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「秩序ある」外国人政策の展望-推進体制と政策議論
総合政策研究部 准主任研究員 鈴木 智也
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- 2025年参院選後、外国人政策は「量の拡大」から「質の管理」へと重点が移り、制度の適正化を軸とした新たな局面に入った。
- 高市政権は外国人政策を看板に掲げ、政府・党内に首相の指導力が強く反映される、強力なトップダウンの体制を構築している。
- すでに実施段階にある施策は運用面を強化して実効性を高め、検討段階にある施策は制度の緩みや穴を埋める修正が進む見込みである。
- 来年に議論が本格化する「外国人不動産取引規制」「人口戦略(総量規制)」に加えて、排外主義と一線を画すうえで重要な意味を持つ「共生政策」が注目される。
- 規制と共生、社会と経済、国と地方などの多様なバランスを如何に図るか。高市政権の手腕が問われる。
■目次
1――「量」の拡大から「質」の管理
2――トップダウンの推進体制
3――「適正化」と「共生」の両輪
1|外国人不動産取引規制
2|人口戦略(総量規制)
4――「排外主義と一線を画す」ための共生政策
1――「量」の拡大から「質」の管理
2025年10月21日に発足した高市政権は、外国人問題への取り組みを看板政策の1つに掲げ、従来の「積極的」受入れから、一定のルールや管理のもとで受入れる「秩序ある」受入れに方針を転換している。こうした背景には、外国人の急増に対して国内の受入れ態勢が追いつかず、これに関連した課題が顕在化して来たことに加えて、与党の枠組みが日本維新の会との連立に変わり、外国人政策の優先課題が制度の適正化や厳格化にシフトしてきた影響も大きい。実際、自民党・日本維新の会の「連立合意書」には、外国人に関するルール強化や法規制の整備が盛り込まれている[図表1]。今後の外国人政策は、この基本方針に沿って進むことが見込まれる。
2――トップダウンの推進体制
第1に、人事面では外国人政策を担当する2つのポストが新設された。1つは、外国人政策を担当する首相補佐官。首相の意思決定を政策に落とし込むパイプ役を担う。そして、もう1つが外国人政策担当大臣(外国人との秩序ある共生社会推進担当)。外国人政策全体の責任を負う主体であり、国民への説明責任や広報の役割を担う。これに加えて、法務大臣が出入国管理・在留管理・難民認定などの運用を統括し、法規制の見直しや法執行を強化する体制が図られている。
第2に、政府内・省庁間の意思統一を図る場として、以前からあった「外国人の受入れ・秩序ある共生社会実現に関する関係閣僚会議」が再編された。名称に「秩序ある」との文言が加わったことは、制度適正化に政策の重点がシフトしたことを示唆している。この会議体で省庁間の利害を政治レベルで調整し、政府として一体的な行動が取れるようにしている。
第3に、政策実行組織として、内閣官房に創設された「外国人との秩序ある共生社会推進室」がある。同室は、石破政権下で新設された組織であるが、当初から約80名体制で発足し、省庁間で潤滑油的な役割を果たすだけでなく、実務面を総合調整していく役割も担う。外国人政策は、法務省・経済産業省・総務省・厚生労働省・警察庁など様々な省庁が絡む横断的な分野であるため、効果的に施策を実施していくためには、関連省庁が連携して動くことが重要になる。
さらに、自民党内では、高市総裁直轄の「外国人政策本部」を新設し、政府と党が連動しながら迅速に意思決定できる体制が整えられている。本部内には、①出入国管理、②制度の適正化、③安全保障と土地法制を議論する3つのプロジェクトチームが設けられ、同時並行で議論を進める枠組みが用意されている[図表2]。
3――「適正化」と「共生」の両輪
外国人不動産取引規制については、安全保障上の重要施設周辺の管理や、住宅価格高騰への対応として見直しが検討されている。現状、国内における外国人の不動産取引に規制はほとんどない。2022年に重要土地等調査法が施行され、防衛関係施設や原発、国境離島などの安全保障上重要とされる区域の不動産取得は、届出義務などが課されることになったものの、国籍を条件とした規制とはなっていない。同法には、施行から5年後に必要に応じて見直すとの規定があり、通常であれば2027年が該当年となるが、それを待たない形で検討が始まっている。
また、住宅政策の観点からは、都市部を中心に住宅価格や家賃が高騰し、若年層や低中所得者層の住宅購入が難しくなっていることが社会問題化している。諸外国では、コロナ禍以降、外国人や外国企業による不動産購入に規制をかけて、追加の税負担を課すなどの措置を時限的に導入する動きが見られる[図表4]。国内でも外国人による不動産取引の実態調査が始まっているが、日本は世界貿易機関(WTO)加盟時に「外国人による土地取得制限の権利」を留保していないため、国籍を根拠とした規制を行うには国際法上の制約がある。そのため、制度設計には慎重な検討を要することになる。
人口戦略では、外国人受入れの「総量規制」の可否が焦点となる。日本維新の会は、夏の参院選で「外国人比率を可能な限り低く抑えること」を基本方針とし、日本人口全体に占める外国人の割合に上限を設ける「総量規制」の導入を公約として掲げてきた。
総量規制は、外国人全体や分野ごとの受入れ人数に上限を設定し、その枠内で管理する仕組みである。これに近い概念として、その枠内で分野別や地域別に割り当てるクオータ制があるが、日本でクオータ制に近い仕組みと言えるのは、5年間の受入れ見込数を設定している特定技能1号だけである[図表5]。
日本は少子高齢化・人口減少という課題を抱え、これまで外国人労働者や高度人材の卵である留学生を積極的に受入れてきた。仮に、総量規制の導入が検討される場合には、対象範囲、上限の設定方法、産業政策との整合性、具体的な運用面の設計など、多岐にわたる論点が出てくることになる。これが特定技能のようなレンジ管理に留まるのか、さらに踏み込んだ上限管理となるのか、検討の行方が注目される。
4――「排外主義と一線を画す」ための共生政策
日本の外国人政策は、これまで「受入れ拡大」にアクセルを踏み続けてきたが、今後はスピードを緩めて、国内の「受入れ体制を再構築」するフェーズに移る。その際には、規制と共生、社会と経済、国と地方など、様々なバランスを動かすことになる。このバランスを適切に保つことができるのか。高市政権の手腕が問われることになる。
(2025年12月01日「研究員の眼」)
03-3512-1790
- 【職歴】
2011年 日本生命保険相互会社入社
2017年 日本経済研究センター派遣
2018年 ニッセイ基礎研究所へ
2021年より現職
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会検定会員
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