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「ニッポンの結婚適齢期」男女の年齢・徹底解剖(1)―2018年婚姻届全件分析(初婚男性編)―
生活研究部 人口動態シニアリサーチャー 天野 馨南子
はじめに
なぜこのような思い込みが先行した議論が多いかというと、2点、思うところがある。1つは、人の問題ゆえに、誰でも自らの経験値をもとに何らかの議論に参戦できるから、という理由である。これが金融工学であったり、貿易分野であったりすれば、その分野に関わることがほぼない、もしくは経験値として話すには材料が少ない、という人は少なくない。しかし、人口問題となると、切り口は違っても、自らの経験値に基づいた意見は可能、となってくる。2つ目は、日本では人口学として学府で専門的な教育が独立して存在しない、ということがある。統計的にはエビデンスがないものが、思い込みで主張された場合、専門的な見地からそうではない、と指摘できる人材が少ないのである。この2つが人口問題について思い込みが蔓延しやすい主たる原因であるように思う。
そこで今回は、平成・令和と読者が耳にすることが多くなった「未婚化」「婚活」などのパワーワードに関連して誤解が非常に多い「男女の結婚年齢」、すなわち結婚適齢期についてのリアルデータを分析した結果をレポートしたい。
データソースには、厚生労働省「人口動態調査」に掲載されている、2018年における婚姻届の集計結果を用いているため、ニッポンの結婚、についての全数分析結果である。
1――再婚者を含む結婚が4組に1組
次に多いのが、夫だけが再婚者である結婚で、4万3051件の9.4%(約10組に1組)、続いて、男女ともに再婚者である結婚が4万2004件で9.2%(約10組に1組)、そして、最も少ない組み合わせは、妻だけが再婚者である結婚3万1321件の6.9%(約15件に1件)であった(図表1)。
以上から、初婚同士のカップルと再婚者を含むカップルは、3:1の比率であることがみてとれる。4組に1組は再婚者が含まれている1ため、「再婚もそう珍しくなくなった」という感覚を持つ読者が多くても、おかしくはないといった状況といえる。
1 この割合は固定化傾向にある。
2 結婚支援の現場からも、初婚男性の方が初婚女性よりも相手の婚歴についてこだわりがある傾向が指摘されている。
2――非常に明確な「初婚男性の婚期」
民間や自治体の結婚相談所(センター)等では、女性登録者よりも男性登録者の年齢がかなり高くなるという状況であり、40歳以上の男性の登録が多くなる傾向があることからも、少なくとも男性の30代はまだまだ結婚は難しくない、といった感覚があるように見受けられる。
そこで、まずは2018年に初婚を果たした男性について、結婚年齢のデータを確認してみたい。初婚男性のパートナーには初婚女性と再婚女性がいるが、圧倒的に多い(9割超)初婚女性との結婚、約34万件について、男性の年齢別件数をグラフ化した(図表3)。
結婚を希望する男性やその親族の感覚では、ある程度の年齢幅をもって緩やかに男性の結婚が発生していそう、とったイメージを持っていると思われる発言が多い。しかしながら、グラフからは20代後半を頂上として、左右に非常に綺麗な形の「急角度の山」ができていることがみてとれる。つまり男性であっても、その結婚は20代後半に集中的に発生する(あとは少ない)、という状況がエビデンスとして示されている。
統計的には、27歳が初婚男性の結婚のピークであり、27歳から年上・年下、どちらに年齢が離れても結婚件数は大きく減少する。このような結婚の状況は、女性の結婚に関してはそうであると思い描いている人は非常に多い。しかし、実際には男性も大差がない、という話になると「ちょっと待った、それは本当ですか」という驚きの反応となることが講演会ではほとんどである。
また表からは、男性の婚姻が32歳で7割、35歳で8割にまで達することがわかる。このことから35歳までに婚姻に至らなかった場合は、初婚同士の年の差は男女どちらが上でも3歳差までが7割という状況から(2018年初婚同士婚姻数34.0万件のうち、男女どちらが上か関係なく3歳差以内の年齢差の婚姻が23.3万件で69%に達する)、結婚可能な相手の年齢における既婚率が高くなっているために、かなり苦戦しそうであることが指摘できる。
39歳では婚姻が9割を超えるので、この年齢での男女ともに初婚での結婚は難しい、という表現が大げさではない、という状況である。
3 17歳から集計がスタートしているのは、婚姻統計における「婚姻件数」の計上が「夫妻の年齢は、結婚式をあげたとき、または、同居を始めた時の年齢である」ため。例えば、授かり婚のケースにおいて、先に挙式を行い、18歳以降に入籍する、といったケースが該当する。
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