権法は著作者が「著作物を創作する者」(著作権法2条1項2号)とされていることから、文理解釈により人に限られる49。したがって生成AIが著作者にはならない。

次の問題として、生成物を出力させた利用者が著作者となるのかという問題がある。この点、文化庁「著作権審議会第9小委員会(コンピュータ創作物関係)報告書」50第3章―I-1によれば「コンピュータ創作物についても、人が思想感情を創作的に表現するための『道具』としてコンピュータ・システムを使用したものと認められれば、その著作物性は肯定されることになる」とする。そして、コンピュータを道具にしたといえるためには、人による「創作意図」と創作過程において具体的な結果を得るための「創作的寄与」があれば、著作物性が認められるとする。

米国ではAIの生成した生成物について職務著作を主張して自らの著作権を主張した事件がある(ターラー事件)51。同判決の説くところによれば、人の作品への関与、および最終的な創作についてのコントロールが新しいタイプの作品が著作権の範囲に含まれるという結論に重要であるところ、コンピュータが自律的に作成した作品にはそのようなコントロールはなく、したがって著作権は生じないとした。また、米国では著作権登録という制度があり、AIを利用して出力した生成物について自身の著作権を主張した事例がいくつかある。このなかでも生成物に35回もの加工を施したものについて著作権が認められたものがある(A Single Piece of American Cheese事件)52。米国では生成物出力までに工夫したというだけでは著作権性を認めることに否定的である。

日本においては、「プロンプトを駆使したり、類似度を指定したりして、繰り返しランダムに画像を生成させ、そのなかからよいものを一つ『選択』する行為は編集著作物の創作性を基礎づける『選択』にあたるのではないか」53との主張がある一方、「現行著作権法上、自然物をひとつ選択しただけでは、表現としてはあくまで自然物であることに変わりなく、表現が創作されたとはいいがたい(したがって生成物の中から一つ選択したからと言って表現が創作されたわけではない)」との主張もある54

後者の立場に立てば、生成物を出力するまでの工夫は創作的寄与とはならず、出力された生成物にさらに一定以上の人の手を加えることで創作物として認められるということになり、米国の事例と整合的である。
 
49 福岡真之介「AIと知的財産権」(ジュリスト2022年10月号)p86参照。なお、同じ知的財産権である特許権がAIに与えられるかについて争われたダバス事件(否定)がある(知財高裁令和7年1月30日)。
50 https://www.cric.or.jp/db/report/h5_11_2/h5_11_2_main.html#3_1 参照。
51 泉克幸「生成AIと著作権に関する覚書」中央ロー・ジャーナル(20巻3号)p60参照。
52 前掲注8田村p27参照。
53 中国ではプロンプトを工夫していたことをもって著作権を認めた事例がある(前掲注8田村p30以下)。
54 前掲注8田村p33参照。

8――検討

8――検討

本文で述べたところを整理し、コメントを付すと以下の通りである。

(1) 生成AIモデルへの著作物の読み込み(原則)
開発者が著作物を含むAI学習データを収集し、そのうえで複製・入力するのは著作権法30条の4に基づき原則として合法である。

学習データの収集は、権利者から個別契約で取得する場合のほか、ネット上から取得することが考えられる。ネットからの取得について、個別契約に基づいていれば著作権の許諾を得ることもできるものの、ネット上から自動収集する場合は、著作権の許諾の有無の区別は事実として前提とならない。

このようなことから著作権法30条の4は、著作物本来の効用である「享受」目的のない著作物のシステムへの読み込みにあたっての高度に柔軟な規定として、著作権法の権利制限規定として設けられている。これはAI技術の促進寄与にかなうものであり、著作権法上の目的である公正な利用に該当するものである。すなわち「1-はじめに」で書いた主要論点①は原則として合法ということになる。

著作物であってもそれを著作物として利用しないのであれば、著作者の権利を侵害しないと理解することになる。また、このルールには著作者の権利を不当に害さない場合という例外規定もあり、利用促進と権利保護のバランスも同条では取りやすいといえる。また、「享受」目的があるとしても利用者の不利益が軽微といえる場合には著作権法47条の5により権利制限され、著作物の利用は合法である。

(2) アクセス制限されているデータ
上記で述べたことはネット上でファイルにパスワードが付されており、会員登録をしなければ閲覧できないコンテンツであっても同様に当てはまる。ここで、パスワードが付されているコンテンツそのものは、通常は自動収集の対象外になるものと思われる。しかし、例えば新聞社の有料記事がポータルサイトで無料公開され、あるいは他者に無断転載されており、それらを学習データとして取り込んだとしても一般に著作権侵害とはならない。

特に無断転載の場合における、このような結論は一見すると理解しづらい。しかし著作物を「享受」しない使い方、すなわち著作物を著作物として利用しないため導かれる結論はこのようになる。この点、考え方でも海賊版と知って取り込んだような場合でなければ権利侵害を問われないと整理している。

しかし、米国の事例では、生成AIにより出力された画像に元画像の「透かし」が現れているものがあり、そのことをAIモデルへの複製・入力で不正な入力があったと主張されたものがある55。日本においては、このような場合であって、既存の画像がデータベースの一部を構成するものである場合には、画像データの読み込み自体が著作者の権利を不当に害するものとして著作権を侵害すると判断され、差止請求または損害賠償の対象となるものと考えられる。またこの場合、利用者が既存の著作物の「本質的特徴を直接感得しうる」生成物を出力した場合には差止請求の対象となる56

(3) 作風
作風には原則として著作権法の保護が及ばないのは上記4-3の通りである。これも一見して理解しづらい。生成AIによる作風の模倣は、既存の著作物の特徴を活かしているのではないかとの疑問があるからである。しかし、これも著作権法30条の4によれば「当該著作物」の表現を「享受することを目的としない場合」に該当し、原則として合法となる57。例えば印象派の画家は一見して印象派とわかる作品を制作しているが、各々の著作権はそれと関係なく成立するといったものに類するであろう。ただし、作風というにとどまらず「当該著作物」の「本質的特徴を感得しうるもの」になるような場合は著作権侵害の可能性が出てくる。印象派というだけにとどまらず「モネの睡蓮の絵」という程度に至るものは、当該著作物を複製したものとして違法になる可能性があると考えられる。

(4) データベースとしての販売
上記(1)~(3)の通り、開発者が生成AIにより著作権を侵害することを目的としない限りにおいては、原則として制限なしに著作物をAIモデル学習のために利用できる。他方、「robots.txt」をはじめとするアクセス制限措置をとることを含め、現在あるいは将来的に「データベースの著作物が販売され、あるいは販売予定であると推認される場合」には「著作者の利益を不当に害する」ことから著作権法30条の4但し書きに該当し、著作権法違反となる。これは既存の著作物であるデータベースに対して、データベースと同等に機能しうる生成AIが直接侵害するものになるからである。

AI開発者にとっては、「robots.txt」を記載するファイルの所有者がデータベースを販売しているか直ちにわかるわけではない。ましてや「将来的に販売予定」といった将来予測までAI開発者が判断することは困難である。他方、「robots.txt」が記載されているファイルは一切収集してはならないとした場合には、ニュースサイトをはじめ媒体社側が幅広く記載をする恐れがあり、その場合、AI学習に支障をきたすのではないかとの懸念もある。考え方は中庸を取っているわけではあるが、実務的に支障をきたさないかは今後の展開を見る必要がある。

(5) 利用者による侵害
上記(1)~(4)は開発者による既存の著作物のAIモデル構築にあたっての利用が著作権法違反となるかどうかの問題であった。これらは開発者が既存の著作物の著作権侵害を目的とする場合、データベースの販売で利益衝突が発生する場合を除き、著作権法に違反しないとされている。

他方、利用者は生成物を出力するプロンプトを入力するため、著作物を侵害するような内容のプロンプトである場合には、著作権法違反となることは理解しやすい。しかし、さらに利用者が意図せずとも生成AIの学習データとして読み込まれており、偶然に著作権を侵害する生成物が出力された場合(AIによる依拠)においても利用者が権利侵害を行ったと考えられていることは一見理解しづらい。

この点は、著作権侵害行為が発生した以上、誰かを行為主体として把握しなければ差止請求ができないという法技術的な面が存在するものと考える。この場合は利用者に故意・過失がなく、したがって上述6-4で触れた通り、損害賠償請求は認められない。前文で述べた主要論点②の答えとしては、意図的に著作権侵害を行った場合のほか、生成AIの学習データとして取り込んでいた場合も著作権法上問題となるというものである。

なお、AIによる依拠は著作者が立証するのはむつかしい。上述(2)のように透かしが映り込んでいるようなケースなどに限られた事例にとどまるものと思われる。
 
55 前掲注8田村p47参照
56 他方、生成物が既存の著作物の本質的特徴を直接感得しうるものではなく、かつ既存の著作物がデータベースを構成するデータでない場合は、開発者・利用者ともに責任は問われないことになると考えられる。
57 前掲注15奥邨p108参照。

9――おわりに

9――おわりに

開発者がAIモデルへの学習データの読み込みを行うにあたって、著作権を侵害するとされるケースは多くない。これはAI技術の進展に著作物の利用が不可欠であるからだ。侵害となるのは故意に特定の生成物の出力を行おうとした場合のほか、他者のデータベース著作物を侵害するようなケースに限定される。

他方、利用者にはこのようなセーフハーバーが認められない。それは生成AIが道具のようなものだからだ。例えばパソコンの描画ソフトで有名な画像に似た作品を生成するのと変わらない。ただ、生成AIの出力は利用者が簡単にコントロールできるものではない。上述の通り、米国では生成物へのコントロールが認められないため、著作物性が安易に認められないとしていることからも、そのことがうかがわれる。したがって利用者が故意に特定の画像に似せた生成物を出力したような場合でなければ、通常は著作権侵害とはならないものと考えられる。

なお、本稿執筆中、生成AIで既存の著作物である画像を無断で複製したとして、千葉県警が神奈川県の男を著作権法違反(複製権侵害)の疑いで地検に書類送検する方針を固めたとの記事が出た58。同記事によると2万回以上のプロンプトを入力したということであり、また同事件を報道したニュース番組の映像を確認したところ、かなり複雑な絵柄をほぼトレースしたような生成物が出力されており、著作権侵害での刑事立件が可能と県警が判断したことは首肯できる。

比較的AI開発者・提供者・利用者に有利な法制度となっていると言えるが、悪意を有する利用者にも一定程度対応できるものと考えられる。考え方は、判例の蓄積がない現状で学識者の知見を集積したものであるため、今後の判例の蓄積により、より一層実務的に支障をきたさない慣行が構築されていくことが期待される。
 
58 読売新聞オンライン https://www.yomiuri.co.jp/national/20251120-OYT1T50016/ 参照。

本資料記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と完全性を保証するものではありません。
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(2025年12月03日「基礎研レポート」)

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