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2025年12月03日
蓄電池ファンドへの投資機会
03-3512-1860
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近年、再生可能エネルギーの普及拡大に伴い、蓄電池ファンドへの投資が急速に拡大している1。 日本では特に系統用大型蓄電池の市場が活況を呈しており、企業による参入や投資が相次いでいる。経済産業省によれば、送電網への接続が検討中の蓄電池プロジェクト容量は2024年末時点で約9,500万kWと、前年比で3.5倍に急増した2。
蓄電池ビジネスが注目される背景には、再生可能エネルギー特有の課題がある。太陽光や風力発電は天候や時間帯によって発電量が大きく変動し、発電量と消費量のバランスを取ることが難しいため、電力系統への安定供給に課題が生じる。
国内では再生可能エネルギー電力の供給過剰時に発電を止めざるを得ないケース(出力制御)が増加傾向にあり、2023年度には再生可能エネルギーの出力制御電力量は前年の3倍に達した3。蓄電池はこうした再生可能エネルギーのロスを防ぎ、昼間に余る電力を蓄え夜間などに活用する解決策となる。蓄電池は発電後の電力を一時的に貯蔵し需要に応じて放出できるため、自然エネルギー由来の不安定な電力を平準化する調整弁の役割を果たす(図表1)。
蓄電池ビジネスが注目される背景には、再生可能エネルギー特有の課題がある。太陽光や風力発電は天候や時間帯によって発電量が大きく変動し、発電量と消費量のバランスを取ることが難しいため、電力系統への安定供給に課題が生じる。
国内では再生可能エネルギー電力の供給過剰時に発電を止めざるを得ないケース(出力制御)が増加傾向にあり、2023年度には再生可能エネルギーの出力制御電力量は前年の3倍に達した3。蓄電池はこうした再生可能エネルギーのロスを防ぎ、昼間に余る電力を蓄え夜間などに活用する解決策となる。蓄電池は発電後の電力を一時的に貯蔵し需要に応じて放出できるため、自然エネルギー由来の不安定な電力を平準化する調整弁の役割を果たす(図表1)。
近年では政府は大型蓄電池の導入を支援する補助金制度を拡充し複数年にわたる助成措置を講じている。蓄電池事業の収益機会は政策と市場制度の整備によって拡大している。政府は電力市場改革の一環として、将来の供給力を売買する「容量市場」(容量市場は4年後の発電設備容量をオークションで取引し、電力会社から容量確保分の収入を得る仕組み)を2020年に創設した。また、短期的な需給逼迫時に予備電力を調達する「需給調整市場」(いわゆる調整力市場)を2021年に開設した。このような市場整備により、蓄電池プロジェクトの事業採算性が向上し新規参入を後押ししている。
中でも、「長期脱炭素電源オークション」は長期安定収入を保証し蓄電池など再生可能エネルギーの普及を後押しする制度として注目される。政府は電力の脱炭素化に向け、2023年度から容量市場の一部として再生可能エネルギー専用の長期オークション制度を開始した。この制度では地域ごとに上限価格を定めた入札で落札した事業に対し、20年間にわたり設備の建設・運営コストと一定の利益を保証する。このオークションにより、天候等に発電量が影響される再生可能エネルギー設備や蓄電池プロジェクトでも長期の収益見通しが立てやすくなり、銀行融資など資金調達もしやすくなった。
こうした事業環境の変化により、蓄電池分野には異業種も含めた多様なプレーヤーが続々参入している。日本では新興企業のしろくま電力のようなスタートアップから、大手電力会社、独立系発電事業者、通信やリース会社、投資ファンドなどが参入し競争が活発化している。
2024年には、伊藤忠商事と英Gore Street Capitalが東京都と連携して日本初の蓄電池特化型ファンドを立ち上げ、官民出資で約80億円超を調達して本格運用を開始した4。このファンドは関東エリアを中心に新設の蓄電所プロジェクトに投資し、開発から運用まで一貫して手掛けるもので、エネルギー業界以外からも不動産・サービス・金融など11の機関投資家が出資している。このように大型資本の参入が相次ぐ背景には、蓄電池事業の収益性とインフラとしての安定性に対する期待がある。
再生可能エネルギーの今後の拡大に蓄電インフラは不可欠であり、成長市場として注目が高まっている。2050年カーボンニュートラル実現を目指す日本において、太陽光・風力発電の導入量は今後飛躍的に増える見通しであり、電力系統の安定化を担う蓄電池への需要も比例して高まっている。
また、太陽光発電所の適地が限られる中、蓄電所は日射条件に左右されず同じ出力なら用地面積は太陽光の20分の1程度で済むとの指摘もあり、立地面でも柔軟性が高い点は投資案件の開発を容易にする(蓄電池は都市近郊の遊休地や日照の少ない土地にも設置可能)。また、技術革新と量産効果で蓄電池のコストは急低下しており、2024年時点の世界の大規模蓄電システム費用は1kWhあたり165ドルと5年前の半分以下になった5。
機関投資家にとって蓄電池ファンドは、長期安定収益と社会的意義を兼ね備えた投資先となり得る。20年間の固定契約収入や容量市場・調整市場からの定期収入によってキャッシュフローの予見性が高く、インフラ資産として低リスクな運用が期待される。また、脱炭素インフラへの投資はESGの観点からも価値がある。再生可能エネルギーを効果的に活用する持続可能な社会の構築に向けた蓄電池の導入拡大や投資の動向に注目したい。
中でも、「長期脱炭素電源オークション」は長期安定収入を保証し蓄電池など再生可能エネルギーの普及を後押しする制度として注目される。政府は電力の脱炭素化に向け、2023年度から容量市場の一部として再生可能エネルギー専用の長期オークション制度を開始した。この制度では地域ごとに上限価格を定めた入札で落札した事業に対し、20年間にわたり設備の建設・運営コストと一定の利益を保証する。このオークションにより、天候等に発電量が影響される再生可能エネルギー設備や蓄電池プロジェクトでも長期の収益見通しが立てやすくなり、銀行融資など資金調達もしやすくなった。
こうした事業環境の変化により、蓄電池分野には異業種も含めた多様なプレーヤーが続々参入している。日本では新興企業のしろくま電力のようなスタートアップから、大手電力会社、独立系発電事業者、通信やリース会社、投資ファンドなどが参入し競争が活発化している。
2024年には、伊藤忠商事と英Gore Street Capitalが東京都と連携して日本初の蓄電池特化型ファンドを立ち上げ、官民出資で約80億円超を調達して本格運用を開始した4。このファンドは関東エリアを中心に新設の蓄電所プロジェクトに投資し、開発から運用まで一貫して手掛けるもので、エネルギー業界以外からも不動産・サービス・金融など11の機関投資家が出資している。このように大型資本の参入が相次ぐ背景には、蓄電池事業の収益性とインフラとしての安定性に対する期待がある。
再生可能エネルギーの今後の拡大に蓄電インフラは不可欠であり、成長市場として注目が高まっている。2050年カーボンニュートラル実現を目指す日本において、太陽光・風力発電の導入量は今後飛躍的に増える見通しであり、電力系統の安定化を担う蓄電池への需要も比例して高まっている。
また、太陽光発電所の適地が限られる中、蓄電所は日射条件に左右されず同じ出力なら用地面積は太陽光の20分の1程度で済むとの指摘もあり、立地面でも柔軟性が高い点は投資案件の開発を容易にする(蓄電池は都市近郊の遊休地や日照の少ない土地にも設置可能)。また、技術革新と量産効果で蓄電池のコストは急低下しており、2024年時点の世界の大規模蓄電システム費用は1kWhあたり165ドルと5年前の半分以下になった5。
機関投資家にとって蓄電池ファンドは、長期安定収益と社会的意義を兼ね備えた投資先となり得る。20年間の固定契約収入や容量市場・調整市場からの定期収入によってキャッシュフローの予見性が高く、インフラ資産として低リスクな運用が期待される。また、脱炭素インフラへの投資はESGの観点からも価値がある。再生可能エネルギーを効果的に活用する持続可能な社会の構築に向けた蓄電池の導入拡大や投資の動向に注目したい。
1 本稿は、持続可能なエネルギー投資に関する一般的な動向を紹介するものであり、特定の企業・ファンド・金融商品を推奨または勧誘するものではない。
2 日本経済新聞「日本勢、再生エネ蓄電事業拡大 中国が迫る電池価格競争」、2025年6月5日
3 経済産業省「再生可能エネルギー出力制御の長期見通し等について」、2024年12月2日
4 伊藤忠商事「東京都との連携による日本初の系統用蓄電池専業ファンドの本格運営開始について」、2024年9月30日
5 日本経済新聞「KDDIや三井住友系リースが蓄電所 再エネ調整弁、異業種の参入相次ぐ」、2025年7月16日
(2025年12月03日「ニッセイ年金ストラテジー」)
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