2020年10月30日

ECB政策理事会-第2波でリスクは下方、12月の「再調整」を強調

経済研究部 主任研究員 高山 武士

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(質疑応答(趣旨))
  • 12月までにどの程度、どの手段を拡大しようとしているか。APPかPEPPか両方か。
    • ひとつの手段を見ている訳ではない
    • すべての手段を見て、相互作用はどうか、最適な結果は何か、状況に対処するための最もよい組み合わせは何かを検討する
       
  • FRBは新しいインフレ目標を速やかに導入した。インフレ目標の上方乖離(overshooting)についてどう考えるか
    • 戦略見直しは9月に再開したが、インフレ目標やその定義は、後半の議論となる
    • 今後、明確な説明をしたいと思うが、今は時期尚早である
       
  • 10-12月期GDP伸び率の予測は前期比3.1%1のままか、今となっては楽観的だと考えるか。二番底、マイナス成長の可能性はあるか。
    • 10-12月期の成長は鈍化する可能性が高いが、マイナスになるかは分からない
    • 11月の数字は良いものになると思っていないが、12月が11月の悪さを相殺するのかしないのかについては予想が難しい
       
  • 声明文でワクチン開発に言及したことについて。ワクチンはどの程度、状況を緩和するのか。
    • 声明文に挿入した理由は、ワクチン開発の見通しがかなり暗いため
    • ワクチン(の効果)ではなく、ワクチン普及(rolling out)(の時期)を指している
       
  • いくつかの加盟国の消費者信頼感の低下に言及したが、理事会はこれがデフレ圧力につながることをどの程度懸念しているか
    • デフレは自己実現的な現象であり、現在の商品価格やVATといった一時的な影響とは関係がない
    • デフレリスクは全く予想していない
       
  • EUが承認した緊急パッケージが進展していないことについて。手遅れになる懸念があるか。
    • 「次世代EU」の合意は、明らかに欧州を見ている人たちが抱く、感情やイメージ、印象に大きな影響を与えた
    • 次の問題が、実行にあるのは明らか
    • 声明にあるように、欧州当局間で合意に達することを強く提案する
       
  • 銀行にとって魅力的な資金源と述べたTLTROについて。銀行が直面する不良債権問題のような課題に対応するために、この手段の改善について議論したか。
    • (TLTROはすでに)非常に魅力的で、十分に調整されており、とても成功している。金利をかなり低い水準に抑え、相当多く信用を拡大している。
       
  • 理事会は、第2波とその封じ込め政策が欧州の銀行に及ぼす影響について議論したか
    • 第2波の影響は、銀行自身の状況による。市場規模、市場アプローチ、事業モデルなど
    • ECBの焦点は2つある。経済に信用が供給されること、ショックに対応するために流動性が供給されること
    • 我々はそれができるように、柔軟性の利用や再調整を行う
       
  • 今日、だれかが政策変更を求めたか。政策手段の変更について議論したか
    • 具体的な政策手段の変更については、議論していない
       
  • 今後数週間で、理事会の回数を増やす計画はあるか。3月のように臨時理事会を開催する必要があると思うか
    • 定期的に対面で議論を行い、可能な限り全会一致での解決策を導くことは維持していく
    • (一方で)リモートは非常に簡単に会うことができ、必要があれば利用していく
    • 緊急に会う必要があれば、そうするし、その準備はできている
       
  • 理事会は、12月に何らかの追加策を講じるということで合意した、と考えてよいのか
    • プレスリリースの1段落目が重要で、そこにすべてが書かれている
    • 「最新の評価に基づいて理事会は、適切に金融政策手段を再調整する」としている
    • また、手段(instruments)はPEPPだけのことではなく、すべての手段を指している
       
  • あなたが、PEPPの購入を加速させようとしている、という考えは正しいか
    • PEPPが持ち、維持し、必要があれば利用する、重要な特徴は柔軟性だ
    • もし、柔軟性を利用する必要があれば、そうする
       
  • 12月に調整や追加緩和をしないという状況があれば、説明してほしい
    • 理事会は、行動が必要であるという事実、再調整することが正しい方法であるという事実について、完全に合意している
       
  • 第二の景気後退やインフレ見通しの悪化を受けて、ユーロ圏が低インフレ基調、もしくはデフレになっているという懸念はないのか
    • 21年の後半には、回復が始まり、需要が刺激されると見ている、特に、財政・金融政策が回復を継続する場合にはそうなると見ている。
       
  • レーン理事が実体経済と直接取引することにオープンだと述べたが、銀行を仲介しない取引と解釈している。これについての見解と理事会で議論したかを知りたい。
    • レーン理事が銀行を「近道する」という意味で述べたとは思わない
    • 明らかに銀行は金融政策をユーロ圏経済のすべての業種に伝達するための重要な経路と言える
       
  • 財政政策はすでに十分か、あるいは刺激を行う余地のある政府はそうするべきか
    • ここ数年では初めてとなる財政と金融の共同作業を見られたことを非常に心強く思う
    • 現在の悪化する状況を考えると、国家単位でさらなる財政支援が行われても驚かない
       
  • ユーロ圏が回復する際、ばらつきが見られるかもしれない。ECBは断片化にどう対応するか
    • 財政面では、「次世代EU」とRRFがあなたの言及するリスクに対応するように設計されている
    • 金融面では、断片化に対応する手段があり、3月以降、効果的に金融政策を伝達するのに使われたが、現在の断片化リスクは取り除かれている
       
  • ECBのトップに就任してからの1年間をどう振り返るか
    • まず、とてつもなくはやく過ぎ去った。また、想像する以上に多くの経験をしてきた
    • これまでも楽しんできたし、多くの仕事に全力を尽くせることを光栄に思う
       
  • 再調整には他の中央銀行が実施してきたような、高利回り債の購入、株ETFの購入のようなものも視野に入っているのか
    • すべてを検討し、再調整する。声明文に書いてある通り
       
  • ECBは感染拡大の第2フェーズを乗り越えるために、すべての火力を使い、ほとんど燃料が残らないことを懸念しているか
    • 第1波では、新しい手段を導入することを明確に示した
    • ECBは第2波のなかで、我々が合意した再調整で、(第1波)と同様の柔軟性を示すつもりである
       
  • 為替レートなどは、直接の目標でなく制御もできないなかで、再調整はどう行うのか
    • 我々は謙虚であると考えており、影響を与えられないものだが、経済支援と物価の安定の結果として導くことができるものであると認識している
       
  • 行動が実施される12月では、全会一致かそれに近い形で決定できると思うか。かつてのような(意見の)分裂をせずに決定できる感触はあるか。
    • 広く意見を表明し、歓迎され、議論し、最後に理事会によって広く承認される。これがこれまで実施されてきたことで、毎回全会一致にしなければいけないという訳ではない
       
  • 米国大統領選挙の潜在的なリスクについて議論したか
    • 英国離脱(Brexit)の交渉とともに、地政学的なリスクのひとつであり、このリスクについては理事会でも考慮している
       
  • (コロナウイルスの被害にあった人たちへのお見舞いの言葉)
 
1 9月のスタッフ見通し
(参考)ECBの金融政策ツール
 
 

(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
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経済研究部   主任研究員

高山 武士 (たかやま たけし)

研究・専門分野
欧州経済、世界経済

経歴
  • 【職歴】
     2002年 東京工業大学入学(理学部)
     2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
     2009年 日本経済研究センターへ派遣
     2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
     2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
     2014年 同、米国経済担当
     2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
     2020年 ニッセイ基礎研究所
     2023年より現職

    【加入団体等】
     ・日本証券アナリスト協会 検定会員

(2020年10月30日「経済・金融フラッシュ」)

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