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保険と年金基金における各種リスクと今後の状況(欧州 2025.10)-EIOPAが公表している報告書(2025年10月)の紹介
保険研究部 主任研究員 年金総合リサーチセンター・気候変動リサーチセンター兼任 安井 義浩
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1――はじめに
1 (年金分野) Institutions for occupational retirement provision(IORPs) risk dashboard (2025.10.30 EIOPA)
https://nexteuropa-multisites.s3.eu-west-1.amazonaws.com/www.eiopa.europa.eu/assets/iorps-risk-dashboard/EIOPA-BoS-25-502%202025%20October%20IORP%20Risk%20Dashboard.html
(保険分野)Insurance Risk Dashboard (2025.10.30 EIOPA)
https://nexteuropa-multisites.s3.eu-west-1.amazonaws.com/www.eiopa.europa.eu/assets/insurance-risk-dashboard/EIOPA-BoS-25-495_October25-Insurance-risk-dashboard.html
(報告書の翻訳や内容の説明は、筆者の解釈や理解に基づいている。)
2 各リスクの内容は、その名称からほぼ直感的に想像はつくと思われるが、具体的な説明については、以前の報告(下記)を参照頂きたい。
保険分野 「保険分野における各種リスクと今後の動向(欧州2024.2)」(ニッセイ基礎研究所2024.2.29)
https://www.nli-research.co.jp/files/topics/77763_ext_18_0.pdf?site=nli
年金基金分野 「年金基金を取り巻く各種リスクと今後の見通し(欧州2024.2)」(ニッセイ基礎研究所 2024.3.12)
https://www.nli-research.co.jp/files/topics/77855_ext_18_0.pdf?site=nli
2――各リスクの状況
〇主要地域の次の四半期のGDP成長率予測が1.1%(前回0.8%)と予測され、マクロリスクは中程度のレベルで安定している。世界のインフレ率予測は2.1%(前回予測2.0%)とわずかながら上昇した。金融政策は安定的に推移しており、関税や財政政策に伴う変化は各種指標に大きな影響を与えていない。
〇信用リスクに関しては中程度のレベルで、引き続き安定している。
〇市場リスクは、依然として高水準である。これまでさらなる上昇が予測されていたが、今後は高水準のまま安定的に推移するものとみて、見通しを変更する。保険会社の保有する債券と株式のボラティリティは低下したものの高水準である。2025年第2四半期末の保険会社の資産構成比は、債券は51.3%(前四半期末51.2%)、株式は6.0%(前四半期末も6.0%)と、ほぼ変化することなく安定している。
不動産については、住宅用不動産の価格が上昇しているものの、保険会社における資産構成比は約3%と比較的小さいため、影響は限定的である。
2024年の投資収益と保証金利の差は、良好な市場環境を反映して平均的にはプラスであった。デュレーションミスマッチ(中央値)も2025年第2四半期末にマイナス4.9%で安定している。
〇収益性と支払能力のリスクは、現状の傾向を維持している。ソルベンシーマージン比率はわずかに上昇している(2025年第2四半期末の保険グループ平均202.5%(前四半期197.8%))。資産負債超過収益率3は上昇した(2025年第2四半期末15.4%、前回の測定値は2024年末13.9%)。
〇相互関連と不均衡リスクは、引き続き中程度で安定している。
〇保険引受リスクについては、中程度で安定しているがさらに低下傾向である。2024年から、指標の一つである保険料収入が大幅に増加していたが、そうした動きは落ち着いている。生命保険会社の保険料収入増加率は、2025年第2四半期は10.8%(前四半期13.3%)となった。損害保険会社の保険料収入増加率も6.2%(前四半期7.9%)とプラスではあるが小幅の低下であった。損害率は若干上昇して61.0%(前四半期59.8%)となった。
〇市場受容リスクは、中程度で低下傾向であった。
〇ESG関連リスクはこれまで中程度で安定しているが、今後12か月の見通しも依然として上昇傾向にある。保険会社の気候関連資産へのエクスポージャーの中央値はわずかに減少し、保険会社が保有するグリーンボンド残高は、2025年第2四半期末には、社債残高の7.4%(前四半期末7.5%)で安定して推移している。気候変動の物理的リスクに関する指標としてのリスクエクスポージャーをみると、暴風に関するエクスポージャーが洪水よりも高い水準であるが、それぞれの水準に変化はない(2024年末時点)。
〇デジタル化とサイバーリスクは、現時点では中程度のレベルにとどまっているが、経営者へのアンケート結果では、地政学的状況に基づく警戒感が高まってきている。従って、オペレーショナルリスクおよびサイバー引受リスクの両面において、サイバー関連の脅威は高まる見通しと変更した。
3 原文では、Return on excess of assets over liability (ROEに類似した指標か。)
〇信用リスクに関しては中程度のレベルで、引き続き安定している。
〇市場と資産の収益リスクは、高水準から中程度に変更した。2025年第2四半期末時点における、総資産に占める債券の構成比の中央値は53.8%(前四半期末55.2%)で、わずかに低下。株式は変化なく24.9%(前四半期末も24.9%)であった。年金基金全体の利回りは2024年には平均6.6%(2023年は8.0%)とプラスを維持した。見通しは「増大」から「横ばい」に変更した。
〇流動性(資金調達)リスクは中程度で低下傾向にある。流動性資産比率は2025年第2四半期末に51.6%(前四半期末52.2%)とわずかに低下した。また流動性指標としての流入(拠出金)/流出(給付金等)は中央値108.1%と安定している(2024年)。
〇確定給付型基金における準備金および資金調達のリスクは中程度であるが、全体として財務状況はやや改善した。2025年第2四半期の資産の負債超過率(中央値)は22.8%(前四半期19.9%)である。
〇集中リスクは中程度である。
〇ESG関連リスクも中程度で安定している。株式・社債のうち気候関連資産のエクスポージャーについては、2025年第2四半期末の中央値は横ばいで0.6%であった。社債全体に占めるグリーンボンドへの年金基金の投資割合は2025年第2四半期には9.1%(前四半期8.9%)へと上昇した。
〇デジタル化およびサイバーリスクは、保険分野同様に中程度の水準にあるが、地政学的状況を踏まえると、サイバー攻撃の脅威は依然として大きな懸念事項である。
3――おわりに
(2025年11月14日「保険・年金フォーカス」)
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03-3512-1833
- 【職歴】
1987年 日本生命保険相互会社入社
・主計部、財務企画部、調査部、ニッセイ同和損害保険(現 あいおいニッセイ同和損害保険)(2007年‐2010年)を経て
2012年 ニッセイ基礎研究所
【加入団体等】
・日本アクチュアリー会 正会員
・日本証券アナリスト協会 検定会員
安井 義浩のレポート
| 日付 | タイトル | 執筆者 | 媒体 |
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