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2025年11月26日
将来世代の給付低下を抑えるため少子化や長寿化に合わせて調整-年金額改定の意義と2026年度以降の見通し(2)
03-3512-1859
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■要旨
年金額は年度ごとに改定されている。2025年度の年金額は、前年の物価上昇を受けて、+2.7%増額されたが、同時に、マクロ経済スライドによる調整(2025年度は-0.4%)により実質的には目減りとなっている。また、2026年1月には、2026年度分の年金額が公表される見込みであり、物価上昇が続く中で、その動向が注目される。
そこで本稿では、年金額改定のルールのうちマクロ経済スライドによる調整(年金財政健全化のための調整)について、意義や経緯を確認した。その要点は、次のとおりである。
年金額の目減りというと現在の受給者が注目されがちだが、目減りの原因となっている仕組みは、現役世代の保険料の上昇の抑制や将来の給付水準の低下の抑制を考慮して作られたものである。現役世代は、高齢世代が年金の目減りを受け入れることで将来の給付水準の低下が抑えられることに、思いをはせる必要があるだろう。一方で高齢世代は、物価や賃金の伸びが低い場合やマイナスの場合には年金財政の健全化に必要な調整が先送りされ、将来の給付水準のさらなる低下につながることを、理解する必要があるだろう。両者の相互理解が進むことを期待したい。
■目次
1――本稿の問題意識:マクロ経済スライドの意義を確認する
2――改定ルールの全体像:本来のルールと年金財政健全化のための調整ルールの2つを適用
3――年金財政健全化のための調整ルール(いわゆるマクロ経済スライド)
1|導入の経緯:2004年改正で保険料の引上げ停止とセットで導入
2|仕組みの概略
:少子化や長寿化という人数の変化の影響を、毎年の年金額(単価)の見直しで吸収
3|仕組みの詳細:年金財政を単純化して考えると、改定率=賃金変動率+調整率となる
4|もう1つの効果:世代間の不公平を改善
4――特例ルール(いわゆる名目下限ルール):当面の受給者に配慮しつつ、将来の受給者へも配慮
1|特例創設時の考え方:特例該当はまれと考え、当面の受給者の生活に配慮
2|特例見直し時の考え方(2016年改正)
:特例該当の頻発に対処するため、未調整分を繰越し
3|特例見直しの意義と課題
:将来の給付水準の低下を抑えるが、繰越が溜まった場合に政治リスク
5――当面の厚生年金(2階部分)の調整軽減:年金財政の状況を見極めるため調整率を抑えて適用
6――総括:将来世代の給付低下を抑えるために、少子化や長寿化に合わせて当面の年金額を調整
年金額は年度ごとに改定されている。2025年度の年金額は、前年の物価上昇を受けて、+2.7%増額されたが、同時に、マクロ経済スライドによる調整(2025年度は-0.4%)により実質的には目減りとなっている。また、2026年1月には、2026年度分の年金額が公表される見込みであり、物価上昇が続く中で、その動向が注目される。
そこで本稿では、年金額改定のルールのうちマクロ経済スライドによる調整(年金財政健全化のための調整)について、意義や経緯を確認した。その要点は、次のとおりである。
- 年金額改定のルールのうち年金財政健全化のための調整(マクロ経済スライドによる調整)は、保険料の引上げを2017年に停止することとセットで、2004年改正で導入された。
- 年金財政健全化のための調整率は、保険料収入に影響する公的年金加入者数の増加率(基本的には減少)と、引退世代の寿命の伸び率を組み合わせたものになっている。
- この仕組みは、少子化に伴う加入者の減少によって保険料収入が減少する影響と、長寿化に伴う受給者の増加によって給付費が増加する影響という人口構成の変化に伴う影響を、毎年の年金額の見直しという単価の調整で吸収する仕組み、と理解できる。
- これにより年金財政の健全化が進み、年金財政の健全化が見通されれば、調整は停止される。
- この仕組みは、少子化や長寿化の伸展に合わせて将来の保険料を引き上げるという従来の制度と比べて、既に年金を受け取っている世代にも調整という形で負担を強いる点で、世代間の不公平を改善する仕組みにもなっている。
- 物価や賃金の伸びが低い場合やマイナスの場合には、当面の受給者への影響を配慮して、調整が一部しか適用されなかったり、調整が見送られたりする。ただし、2018年度からは適用されなかった未調整分が繰り越され、賃金や物価の伸びが大きい年度にまとめて適用されることになった。
- 2018年度から始まった繰越しは、2025年度までは繰り越しても数年以内に繰越しを消化できる状況が続いている。しかし、デフレの継続などにより繰越しが溜まり続ければ、デフレからインフレに転じた際に繰越分をルールどおりに適用するかが政治問題になるリスクがある。
- 2025年の改正で、2030年度までは厚生年金(2階部分)に適用するマクロ経済スライドの調整率を、本来の1/3に軽減することになった。2030年度時点の給付水準は、調整率を軽減せずにマクロ経済スライドの停止を判断した場合と同水準になる見込みだが、2030年度までは、年金額全体に占める厚生年金(2階部分)の割合が高いほど年金額全体の前年度からの増加率が高くなる。
年金額の目減りというと現在の受給者が注目されがちだが、目減りの原因となっている仕組みは、現役世代の保険料の上昇の抑制や将来の給付水準の低下の抑制を考慮して作られたものである。現役世代は、高齢世代が年金の目減りを受け入れることで将来の給付水準の低下が抑えられることに、思いをはせる必要があるだろう。一方で高齢世代は、物価や賃金の伸びが低い場合やマイナスの場合には年金財政の健全化に必要な調整が先送りされ、将来の給付水準のさらなる低下につながることを、理解する必要があるだろう。両者の相互理解が進むことを期待したい。
■目次
1――本稿の問題意識:マクロ経済スライドの意義を確認する
2――改定ルールの全体像:本来のルールと年金財政健全化のための調整ルールの2つを適用
3――年金財政健全化のための調整ルール(いわゆるマクロ経済スライド)
1|導入の経緯:2004年改正で保険料の引上げ停止とセットで導入
2|仕組みの概略
:少子化や長寿化という人数の変化の影響を、毎年の年金額(単価)の見直しで吸収
3|仕組みの詳細:年金財政を単純化して考えると、改定率=賃金変動率+調整率となる
4|もう1つの効果:世代間の不公平を改善
4――特例ルール(いわゆる名目下限ルール):当面の受給者に配慮しつつ、将来の受給者へも配慮
1|特例創設時の考え方:特例該当はまれと考え、当面の受給者の生活に配慮
2|特例見直し時の考え方(2016年改正)
:特例該当の頻発に対処するため、未調整分を繰越し
3|特例見直しの意義と課題
:将来の給付水準の低下を抑えるが、繰越が溜まった場合に政治リスク
5――当面の厚生年金(2階部分)の調整軽減:年金財政の状況を見極めるため調整率を抑えて適用
6――総括:将来世代の給付低下を抑えるために、少子化や長寿化に合わせて当面の年金額を調整
(2025年11月26日「基礎研レポート」)
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