NEW
2025年11月12日

景気ウォッチャー調査2025年10月~高市政権への期待から、先行き判断DIは前月から4.6ポイントの大幅上昇~

経済研究部 研究員 佐藤 雅之

文字サイズ

1.景気の現状判断DI(季節調整値)は前月差2.0ポイント上昇の49.1

内閣府が11月11日に公表した景気ウォッチャー調査によると、25年10月の景気の現状判断DI(季節調整値)は前月差2.0ポイント上昇の49.1と、6ヵ月連続の上昇となった。

地域別では、全国12地域中、10地域で上昇、2地域で低下した。最も上昇幅が大きかったのは東海(前月差3.6ポイント)で、最も低下幅が大きかったのは沖縄(同▲1.1ポイント)であった。

現状判断DI(季節調整値)の内訳をみると、家計動向関連が前月差2.1ポイント、企業動向関連が同2.7ポイント、雇用関連が同0.2ポイントであった。内閣府は基調判断を「景気は、持ち直しの動きがみられる」から「景気は、持ち直している」へと上方修正した。
景気の現状判断DI(季節調整値)/現状判断DI(季節調整値)の変動要因

2.気温の急低下により冬物商材が売れ始める

家計動向関連では、住宅関連(前月差▲1.2ポイント)や飲食関連(同▲0.2ポイント)は小幅に低下した一方、サービス関連(同2.1ポイント)や小売関連(同2.5ポイント)は上昇した。サービスや小売に関するコメントをみると、「寒くなったため、化粧品や医薬品の販売が好調である(東北・一般小売店)」や「最近急に寒くなり、ニットやコート等の高単価な商品が稼動し始めている(九州・衣料品専門店)」など、10月後半から急に気温が下がり、冬物商材が売れ始めているといったコメントがみられた。また、10月13日に閉幕した大阪・関西万博に関するコメントでは、「大阪・関西万博の盛り上がりに合わせて、10月は来客数が前年よりも大きく伸びた。閉幕後の落ち込みを懸念していたが、前年比での伸び率は低下したものの、プラスの動きは維持しており、国内客、インバウンド共に売上は堅調である(近畿・百貨店)」など、閉幕後の落ち込みはみられていないようだ。

企業動向関連では、製造業(前月差2.5ポイント)、非製造業(同3.1ポイント)ともに上昇した。「10月に入り、輸送依頼及び問合せの件数が増加している(北海道・輸送業)」や「年末から年明けにかけて受注につながりそうな商談が増えている(東北・電気機械器具製造業)」、「年末に向けた動きが出てきたのか、問合せや受注が増えている(近畿・建設業)」など、年末に向けて問い合わせ件数が増えているといったポジティブなコメントがみられた。
下図は、景気ウォッチャー調査の「景気判断理由集(現状)」のコメントをもとに計量テキスト分析1を行い、共起ネットワーク2を作成したものである。景況感が改善したと判断した回答者のコメントには、インバウンド、宿泊、閉幕、消費といった単語が多く含まれていることが読み取れる。
景気判断理由集(現状)
 
1 分析にはKH Coder 3(樋口2020)を使用した
2 共起ネットワークとは、よく一緒に使われる語同士を、線で結んだネットワークのことである

3.景気の先行き判断DI(季節調整値)は、前月差4.6ポイント上昇の53.1

2~3か月先の景気の先行きに対する判断DIは、前月差4.6ポイント上昇の53.1となった。先行き判断DIの内訳をみると、家計動向関連(同5.1ポイント)、企業動向関連(同2.7ポイント)、雇用関連(前月差4.6ポイント)のすべてのDIが上昇した。

家計動向関連では、「物価高に消費者が慣れてきている。物価が高いなりにお金が回り出している。高い物でもきちんと売っていればそれなりに売れる。恐らく景気は悪くないということではないかと考える(甲信越・スナック)」や「物価高といわれているが買い控えは発生していない。高価な食材も順調に売れてきているため、景気は上向くとみている(東海・スーパー)」などの声が聞かれた。消費者は物価高に慣れ、買い控えるといった行動をとっていない様子がうかがえる。

雇用動向関連では、「例年秋から年度末に向けて派遣求人数が増加する傾向にある。今年も各企業とも業務繁忙に伴い派遣採用が見込まれるため、求人数、派遣就業者数が増加する(南関東・人材派遣会社)」など、企業の採用活動に関してポジティブなコメントがみられた。
景気の先行き判断DI(季節調整値)/先行き判断DI(季節調整値)の変動要因
景気ウォッチャー調査の「景気判断理由集(先行き)」のコメントをもとに計量テキスト分析を行い、共起ネットワークを作成すると、景況感が改善すると判断した回答者のコメントには、期待、政権、首相、株価、年末年始といった単語が多く含まれていることが読み取れる。「新首相による政策への期待、過去にない株高が消費力へプラスに働き、一段と良くなるとみている。期待感も含んでいるが、現状に鑑みて、良い方向へ伸びる要素は大いにある(甲信越・都市型ホテル)」や「我が国の首相が新しく決まり、物価高は継続しつつも、ガソリンの暫定税率廃止の方向など日本が少しずつ変わるというマインドがある(北陸・一般レストラン)」など、高市政権への期待のコメントがみられた。
「景気判断理由集(先行き
2025年10月調査の結果は、景況感は現状、先行きともに改善していることを示すものであった。特に先行き判断DIは、前月差4.6ポイントの大幅上昇となった。高市政権への期待が先行きの景況感を押し上げているとみられ、今後の動向にも注目が集まる。

本資料記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と完全性を保証するものではありません。
また、本資料は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。

(2025年11月12日「経済・金融フラッシュ」)

Xでシェアする Facebookでシェアする

経済研究部   研究員

佐藤 雅之 (さとう まさゆき)

研究・専門分野
日本経済

経歴
  • 【職歴】
     2020年4月 株式会社横浜銀行
     2024年9月 ニッセイ基礎研究所

    【加入団体等】
    ・日本証券アナリスト協会検定会員

週間アクセスランキング

ピックアップ

お知らせ

お知らせ一覧

【景気ウォッチャー調査2025年10月~高市政権への期待から、先行き判断DIは前月から4.6ポイントの大幅上昇~】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

景気ウォッチャー調査2025年10月~高市政権への期待から、先行き判断DIは前月から4.6ポイントの大幅上昇~のレポート Topへ