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家計消費の動向(二人以上世帯:~2025年9月)-「メリハリ消費」継続の中、前向きな変化の兆しも

2025年11月14日

(久我 尚子) ライフデザイン

■要旨
 
  • 2025年9月の家計消費は、実質賃金がマイナス圏で推移する中でも緩やかな改善傾向が続いている。消費者は、食料や日用品などの生活必需品の支出を抑える一方で、娯楽には一定の支出を維持する「メリハリ消費」を継続している。なお、8・9月には「教養娯楽」の支出が増え、「食料」がやや改善傾向を示すなど、慎重な消費姿勢の中にも生活全体を整え直そうとする前向きな変化の兆しが表れ始めている可能性がある。
     
  • 分野別では、パック旅行費が前年比+70%前後と大幅に増加した。円安への慣れによる心理的順応に加え、費用感を把握しやすい定額プランの増加や、「早めの予約」といった合理的な行動が支出増を後押ししている。
     
  • 食事分野では、米や生鮮肉は価格上昇により買い控えが生じる一方で、冷凍調理食品や出前などの利便性重視の食品・サービスは堅調を維持している。消費者が価格と利便性の両面で厳しく選択を行う「メリハリ消費」が生活に根付いている一方、日常の基本さえも見直さざるを得ない現実も浮き彫りになっている。
     
  • デジタルコンテンツへの支出も堅調であり、コストパフォーマンスの高い娯楽として、物価高の中でも優先順位の高い支出となっている。


■目次

1――はじめに~実質賃金はマイナスだが、個人消費は緩やかな改善傾向が継続
2――二人以上世帯の消費支出の概観~「メリハリ消費」継続の中に前向きな変化の兆しも
3――主な個別費目の状況~分野ごとに異なる動き、回復と抑制が並行
  1|旅行・レジャー~パック旅行費が大幅増、円安への慣れと合理的な旅行選択
  2|交通~公共交通が持ち直す一方、カーシェアは一服
  3|アパレル・メイクアップ用品
   ~スーツ需要の弱まり、女性服・メイクアップ用品は比較的堅調
  4|食事
   ~外食は回復基調が継続、物価高で高価格食材は買い控えの一方、利便性食品は堅調を維持
  5|デジタル娯楽~物価高でも抑制対象ではない、デジタルコンテンツは生活に定着
4――おわりに~実質賃金マイナス下でも、慎重さの中にある前向きな変化に注目

生活研究部   上席研究員

久我 尚子(くが なおこ)

研究領域:暮らし

研究・専門分野
消費者行動、心理統計、マーケティング

経歴

プロフィール
【職歴】
 2001年 株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ入社
 2007年 独立行政法人日本学術振興会特別研究員(統計科学)採用
 2010年 ニッセイ基礎研究所 生活研究部門
 2021年7月より現職

・内閣府「統計委員会」専門委員(2013年~2015年)
・総務省「速報性のある包括的な消費関連指標の在り方に関する研究会」委員(2016~2017年)
・東京都「東京都監理団体経営目標評価制度に係る評価委員会」委員(2017年~2021年)
・東京都「東京都立図書館協議会」委員(2019年~2023年)
・総務省「統計委員会」臨時委員(2019年~2023年)
・経済産業省「産業構造審議会」臨時委員(2022年~)
・総務省「統計委員会」委員(2023年~)

【加入団体等】
 日本マーケティング・サイエンス学会、日本消費者行動研究学会、
 生命保険経営学会、日本行動計量学会、Psychometric Society

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