2025年11月25日

米雇用統計(25年9月)-非農業部門雇用者数が市場予想を大幅に上回った一方、過去2ヵ月分が▲3.3万人の下方修正

経済研究部   主任研究員

窪谷 浩 (くぼたに ひろし)

研究・専門分野
米国経済

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1.結果の概要:雇用者数が市場予想を上回った一方、失業率も市場予想を上回る

11月20日、米国労働統計局(BLS)は政府閉鎖の影響で当初予定(10月3日)から48日遅れて9月の雇用統計を発表した。非農業部門雇用者数は、前月対比で+11.9万人の増加1(前月改定値:▲0.4万人)と+2.2万人から下方修正された前月、市場予想の+5.3万人(Bloomberg集計の中央値、以下同様)を大幅に上回った(後掲図表2参照)。

失業率は4.4%(前月:4.3%、市場予想:4.3%)と前月から+0.1%ポイント上昇し、横ばいを見込んだ市場予想を上回った(後掲図表6参照)。労働参加率2は62.4%(前月:62.3%、市場予想:62.3%)とこちらは前月から+0.1%ポイント上昇し、横這いを見込んだ市場予想を上回った。(後掲図表5参照)。
 
1 季節調整済の数値。以下、特に断りがない限り、季節調整済の数値を記載している。
2 労働参加率は、生産年齢人口(16歳以上の人口)に対する労働力人口(就業者数と失業者数を合計したもの)の比率。

2.結果の評価:非農業部門雇用者数の持ち直しを確認

事業所調査の非農業部門雇用者数(前月比)は過去2ヵ月分が合計▲3.3万人下方修正された一方、9月分が市場予想を大幅に上回り、25年4月以来の伸びを示した。この結果、過去3ヵ月の月間平均増加ペースは+6.2万人と前月発表時の同+2.9万人を上回り、雇用の持ち直しを示した。もっとも、25年初時点の同+23.2万人、25年上期の月間平均増加ペースの+8.3万人を下回っており、雇用増加ペースが鈍化している状況に変化はない。

家計調査は労働参加率が横這い予想に反し前月から改善を示したものの、失業率は4.4%と3ヵ月連続で上昇した。

一方、時間当たり賃金(全雇用者ベース)は、前月比+0.2%(前月改定値:+0.4%、市場予想:+0.3%)と+0.3%から上方修正された前月、市場予想を下回った。
(図表1)時間当たり賃金の伸び率 前年同月比は+3.8%(前月改定値:+3.8%、市場予想:+3.7%)とこちらは+3.7%から上方修正された前月に一致、市場予想を上回った(図表1)。

このようにみると、9月の雇用者数は過去2ヵ月分が下方修正され、9月分も来月以降に下方修正される可能性はあるものの、8月から持ち直しており、大幅減速懸念は後退した。もっとも、失業率が3ヵ月連続で上昇するなど労働市場全般が減速している状況に大きな変化はない。

一方、インフレが物価目標を上振れする中、雇用者数が持ち直したこともあって、12月のFOMC会合で政策金利が据え置きされるのか、▲0.25%利下げされるのか見方が拮抗している。

3.事業所調査の詳細:サービス、財生産部門ともに持ち直し

(図表2)非農業部門雇用者数の増減(業種別) 事業所調査のうち、民間サービス部門は前月比+8.7万人(前月:+5.0万人)と前月から伸びが加速した(図表2)。

民間サービス部門の中では、運輸・倉庫が前月比▲2.5万人(前月:+0.3万人)と前月からマイナスに転じたほか、人材派遣業が▲1.6万人(前月:▲1.0万人)となったこともあって、専門・ビジネスサービスが▲2.0万人(前月:▲1.7万人)とマイナス幅が拡大した。一方、金融サービスが+0.5万人(前月:▲1.5万人)と前月からプラスに転じたほか、医療・社会扶助サービスが+5.7万人(前月:+4.0万人)、娯楽・宿泊が+4.7万人(前月:+3.2万人)、小売業が+1.4万人(前月:+0.3万人)と前月から伸びが加速した。

財生産部門は前月比+1.0万人(前月:▲3.2万人)と前月からプラスに転じた。製造業が▲0.6万人(前月:▲1.5万人)と前月からマイナス幅が縮小したほか、建設業が+1.9万人(前月:▲1.4万人)とプラスに転じて財生産部門全体を押し上げた。

政府部門は前月比+2.2万人(前月:▲2.2万人)と前月からプラスに転じた。内訳をみると、連邦政府が▲0.3万人(前月:▲1.4万人)と前月からマイナス幅が縮小したほか、州・地方政府が+2.5万人(前月:▲0.8万人)とプラスに転じて政府部門全体を押し上げた。一方、連邦政府職員はトランプ政権による人員削減の動きが続いており、1月以降の減少数は▲9.7万人となった。
前月(8月)と前々月(7月)の雇用増加数(改定値)は前月が▲0.4万人(改定前:+2.2万人)と▲2.6万人の下方修正となったほか、前々月が+7.2万人(改定前:+7.9万人)と▲0.7万人の下方修正となった(図表3)。この結果、2ヵ月合計の修正幅は▲3.3万人の下修正となった。
 
BLSの公表に先立って10月1日に発表されたADP社の推計は、非農業部門(政府部門除く)の雇用増加数が前月比▲3.2万人(前月改定値:▲0.3万人、市場予想:+5.1万人)と+5.4万人から大幅に下方修正された前月を下回ったほか、増加を見込んだ市場予想も大幅に下回った。この結果、ADP社の統計は2ヵ月連続の雇用減少となり、雇用が持ち直した雇用統計とは不整合な動きとなった。

9月の賃金・労働時間(全雇用者ベース)は、民間平均の時間当たり賃金が36.67ドル(前月:36.58ドル)となり、前月から+9セント増加した。一方、週当たり労働時間は34.2時間(前月:34.2時間)とこちらは前月から横這いとなった。この結果、週当たり賃金は1,254.11ドル(前月:1,251.04ドル)となり、前月から増加した(図表4)。
(図表3)前月分・前々月分の改定幅/(図表4)民間非農業部門の週当たり賃金伸び率(年率換算、寄与度)

4.家計調査の詳細:労働参加率は2ヵ月連続で上昇

家計調査のうち、9月の労働力人口は前月対比で+47.0万人(前月:+43.6万人)と2ヵ月連続でプラスとなったほか、プラス幅が拡大した。内訳を見ると、就業者数が+25.1万人(前月:+28.8万人)と前月から伸びが鈍化した一方、失業者数が+21.9万人(前月:+14.8万人)と前月からプラス幅が拡大して労働力人口全体を押し上げた。非労働力人口は▲24.5万人(前月:▲22.0万人)と2ヵ月連続のマイナスとなったほか、マイナス幅が拡大した。

これらの結果、労働参加率は62.4%(前月:62.3%)と2ヵ月連続で上昇し、25年5月以来の水準に改善した(図表5)。

一方プライムエイジと呼ばれる働き盛り(25~54歳)のみの労働参加率は9月が83.7%(前月:83.7%)と前月から横這いとなった。女性が78.0%(前月:77.7%)と前月から+0.3%ポイント上昇した一方、男性が89.5%(前月:89.8%)と前月から▲0.3%ポイント低下した。

失業率は小数第1位では4.4%となったものの、小数第2位までとると4.44%と21年10月以来となる4.5%に近い水準まで上昇した(図表6)。
(図表5)労働参加率の変化(要因分解)/(図表6)失業率の変化(要因分解)
9月の長期失業者数(27週以上の失業者人数)は181.4万人(前月:193.0万人)と前月から▲11.6万人の減少となった。長期失業者の失業者全体に占めるシェアは23.6%(前月:25.7%)と前月から▲2.1%ポイント低下した(図表7)。一方、平均失業期間は24.1週(前月:24.5週)と前月から4か月ぶりに▲0.4週短期化した。

最後に、周辺労働力人口(174.2万人)3や、経済的理由によるパートタイマー(457.9万人)も考慮した広義の失業率(U-6)4は、9月が8.0%(前月:8.1%)と前月から▲0.1%ポイント低下した(図表8)。この結果、通常の失業率(U-3)との乖離幅は+3.6%ポイント(前月:+3.8%ポイント)と前月から▲0.2%ポイント縮小した。
(図表7)失業期間の分布と平均失業期間/(図表8)広義失業率の推移
 
3 周辺労働力とは、職に就いておらず、過去4週間では求職活動もしていないが、過去12カ月の間には求職活動をしたことがあり、働くことが可能で、また、働きたいと考えている者。
4 U-6は、失業者に周辺労働力と経済的理由によりパートタイムで働いている者を加えたものを労働力人口と周辺労働力人口の和で除したもの。つまり、U-6=(失業者+周辺労働力人口+経済的理由によるパートタイマー)/(労働力人口+周辺労働力人口)。

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(2025年11月25日「経済・金融フラッシュ」)

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