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2025年12月02日
保険会社から見た、投資の基本的な特徴(欧州)-欧州保険協会の解説文書
03-3512-1833
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1――はじめに
2025年11月3日、欧州保険協会は、保険会社から見た投資についての基本的な特徴を解説し、それを踏まえた政策を提言する文書1を公表した。以下その概要を紹介する。
1 Investing from insurer’s perspective (2025.11.3 INSURANCE EUROPE)
https://www.insuranceeurope.eu/mediaitem/91cc2159-69e9-4406-a6f6-5377abd7339f/Investing+from+insurers+perspective.pdf?inline=1
(解説文書の翻訳や内容の説明は、筆者の解釈や理解に基づいている。)
1 Investing from insurer’s perspective (2025.11.3 INSURANCE EUROPE)
https://www.insuranceeurope.eu/mediaitem/91cc2159-69e9-4406-a6f6-5377abd7339f/Investing+from+insurers+perspective.pdf?inline=1
(解説文書の翻訳や内容の説明は、筆者の解釈や理解に基づいている。)
2――解説文書の内容
1|背景・目的
EUの戦略的優先事項であるグリーンディール(環境保護と経済成長の両立をめざす政策)、競争力コンパス(EUの経済力、回復力、長期的な繁栄を後押しする戦略的枠組み)、貯蓄投資同盟(個人貯蓄を投資に振り向ける政策)では、サステナビリティ、イノベーション、競争力推進のため、今後大規模な民間資金を必要としている。保険業界は約9.5兆ユーロ(うち70%がEU域内)を投資している欧州最大級の機関投資家であり、安定した長期資金の重要な供給源のひとつとなっている。
投資は、保険会社のビジネスモデルの中で自然に必要となる業務である。すなわち、保険契約者が保険料を前払いし、保険会社は将来の保険金請求や年金支払いに備えて、それを投資するという仕組みである。この投資期間は数年から長い場合は数十年に及ぶ。この長期的なビジネスモデルにより、保険会社は短期的な市場変動ではなく長期的なパフォーマンスを重視することが求められ、非流動性資産への投資や、景気悪循環を増幅させるプロシクリカリティへの対応を含めた資産運用力を高めている。これが経済全体に利益をもたらし、さらに保険会社が顧客の利益のための効果的な投資を行うことにつながる。
EUの戦略的優先事項であるグリーンディール(環境保護と経済成長の両立をめざす政策)、競争力コンパス(EUの経済力、回復力、長期的な繁栄を後押しする戦略的枠組み)、貯蓄投資同盟(個人貯蓄を投資に振り向ける政策)では、サステナビリティ、イノベーション、競争力推進のため、今後大規模な民間資金を必要としている。保険業界は約9.5兆ユーロ(うち70%がEU域内)を投資している欧州最大級の機関投資家であり、安定した長期資金の重要な供給源のひとつとなっている。
投資は、保険会社のビジネスモデルの中で自然に必要となる業務である。すなわち、保険契約者が保険料を前払いし、保険会社は将来の保険金請求や年金支払いに備えて、それを投資するという仕組みである。この投資期間は数年から長い場合は数十年に及ぶ。この長期的なビジネスモデルにより、保険会社は短期的な市場変動ではなく長期的なパフォーマンスを重視することが求められ、非流動性資産への投資や、景気悪循環を増幅させるプロシクリカリティへの対応を含めた資産運用力を高めている。これが経済全体に利益をもたらし、さらに保険会社が顧客の利益のための効果的な投資を行うことにつながる。
2|他の投資家と異なる、保険会社の特徴
保険会社の投資には、以下に挙げる3つの基本的特徴がある。
1.保険の負債特性
保険会社の投資判断の中核をなすのは、負債特性である。最も重要なのは、デュレーション(保険金支払いまでの期間の平均的長さ)、負債の規模の推移やキャッシュフローの規模と時期などの予測可能性である。これにより、投資期間と必要な流動性が決定される。
年金や保証付き貯蓄商品などは、長期でかつ比較的予測が可能な債務である。保険会社は、流動性は低いが高利回りの資産(不動産、未公開株式、貸付債権など)に投資することができる。これらの資産の長期性は、負債のキャッシュフローの長期性とマッチするので、流動性に問題がない場合は、満期保有などにより、安定した収益を得られる。
一方、損害保険のような、短期または発生時期の予測が難しい負債については、より高い流動性を保ち、柔軟な対処ができる資産ポートフォリオが必要である。特に、洪水や暴風雨などの災害による保険金請求は、発生頻度が低く、時期・規模の予測が困難であるため、保険会社は常に流動性資産を保有するか、あるいは再保険を利用することで対応することが一般的である。
2.保証スキームの存在
元本保証あるいは一定以上の利回り保証は、顧客個人が投資等のリスクを負わずに済むようにし、投資知識を持たない層でも参加できるようにする保険の機能である。通常、保険会社は保証部分の収益を確保するためにリスクの小さい債券投資に多くの資金を配分し、追加利益を目指すために残りの資金で株式投資を行うようなポートフォリオを保有する。
一方で、設定した保証水準を、保険商品の保有期間全体を通じて確実にクリアするために、保険会社の投資戦略が制約される(例えば、債券投資に多くの資金配分を行うことが必須であることなど)ので、それ以上の利益を得る潜在的投資能力を発揮できない可能性がある。
またソルベンシーII規制の資本要件により、ハイリスク(ハイリターン)資産の保有は制約を受けやすい。また市場環境によっては、利回り・期間などが負債に対して適切な資産を、入手できないこともある。この場合には、保険会社はデリバティブを利用したり、ミスマッチリスクを慎重に管理しながら別の投資を行ったりする方策をとることになる。
3.投資規模が大きいこと
保険会社は欧州で最大規模のポートフォリオを運用している。このことにより、保険会社は幅広い分散投資ができて、顧客投資家個人では利用しにくい資産への投資も可能となっている。
理想的には、十分な市場規模や発展性がある資産クラスに保険会社が投資できることが望ましいが、特定の長期債券やインフラ投資などはその点で課題があり、今後解消すべき障壁のひとつである。
保険会社の投資には、以下に挙げる3つの基本的特徴がある。
1.保険の負債特性
保険会社の投資判断の中核をなすのは、負債特性である。最も重要なのは、デュレーション(保険金支払いまでの期間の平均的長さ)、負債の規模の推移やキャッシュフローの規模と時期などの予測可能性である。これにより、投資期間と必要な流動性が決定される。
年金や保証付き貯蓄商品などは、長期でかつ比較的予測が可能な債務である。保険会社は、流動性は低いが高利回りの資産(不動産、未公開株式、貸付債権など)に投資することができる。これらの資産の長期性は、負債のキャッシュフローの長期性とマッチするので、流動性に問題がない場合は、満期保有などにより、安定した収益を得られる。
一方、損害保険のような、短期または発生時期の予測が難しい負債については、より高い流動性を保ち、柔軟な対処ができる資産ポートフォリオが必要である。特に、洪水や暴風雨などの災害による保険金請求は、発生頻度が低く、時期・規模の予測が困難であるため、保険会社は常に流動性資産を保有するか、あるいは再保険を利用することで対応することが一般的である。
2.保証スキームの存在
元本保証あるいは一定以上の利回り保証は、顧客個人が投資等のリスクを負わずに済むようにし、投資知識を持たない層でも参加できるようにする保険の機能である。通常、保険会社は保証部分の収益を確保するためにリスクの小さい債券投資に多くの資金を配分し、追加利益を目指すために残りの資金で株式投資を行うようなポートフォリオを保有する。
一方で、設定した保証水準を、保険商品の保有期間全体を通じて確実にクリアするために、保険会社の投資戦略が制約される(例えば、債券投資に多くの資金配分を行うことが必須であることなど)ので、それ以上の利益を得る潜在的投資能力を発揮できない可能性がある。
またソルベンシーII規制の資本要件により、ハイリスク(ハイリターン)資産の保有は制約を受けやすい。また市場環境によっては、利回り・期間などが負債に対して適切な資産を、入手できないこともある。この場合には、保険会社はデリバティブを利用したり、ミスマッチリスクを慎重に管理しながら別の投資を行ったりする方策をとることになる。
3.投資規模が大きいこと
保険会社は欧州で最大規模のポートフォリオを運用している。このことにより、保険会社は幅広い分散投資ができて、顧客投資家個人では利用しにくい資産への投資も可能となっている。
理想的には、十分な市場規模や発展性がある資産クラスに保険会社が投資できることが望ましいが、特定の長期債券やインフラ投資などはその点で課題があり、今後解消すべき障壁のひとつである。
3|保険会社の投資を左右する基本的な項目
上記の保険会社の特徴を踏まえて、保険会社が常に検討している項目と、今後の政策上の考慮事項を挙げる。
〇リスクとリターンのトレードオフ
保険会社はリスクに対して可能な限り高いリターンを達成することを目指している。この場合考慮されるべき、他の機関投資家にはない要素は、負債特性、保証内容、ソルベンシー要件、会計ルール、市場実態などである。
年金などの保証付き商品の場合、保険会社は保証水準を常に上回りながら、金利リスク、信用リスク、流動性リスク、市場リスクなどの関連リスクを積極的に管理する必要がある。そのためには債券運用によって運用収益と債務履行を慎重にバランスさせる必要はあるが、さらなる上乗せのための株式投資も考慮することができる。
保険投資戦略の中核となるのはリスク分散であり、資産クラス、投資先セクター、地域、満期時期などに応じて資産を分散させながら個々のリスクエクスポージャーを低減させる。このようにして、保険会社はポートフォリオのレジリエンスを向上させ、リスクに対するリターンを最適化させ、規制資本を効率的に管理することができる。
(政策上の考慮事項)
官民パートナーシップの活用を拡大し、機関投資家の参入を促進すべきであり、ソルベンシーIIのもとで配慮されるべきである。
〇特定の資産クラスに関する専門知識
保険会社は、ポートフォリオ管理のために専任の社内投資専門家を擁するか、あるいは外部の投資運用会社に委託する。インフラ投資や私募債など仕組が複雑な資産への投資や特に投資需要が高い時期には、リスク評価や投資機会の発掘、負債にあわせたオーダーメイドの投資組成のためにこうした専門知識が必要である。
こうしたやり方により、投資機会の増減に対応して費用対効果の高い運用を維持できる。
しかし外部への委託はコストが高いため現実的ではないという可能性もある。またインフラ投資、未公開株式、中小企業投資など投資規模が労力に比べてどうかという判断が必要になる。
(政策上の考慮事項)
ベンチャーキャピタル、中小企業向け融資などの市場規模を拡大するために国の資金の活用がどのように拡大できるかを検討する必要がある。
〇文化的なリスク選好、消費者の金融リテラシー
文化的な価値観は地域によって異なり、保険会社の投資戦略を形成する上でも大きな役割を果たす。不確実性回避の傾向が強い文化(日本、ドイツなど)では、固定利付資産や低いボラティリティ資産が好まれ、それが保険会社のポートフォリオに反映される。逆に不確実性回避が低い文化(北欧諸国、英国など)は保険会社も積極的な姿勢を取り、株式やオルタナティブ資産の配分比率を高める傾向がある。
国の税制や社会保障制度もそれに影響する。
社会の長期志向と短期志向も影響力がある。長期志向の文化では保険会社と志向が一致するが、短期志向の文化では、金融商品も短期的なリターンが重視され、保険会社でも流動性が高くデュレーションの短い投資が好まれる傾向がある。
また社会の嗜好や倫理規範も保険会社の投資に現れる。ESG投資がポートフォリオに多く組み込まれるか、より高い利回りを優先するか、などに現れる。
(政策上の考慮事項)
保険リテラシーを、学校教育をはじめとする金融教育の中核的要素と位置付けること
上記の保険会社の特徴を踏まえて、保険会社が常に検討している項目と、今後の政策上の考慮事項を挙げる。
〇リスクとリターンのトレードオフ
保険会社はリスクに対して可能な限り高いリターンを達成することを目指している。この場合考慮されるべき、他の機関投資家にはない要素は、負債特性、保証内容、ソルベンシー要件、会計ルール、市場実態などである。
年金などの保証付き商品の場合、保険会社は保証水準を常に上回りながら、金利リスク、信用リスク、流動性リスク、市場リスクなどの関連リスクを積極的に管理する必要がある。そのためには債券運用によって運用収益と債務履行を慎重にバランスさせる必要はあるが、さらなる上乗せのための株式投資も考慮することができる。
保険投資戦略の中核となるのはリスク分散であり、資産クラス、投資先セクター、地域、満期時期などに応じて資産を分散させながら個々のリスクエクスポージャーを低減させる。このようにして、保険会社はポートフォリオのレジリエンスを向上させ、リスクに対するリターンを最適化させ、規制資本を効率的に管理することができる。
(政策上の考慮事項)
官民パートナーシップの活用を拡大し、機関投資家の参入を促進すべきであり、ソルベンシーIIのもとで配慮されるべきである。
〇特定の資産クラスに関する専門知識
保険会社は、ポートフォリオ管理のために専任の社内投資専門家を擁するか、あるいは外部の投資運用会社に委託する。インフラ投資や私募債など仕組が複雑な資産への投資や特に投資需要が高い時期には、リスク評価や投資機会の発掘、負債にあわせたオーダーメイドの投資組成のためにこうした専門知識が必要である。
こうしたやり方により、投資機会の増減に対応して費用対効果の高い運用を維持できる。
しかし外部への委託はコストが高いため現実的ではないという可能性もある。またインフラ投資、未公開株式、中小企業投資など投資規模が労力に比べてどうかという判断が必要になる。
(政策上の考慮事項)
ベンチャーキャピタル、中小企業向け融資などの市場規模を拡大するために国の資金の活用がどのように拡大できるかを検討する必要がある。
〇文化的なリスク選好、消費者の金融リテラシー
文化的な価値観は地域によって異なり、保険会社の投資戦略を形成する上でも大きな役割を果たす。不確実性回避の傾向が強い文化(日本、ドイツなど)では、固定利付資産や低いボラティリティ資産が好まれ、それが保険会社のポートフォリオに反映される。逆に不確実性回避が低い文化(北欧諸国、英国など)は保険会社も積極的な姿勢を取り、株式やオルタナティブ資産の配分比率を高める傾向がある。
国の税制や社会保障制度もそれに影響する。
社会の長期志向と短期志向も影響力がある。長期志向の文化では保険会社と志向が一致するが、短期志向の文化では、金融商品も短期的なリターンが重視され、保険会社でも流動性が高くデュレーションの短い投資が好まれる傾向がある。
また社会の嗜好や倫理規範も保険会社の投資に現れる。ESG投資がポートフォリオに多く組み込まれるか、より高い利回りを優先するか、などに現れる。
(政策上の考慮事項)
保険リテラシーを、学校教育をはじめとする金融教育の中核的要素と位置付けること
4|保険会社の投資に関わる法規制における課題
〇規制の煩雑さと国ごとの不統一
EUにおける現在の企業および行政上の規制は、投資、イノベーション、国境を越えた事業展開に大きな障害となっている。民事、行政手続きの複雑で一貫性のない承認プロセスなどにより、法的不確実性が増大している。欧州が依然として完全な単一市場となっていないこと、過度に官僚的な規定が、新興企業や成長企業に過度の負担を与えており、起業家精神とイノベーションを阻害している。
特に倒産法が各国バラバラであることが国境を越えた事業上の紛争解決を複雑化し、投資家の信頼を損ねている。
国によって資本市場の規模や流動性がばらついていることも問題で、米国、英国、ドイツなど債券市場が発達した国では保険会社も多様な投資機会を得て恩恵を受けている。
(政策上の考慮事項)
不必要な企業行政規制の負担を軽減し、民間投資を促進すること
各国投資関連法の突然の変更や遡及適用などを回避すること
倒産法をEU内で統一すること
〇健全性規制
2016年から施行されているソルベンシーII規制は、経済的でリスクに基づく調和のとれた洗練された制度であり、当初から業界の支持を受けてきた。
しかし一部に過剰な資本要求で、長期保険の引き受けや株式・不動産投資を阻害する懸念がある項目もある。特に短期的な変動に過度に敏感であり、市場のボラティリティが高い時期には長期投資を阻害する要因となっている。
(政策上の考慮事項)
株式の長期保有に関する資本要件の改善
〇課税に関する政策
課税は保険会社が採用する投資戦略に影響を与える可能性がある。保険商品、特に退職貯蓄に関する個人課税制度は、保険業界への資金の流れに影響を与える可能性がある。また投資利益への課税は保険会社の投資判断に影響を与える可能性がある。
(政策上の考慮事項)
長期投資への安定した資金流入を維持するために、長期貯蓄と年金商品に対する優遇措置を保護・強化すること
税制に関する議論をEU資本市場全体あるいはSIU(貯蓄投資同盟)の統合した議題とすること
〇サステナビリティ
保険会社はポートフォリオ全体に、ESG基準を適用することにより、サステナビリティを投資判断にますます組み込むようになった。例えば、多くの保険会社は火力発電、オイルサンド(石油を含む砂岩)、人権侵害への関与が懸念される企業などサステナビリティ上の懸念があるセクターや地域への投資を回避するために、ネガティブスクリーンを実施している。またアクティブスチュワード戦略として、投資先との直接エンゲージメントを行う会社もある。場合によってはダイベストメント(投資撤退)を検討する。
(政策上の考慮事項)
EUにおいては、サステナブルな投資とは何かということを定めるために、金融開示規則、EUタクソノミ、グリーンボンド基準などいくつかのツールがあるのでそれらの定義の整合性を保つ必要がある。その過程において脱炭素戦略に関する資する長期投資への支援が不利にならないようにすべきである。
〇会計処理
投資の会計処理については、一時的な株価変動による損益計算書の歪みを回避することが長期投資家には重要である。例えば保険会社の株式投資についてみると、IFRS9号(国際会計基準)において、リサイクリング(実現した売却益を包括利益から純利益に振り替えること)が禁止されているため、キャピタルゲインよりも長期にわたる株式配当支払のある株式への投資を促す要因となっている。
(政策上の考慮事項)
実現キャピタルゲインは経済的に重要であり、長期な財務実績の不可欠な要素であることを認識し、IFRS9号の再検討が必要であること
それとは別に一時的な市場変動を全体の収益性をゆがめることなく管理するメカニズムを支援することにより、会計制度と長期投資の整合性を確保すること
会計規則の基準設定主体、規制当局、保険業界間の対話を促進すること
〇規制の煩雑さと国ごとの不統一
EUにおける現在の企業および行政上の規制は、投資、イノベーション、国境を越えた事業展開に大きな障害となっている。民事、行政手続きの複雑で一貫性のない承認プロセスなどにより、法的不確実性が増大している。欧州が依然として完全な単一市場となっていないこと、過度に官僚的な規定が、新興企業や成長企業に過度の負担を与えており、起業家精神とイノベーションを阻害している。
特に倒産法が各国バラバラであることが国境を越えた事業上の紛争解決を複雑化し、投資家の信頼を損ねている。
国によって資本市場の規模や流動性がばらついていることも問題で、米国、英国、ドイツなど債券市場が発達した国では保険会社も多様な投資機会を得て恩恵を受けている。
(政策上の考慮事項)
不必要な企業行政規制の負担を軽減し、民間投資を促進すること
各国投資関連法の突然の変更や遡及適用などを回避すること
倒産法をEU内で統一すること
〇健全性規制
2016年から施行されているソルベンシーII規制は、経済的でリスクに基づく調和のとれた洗練された制度であり、当初から業界の支持を受けてきた。
しかし一部に過剰な資本要求で、長期保険の引き受けや株式・不動産投資を阻害する懸念がある項目もある。特に短期的な変動に過度に敏感であり、市場のボラティリティが高い時期には長期投資を阻害する要因となっている。
(政策上の考慮事項)
株式の長期保有に関する資本要件の改善
〇課税に関する政策
課税は保険会社が採用する投資戦略に影響を与える可能性がある。保険商品、特に退職貯蓄に関する個人課税制度は、保険業界への資金の流れに影響を与える可能性がある。また投資利益への課税は保険会社の投資判断に影響を与える可能性がある。
(政策上の考慮事項)
長期投資への安定した資金流入を維持するために、長期貯蓄と年金商品に対する優遇措置を保護・強化すること
税制に関する議論をEU資本市場全体あるいはSIU(貯蓄投資同盟)の統合した議題とすること
〇サステナビリティ
保険会社はポートフォリオ全体に、ESG基準を適用することにより、サステナビリティを投資判断にますます組み込むようになった。例えば、多くの保険会社は火力発電、オイルサンド(石油を含む砂岩)、人権侵害への関与が懸念される企業などサステナビリティ上の懸念があるセクターや地域への投資を回避するために、ネガティブスクリーンを実施している。またアクティブスチュワード戦略として、投資先との直接エンゲージメントを行う会社もある。場合によってはダイベストメント(投資撤退)を検討する。
(政策上の考慮事項)
EUにおいては、サステナブルな投資とは何かということを定めるために、金融開示規則、EUタクソノミ、グリーンボンド基準などいくつかのツールがあるのでそれらの定義の整合性を保つ必要がある。その過程において脱炭素戦略に関する資する長期投資への支援が不利にならないようにすべきである。
〇会計処理
投資の会計処理については、一時的な株価変動による損益計算書の歪みを回避することが長期投資家には重要である。例えば保険会社の株式投資についてみると、IFRS9号(国際会計基準)において、リサイクリング(実現した売却益を包括利益から純利益に振り替えること)が禁止されているため、キャピタルゲインよりも長期にわたる株式配当支払のある株式への投資を促す要因となっている。
(政策上の考慮事項)
実現キャピタルゲインは経済的に重要であり、長期な財務実績の不可欠な要素であることを認識し、IFRS9号の再検討が必要であること
それとは別に一時的な市場変動を全体の収益性をゆがめることなく管理するメカニズムを支援することにより、会計制度と長期投資の整合性を確保すること
会計規則の基準設定主体、規制当局、保険業界間の対話を促進すること
3――おわりに
保険会社の投資のこうした特徴は、欧州に限らず保険会社全般にあてはまる基本的なことではあるが、EUとしては各国で規制が統一されていないことが、保険会社の投資活動の足かせとなっており、できる限り統一を目指すことや、それが現状の障害とならない政策を求めている、と考えられる。
税制についての言及は、当局からの公式な提示は限定的であるが、欧州保険協会が業界団体であることから、より積極的な意見が提示されている。
税制についての言及は、当局からの公式な提示は限定的であるが、欧州保険協会が業界団体であることから、より積極的な意見が提示されている。
(2025年12月02日「保険・年金フォーカス」)
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