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インドの保険監督当局IRDAIがD‐SIIsとして3社を特定
中村 亮一
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1―はじめに
今回のレポートでは、この内容について報告する。
2―D-SIIsとは
グローバルベースでは、FSB(金融安定理事会)がG-SIIs(Global Systemically Important Insurers:グローバルなシステム上重要な保険会社)の概念があるが、その国内版に相当することになる。必ずしも全ての国がD-SIIsを指定しているわけではない。
一方で、米国はSIFI(Systemically Important Financial Institutions)として、国内の金融機関を指定しており、これまで保険会社も指定されてきたが、現在はノンバンクSIFIは存在していない。
また、日本においては、銀行について、D-SIBs(Domestic Systemically Important Banks:国内のシステム上重要な銀行)が指定されてきている。
3―今回のIRDAIの対応
IRDAIは、D-SIIsについて、以下の考え方を示している。
D-SIIsは「大きすぎる、あるいは重要すぎてつぶせない(too big or too important to fail:TBTF)」 保険会社として認識されている。このような認識と政府の支援に対する期待は、リスクテイクを増幅させ、市場規律を低下させ、競争上の歪みを生み出し、将来的な苦境の可能性を増大させる。これらの考察から、D-SIIsは、システミック・リスクとモラルハザードの問題に対処するために、追加的な規制措置を受ける必要がある。
IRDAIは、2019年1月に、D-SIIs に関する委員会の結成を発表する一方で、保険セクターは過去15年間で指数関数的に成長しており、保険会社のいくつかは大きな市場シェアを持ち、他の金融機関と相互に関連していると述べていた。
IRDAIは、D-SIIsに相当する保険会社を特定し、そのような保険会社に対して強化されたモニタリングメカニズムを提供するために、D-SIIsを特定し、監督するための方法論を開発した。D-SIIsの特定のための方法論によるパラメータは、特に以下を含んでいる。
a. 引受保険料や運用資産の価値を含む総収入でみた事業規模
b. 複数の管轄区域にわたるグローバルな活動
c. 商品やオペレーションの代替性の欠如
d. カウンターパーティ・エクスポージャーとマクロ経済的エクスポージャーの相互関連性
これらのパラメータには、事業の様々な側面をカバーするウェイトが割り当てられている。
IRDAIは、年次ベースでD-SIIsを特定し、これらの保険会社の名称を公開情報として開示する、としている。
IRDAIは、上記の方法論に基づいて分析を行った結果、以下の3つの保険会社をD-SIIsと特定している。
a. Life Insurance Corporation of India(LIC:インド生命保険公社)
b. General Insurance Corporation of India(GIC:インド損害保険公社)
c. The New India Assurance Co. Ltd.
これらの保険会社は、その業務の性質とD-SIIsのシステム上の重要性を考慮して、以下のことを実施するよう求められている。
(i) コーポレート・ガバナンスのレベルアップ
(ii) 関連する全てのリスクを特定し、健全なリスク管理文化を推進する。
さらに、D-SIIsは強化された規制監督の対象となる。
4―D-SIIsに特定された保険会社
1|LIC
LICは国内最大の生命保険会社であり、国内市場シェアは、保険料で66.4%、総資産で79.2%を有している。なお、保険料は約4.8兆円、総資産は約36兆円である。
2|GIC
GIC(あるいはGIC Re)は、政府所有の再保険会社である。インド国内の再保険市場において、保険料の市場シェアは81.8%を有している。また、インド国外契約からの保険料が約3割を占めている。なお、保険料は約6,300億円、総資産は約7,500億円である。
3|New India Assurance
New India Assuranceは、かつてGICの一部であったが、現在は国内最大の損害保険会社である。インド国内の損害・健康保険市場のシェアは、保険料で15.4%、総資産で12.5%を有している。また、インド国外契約からの保険料が約1割を占めている。なお、保険料は約3,800億円、総資産は約5,600億円である。
5―まとめ
D-SIIsの特定に関する状況は、それらのD-SIIsに対する監督・規制を巡る状況と共に、インドの保険市場に興味を有する関係者にとって関心の高い事項であることから、今後ともその動向を引き続き注視していくこととしたい。
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(2020年10月01日「保険・年金フォーカス」)
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