1|医療関係の制度改正
次に、2024年度に控えた医療・介護同時改定を論じる。2024年度は2年に一度の診療報酬改定と、3年サイクルの介護報酬改定が重なる予定であり、都道府県が6年周期で策定している「医療計画」、市町村が3年サイクルで改定する「介護保険事業計画」の改定も控えている。
このうち、医療では病床削減や在宅医療の充実などを目指す「地域医療構想」を中心とする提供体制改革が論点になると見られる
14。地域医療構想では、人口的にボリュームが大きい「団塊世代」が75歳以上になる2025年をターゲットにしつつ、急性期病床の削減や在宅医療の充実などが目指されており、各地域での議論は2017年度から本格的にスタートしたが、新型コロナウイルスへの影響で2020年以降、ストップした。
その後、厚生労働省は2022年3月、都道府県に対して地域医療構想の議論を再起動するように要請したが、目標年次の2025年まで残り2年となっており、社会保障審議会(厚生労働相の諮問機関)医療部会が2022年12月に示した意見書では、「2040年頃までを視野に入れてバージョンアップを行う必要がある」という考えが示されている。このため、2025年の後を見据えた「ポスト地域医療構想」が模索されることになりそうだ。
一方、病床再編について、地域に目を向けると、▽岩見沢市立病院と北海道中央労災病院の統合(北海道)、▽青森県立中央病院と青森市民病院の統合(青森県)、▽広島県立広島病院、中電病院などの統合(広島県)――といった形で、新型コロナウイルス禍でも一部の地域で動きが本格化している。これまでの診療報酬改定に関する流れ
15を踏まえても、2024年度改定でも地域医療構想に関する急性期病床の削減や医療機関の連携強化、在宅医療の充実などは引き続き論点になる可能性が高い。
さらに、身近な病気やケガに対応する「かかりつけ医」の機能強化に向けた制度設計も焦点となりそうだ。この関係では、かかりつけ医の役割や機能が曖昧なため、財務省などが定義の法定化とか、患者が事前にかかる医療機関を指名する「登録制」の導入などを提唱。これに対し、日本医師会が反対し、大きな論点となった
16。
結局、先に触れた医療部会意見書では、(1)かかりつけ医機能の定義の法定化、(2)医療機関が果たしている役割を公表する「医療機能情報提供制度」の見直し、(3)在宅医療など医療機関が担っている機能などを都道府県に報告させる「かかりつけ医機能報告制度」の創設、(4)継続的な医学管理を要する患者が希望する場合、かかりつけの関係を示す書面を発行する仕組みの創設――などの内容が盛り込まれた。
しかし、(2)~(4)については詳細が決まっておらず、2024年度診療報酬改定での対応を含め、今後の論点となりそうだ。
今後、大きな論点になるのは医師の働き方改革かもしれない
17。この制度改正では、医師の超過勤務を原則として年960時間、地域医療の確保や医師の研修で止むを得ないケースに関しては年1,860時間に抑える方針が決まっている。これを受けて、医療機関は超過勤務の解消や時短計画の作成、健康確保措置の実施などが義務付けられる。さらに、事務執行を現場で担うのは都道府県であり、特例を受ける医療機関の指定とか、健康確保措置の評価などの役割を担っている。
しかし、大学病院が地域に派遣している若手医師を引き揚げる事態が懸念されており、「地域医療の確保」「医師の健康確保」という二律背反のバランスが問われている。既に施行まで2年を切っており、国・自治体、医療機関の準備が問われる。
新興感染症対策についても、新たな仕組みがスタートする
18。具体的には、感染症の拡大に備えるため、患者の受け入れなどに関して、都道府県と医療機関が事前に協定を結ぶ仕組み(医療措置協定)であり、医療計画に新興感染症を位置付ける制度改正も施行される。このため、都道府県には平時医療と有事対応の両面を意識した見直し論議を進めることが期待される。