2021年11月18日

IAIGsの指定の公表に関する最近の状況(4)-情報が更新され、49グループのうちの47グループが明らかに-

中村 亮一

文字サイズ

1―はじめに

各国・地域の保険監督当局等によるIAIGs(国際的に活動する保険グループ)の指定を巡る状況については、2021年に入ってから、これまで2つの保険年金フォーカス「IAIGsの指定の公表に関する最近の状況-48グループのうちの45グループが明らかに-」(2021.4.1)、「IAIGsの指定の公表に関する最近の状況(2)-48グループのうちの47グループが明らかに-」(2021.4.7)及び「IAIGsの指定の公表に関する最近の状況(3)-49グループのうちの46グループが明らかに-」(2021.7.8)(以下、「前回のレポート」という)で報告した。

その後、IAIS(保険監督者国際機構)が11月12日に、IAIGsの指定に関する新たな登録簿を公表1したので、その内容を報告する。

2―IAIGsとは

2―IAIGsとは

まずは、繰り返しになるが、IAIGsについて説明しておく。

IAIGsというのは、英語で「Internationally Active Insurance Groups」と呼ばれており、その言葉通りに、「国際的に有意なレベルで保険事業活動を展開している保険グループ」のことを指している。その具体的な選定基準については、IAIS(保険監督者国際機構)が定量的基準等を定めている。また、IAIGsに対しては、特別な監督・規制が行われることになっている。
1|IAIGs の選定基準
IAIGs の選定基準のうちの定量的基準は以下の通りとなっている。
 

(1) 国際的活動
・3つ以上の管轄区域において、保険料が計上されていること、及び
・本店所在管轄区域外のGWP(収入保険料)のグループ全体のGWPに対する割合が10%以上

(2) 規模(3 年移動平均)
・総資産が500 億米ドル以上、又は 
・全体のGWPが100 億米ドル以上

ただし、これらの定量的基準に関わらず、グループ全体ベースでIAIGs の監督に対して責任を有しているGWSが、限定された状況において、グループがIAIGs とみなされるかどうかを判断するための裁量権を有している。例えば、(a)自国の保険事業活動が重大である場合、(b)合併及び買収あるいは売却等により、近い将来に基準を満たすあるいは満たさなくなる場合、等が想定されている。
2|今回のIAIGs の指定に関する情報の公表
GWSが、IAIGs の指定を公表するが、場合によっては、この開示が法的変更又は規制措置を必要とすることがある。

IAISは、このコミットメントを達成するためのGWSの進捗状況を監視する。IAISは、GWSによって公開されたIAIGs の公開登録を編集する。登録簿には、公開されたIAIGs の数とIAIGs の基準の充足又は監督裁量の行使に基づいてGWSにより特定されたIAIGs の総数を比較した情報が添付されることになっている。
3|IAIGsに対する監督・規制
IAIGsの監督のための共通の枠組みとして、IAISは、2019年11月に、ComFrame(Common Framework for the Supervision of Internationally Active Insurance Groups:国際的に活動する保険グループの監督のための共通の枠組み)を採択している。

このComFrameの中で、IAIGs に対する監督・規制内容としては、(1)監督当局の枠組み(監督カレッジの組成や危機管理グループ(CMG)の設立)、(2)資本規制、(3)再建・破綻処理計画、(4)グループガバナンス、(5)ERM(統合的リスク管理)、等が挙げられている。それぞれの項目の具体的な内容については、今回のレポートの趣旨ではないので触れないが、例えば、「(2)資本規制」について、IAISはComFrameの一環としてICS(保険資本基準)を策定中である。

3―IAISによるIAIGsの指定に関する登録簿の最新情報

3―IAISによるIAIGsの指定に関する登録簿の最新情報

IAISは、IAIGsの指定に関して、以下の情報を公表している。

1|直近のIAISによる情報開示
前回のレポートで報告したように、IAISの2021年7月2日の公表2によれば、18の管轄区域からの49 のIAIGsのうち、16の管轄区域からの 46のIAIGsが関連GWS(group-wide supervisors:グループ監督者)により公開されていた。

直近では、2021年11月12日において、情報の更新1を行っている。今回のレポートはこの内容を報告する。
2|今回の情報更新に基づくIAIGsに指定された保険グループの状況
今回の情報更新により、全体で18の管轄区域からの 49のIAIGsのうち、16の管轄区域からの47のIAIGs が公開されていることとなった。

前回のレポートからは、管轄区域やIAIGsの数は変わっていないが、新たに1つのIAIG指定会社の名前が明らかにされた。

具体的には、米国イリノイ州の損害保険会社であるCAN Financialの名前が新たに公開されている。

ただし、引き続き2つの管轄区域とそれぞれから1つずつのIAIGsの名前は公開されていない。

結局、今回公開された47のIAIGsの管轄区域別の内訳は、以下の通りとなっている(前回のレポートからの変更点は下線付き部分)。
今回公開された47のIAIGsの管轄区域別の内訳
3|CNA Financialについて
CNA Financialは、シカゴに本社を置いて、米国、カナダ及びフランス、ドイツ、ベルギーを含む欧州のいくつかの国で事業を展開している、米国の大手損害保険グループである。英国では、グループの一員であるCNA Hardyが、Lloyd’s内で専門的な商業保険を提供している。グループの2020年の正味収入保険料は7,649百万ドル、総資産は64,026百万ドルとなっている。

4―まとめ

4―まとめ

以上、今回のレポートでは、IAISによるIAIGsの指定に関する登録簿の最新情報について報告してきた。

これまでのレポートで述べてきたように、IAIGsの指定状況は、それぞれの国や地域における保険市場や保険グループの海外展開の状況等を反映して、国・地域毎にその指定グループ数がかなり異なっている。

また、IAIGsの指定については、適宜見直しが行われていくことになっている。

買収や合併、さらには売却等の地域別の事業展開の見直し等のグループ会社の戦略により、IAIGsのリストへの新たな追加や削除等が行われていくことにもなる。

各管轄区域においては、今後も適宜、IAIGsの指定の見直し等が行われ、必要に応じて公表されていくことが想定されることになる。

IAIGsの指定に関する状況は、IAIGsに対する監督・規制を巡る状況と共に、関係者の関心の高い事項であることから、今後ともその動向を引き続き注視していくこととしたい。
Xでシェアする Facebookでシェアする

中村 亮一

研究・専門分野

(2021年11月18日「保険・年金フォーカス」)

公式SNSアカウント

新着レポートを随時お届け!
日々の情報収集にぜひご活用ください。

週間アクセスランキング

レポート紹介

【IAIGsの指定の公表に関する最近の状況(4)-情報が更新され、49グループのうちの47グループが明らかに-】【シンクタンク】ニッセイ基礎研究所は、保険・年金・社会保障、経済・金融・不動産、暮らし・高齢社会、経営・ビジネスなどの各専門領域の研究員を抱え、様々な情報提供を行っています。

IAIGsの指定の公表に関する最近の状況(4)-情報が更新され、49グループのうちの47グループが明らかに-のレポート Topへ