2025年12月01日

法人企業統計25年7-9月期-トランプ関税下でも経常利益(季節調整値)は過去最高を更新する一方、設備投資は低調

経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

文字サイズ

■要旨

25年7–9月期の経常利益(金融業、保険業を除く全産業)は前年同期比19.7%増と4四半期連続の増益となった。製造業は23.4%増と2四半期ぶりの増益に転じ、非製造業も17.6%増と高い伸びを維持した。
 
製造業の経常利益が増加に転じたのは、その他の営業外収益(ネット)が前年から大きく増加したことが大きい。本業の利益を示す営業利益は前年比▲6.9%(4-6月期:同▲10.2%)と2四半期連続の減益となっている。トランプ関税の影響で製造業の収益環境は引き続き厳しい。季節調整済み経常利益は31.0兆円と過去最高を更新し、非製造業がその牽引役となっている。
 
設備投資は前年比2.9%増と3四半期連続で増加したが、製造業の慎重姿勢により伸びは鈍化、季節調整値では6四半期ぶりに減少した。
 
25年7–9月期GDP2次速報では、実質GDPが1次速報の前期比▲0.4%(年率▲1.8%)から前期比▲0.6%(年率▲2.2%)へ下方修正されると予想する。設備投資が1次速報の前期比1.0%から同0.1%へと下方修正されるだろう。

■目次

1.経常利益は製造業、非製造業ともに前年比二桁の高い伸び
2.経常利益(季節調整値)は過去最高を更新するが、自動車は大幅減益が続く
3.製造業の設備投資は慎重化
4.7-9月期・GDP2次速報は下方修正を予想
 

1.経常利益は製造業、非製造業ともに前年比二桁の高い伸び

1.経常利益は製造業、非製造業ともに前年比二桁の高い伸び

経常利益の推移 財務省が12月1日に公表した法人企業統計によると、25年7-9月期の全産業(金融業、保険業を除く、以下同じ)の経常利益は前年比19.7%(4-6月期:同0.2%)と4四半期連続の増益となった。製造業が前年比23.4%(4-6月期:同▲11.5%)と2四半期ぶりの増益となったことに加え、非製造業が前年比17.6%(4-6月期:同6.6%)と前期から伸びを高めた。
製造業は、輸出の低迷などから売上高の伸びは25年4-6月期の前年比1.3%から同0.2%に鈍化したが、売上高経常利益率が24年7-9月期の7.1%から8.7%に改善したことが収益の押し上げ要因となった。売上高経常利益率を要因分解すると、人件費要因はマイナスとなったが、原油価格の下落や営業外収益の大幅増加により変動費要因が利益率を大きく押し上げた。

非製造業は、売上高の伸びは前年比0.6%と4-6月期と変わらなかったが、売上高経常利益率が24年7-9月期の5.7%から6.6%に改善したことが収益の押し上げ要因となった。製造業と同様に人件費要因はマイナスとなったが、変動費要因が利益率を大きく押し上げた。
売上高経常利益率の要因分解(製造業)/売上高経常利益率の要因分解(非製造業)

2.経常利益(季節調整値)は過去最高を更新するが、自動車は大幅減益が続く

2.経常利益(季節調整値)は過去最高を更新するが、自動車は大幅減益が続く

経常利益を業種別に見ると、製造業は、トランプ関税の影響を強く受けている輸送機械は前年比▲14.0%と4-6月期の同▲29.7%に続き大幅減益となり、業務用機械(4-6月期:前年比▲14.2%→7-9月期:同▲15.2%)も2四半期連続の二けた減益となったが、電気機械(同87.5%)、生産用機械(同65.9%)、はん用機械(同42.5%)、情報通信機械(同24.9%)の高い伸びがそれをカバーした。

非製造業は、建設業(前年比48.6%)、サービス業(同31.8%)、運輸・郵便業(同25.6%)、不動産業(同13.2%)などが軒並み前年比二桁の大幅増益となった。

なお、製造業の経常利益が増加に転じたのは、その他の営業外収益(ネット)が24年7-9月期の▲4039億円のマイナスから1兆5761億円のプラスに転じたことが大きい。本業の利益を示す営業利益は前年比▲6.9%(4-6月期:同▲10.2%)と2四半期連続の減益となっている。トランプ関税の影響で製造業の収益環境は引き続き厳しい。
経常利益(季節調整値)の推移 季節調整済の経常利益は前期比3.3%(4-6月期:同2.0%)と2四半期連続で増加した。製造業は前期比5.9%(4-6月期:同▲3.0%)と3四半期ぶりに増加、非製造業は前期比2.1%(4-6月期:同4.6%)と4四半期連続で増加した。

経常利益(季節調整値)は31.0兆円(4-6月期:29.9兆円)となり、過去最高水準を更新した(これまでのピークは24年10-12月期の30.1兆円)。製造業はピーク時(24年10-12月期)から1割以上落ち込んでいるが、非製造業は3四半期連続で過去最高を更新した。

3.製造業の設備投資は慎重化

3.製造業の設備投資は慎重化

設備投資(ソフトウェアを含む)は前年比2.9%(4-6月期:同7.6%)と3四半期連続で増加したが、前期から伸びが鈍化した。非製造業は前年比3.9%(4-6月期:同3.0%)と3四半期連続で増加し、前期から伸びが若干高まったが。製造業が前年比1.4%(4-6月期:同16.4%)と18四半期連続で増加したものの、前期から伸びが大きく鈍化した。
設備投資( を含む)の推移 季節調整済の設備投資(ソフトウェアを含む)は前期比▲1.4%(4-6月期:同1.6%)と6四半期ぶりに減少した。非製造業は前期比0.7%(4-6月期:同▲0.7%)と2四半期ぶりに増加したが、製造業が前期比▲5.1%(1-3月期:同5.8%)と5四半期ぶりに減少した。

非製造業は好調な企業収益を受けて設備投資も堅調だが、トランプ関税の影響で収益環境が悪化している製造業は設備投資行動が慎重化している。

4.7-9月期・GDP2次速報は下方修正を予想

4.7-9月期・GDP2次速報は下方修正を予想

本日の法人企業統計の結果等を受けて、12/8公表予定の25年7-9月期GDP2次速報では、実質GDPが前期比▲0.6%(前期比年率▲2.2%)となり、1次速報の前期比▲0.4%(前期比年率▲1.8%)から下方修正されると予想する。

設備投資は1次速報の前期比1.0%から同0.1%に下方修正されるだろう。
2025年7-9月期GDP2次速報の予測 設備投資の需要側推計に用いられる法人企業統計の設備投資(ソフトウェアを除く)は前年比2.9%(4-6月期:同5.2%)と18四半期連続で増加したが、前期から伸びが鈍化した。法人企業統計ではサンプル替えや四半期毎の回答企業の差によって断層が生じるが、当研究所でこの影響を調整したところ、前年比1%台半ばとなった。金融保険業の設備投資(ソフトウェアを除く)は前年比14.7%(4-6月期:同17.8%)と3四半期連続で増加したが、前期から伸びが低下した。

1次速報段階では、設備投資の需要側推計値は前年比4.6%となっていた。本日の法人企業統計の結果は設備投資の下方修正要因と考えられる。

また、民間在庫変動は1次速報で仮置きとなっていた原材料在庫、仕掛品在庫に法人企業統計の結果が反映されるが、1次速報の前期比・寄与度▲0.2%から同▲0.1%に上方修正されるだろう。

その他の需要項目では、公的固定資本形成は9月の建設総合統計の結果が反映され、前期比0.1%から同▲0.6%に下方修正されると予想する。
 
なお、12/8公表予定の25年7-9月期2次速報では、約5年に1度の基準改定(2015年基準→2020年基準)の結果を反映した上で、24年度の速報値が年次推計値に改定される。今回の基準改定では、2020年の「産業連関表」、「国勢統計」、2023年の「住宅・土地統計」等の結果を反映させるとともに、国際基準への対応や経済活動の適切な把握に向けた推計方法の改善が行われた。

内閣府では、2020年基準改定により2020年の名目GDPの水準が14.4兆円(改定前GDP比で2.7%)押し上げられるとの試算を公表しているが、GDP成長率(名目、実質)への影響は不明である。今回の2次速報では、GDPの水準が過去に遡って変わることに加え、年度、四半期毎の成長率も大幅に修正される可能性がある。しかし、現時点では基準改定後の過去の計数が公表されていないため、今回の7-9月期GDP2次速報の予測はかなり幅をもってみる必要がある。

本資料記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と完全性を保証するものではありません。
また、本資料は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。

(2025年12月01日「経済・金融フラッシュ」)

Xでシェアする Facebookでシェアする

経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

週間アクセスランキング

ピックアップ

【法人企業統計25年7-9月期-トランプ関税下でも経常利益(季節調整値)は過去最高を更新する一方、設備投資は低調】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

法人企業統計25年7-9月期-トランプ関税下でも経常利益(季節調整値)は過去最高を更新する一方、設備投資は低調のレポート Topへ