2020年09月25日

健康経営優良法人2021認定(中小規模法人部門)に向けた申請書の質問内容等-新型コロナウイルス感染症を踏まえた救済措置やブライト500の認定のための質問も設けられている

小林 直人

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1――はじめに

健康経営優良法人2020認定法人について、以前「健康経営優良法人 2021 認定に向けた申請スケジュール、認定要件1」において紹介したが、その時点では健康経営優良法人2021の申請から認定までの流れなどは公開されていなかった。

その後、経済産業省のホームページにおいて、健康経営優良法人2021認定に向けた申請のスケジュールが詳細化されたほか、申請から認定までの流れ、大規模法人部門の健康経営度調査(サンプル)や中小規模法人部門の認定申請書兼誓約書(サンプル)など、申請に関する情報が更新・公開された。健康経営優良法人2021の認定に向け、大規模法人部門では健康経営度調査の実施が、中小規模法人部門では申請の受付が2020(令和2)年8月24日より開始されている。

大規模法人部門の健康経営度調査の内容等については、前稿「健康経営優良法人2021認定(大規模法人部門)に向けた健康経営度調査の質問内容等2」で紹介した。本稿では中小規模法人部門の認定申請書兼誓約書の質問内容などについて、経済産業省のホームページ3をもとに紹介する。
 
1 拙稿「健康経営優良法人 2021 認定に向けた申請スケジュール、認定要件」(2020年8月18日)(https://www.nli-research.co.jp/files/topics/65195_ext_18_0.pdf?site=nli)。
2 拙稿「健康経営優良法人2021 認定(大規模法人部門)に向けた健康経営度調査の質問内容等」(2020年9月15日)(https://www.nli-research.co.jp/files/topics/65457_ext_18_0.pdf?site=nli)。
3 経済産業省「健康経営優良法人の申請について」(https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/kenkoukeiei_yuryouhouzin_shinsei.html, 2020 年8 月31日最終閲覧)。
 

2――健康経営優良法人2021認定に向けた申請スケジュール

2――健康経営優良法人2021認定に向けた申請スケジュール

中小規模法人部門については、申請が2020(令和2)年8月下旬から11月下旬頃と昨年度から1ヵ月程度延長されていたが4、具体日程として2020(令和2)年8月24日(月)から11月27日(金)とされ、認定が2021(令和3)年3月頃(認定は変更なし。)とされている(図表1下段参照(上段の大規模法人部門も参考として記載しておく。なお、全国土木建築国民健康保険組合に加入の法人の場合は後述。))。
〔図表1:健康経営優良法人2021認定スケジュール〕
 
4 経済産業省「第24回健康投資WG事務局説明資料②(今年度の健康経営顕彰制度について)」2頁(2020年7月16日)では、新型コロナウイルス感染症の流行に伴う、健康経営顕彰制度への影響と対応方針案として、スケジュールについて「健康経営優良法人(中小規模法人部門)については申請期間延長の措置をとりたい。」とされている (https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/jisedai_health/kenko_toshi/pdf/024_10_00.pdf, 2020年8月31日最終閲覧)。
 

3――健康経営優良法人2021の申請から認定までの流れ

3――健康経営優良法人2021の申請から認定までの流れ

健康経営優良法人2021の中小規模法人部門の申請から認定に向けた流れを見てみよう(図表25参照)。

まず、協会けんぽ等保険者が取り組む「健康宣言」事業に参加する。

その後、健康経営優良法人(中小規模法人部門)認定申請書兼誓約書(以下、「認定申請書兼誓約書」。)を作成し、提出する。認定申請書兼誓約書の提出先等については、加入する保険者により異なる6。全国健康保険協会(協会けんぽ)・健康保険組合・その他国民健康保険組合、共済組合等の加入法人の場合は、健康経営優良法人認定事務局あて電子データのアップロードおよび申請書兼誓約書を郵送(締切日消印有効)する(送付期限とアップロード期限は11月27日(金)である。)。ただし、全国土木建築国民健康保険組合に加入の法人の場合は、全国土木建築国民健康保険組合あて電子データの送付および申請書兼誓約書を郵送(締切日消印有効)する(送付期限は、全国土木建築国民健康保険組合の案内を確認とされている(2020年9月2日現在)。)。

そして、健康経営優良法人認定委員会による審査がなされ、日本健康会議による認定が行われる。
〔図表2:健康経営優良法人2021(中小規模法人部門(ブライト500含む))の申請から認定までの流れ〕
 
5 経済産業省ホームページより筆者作成。
6 「健康経営優良法人2021(中小規模法人部門)認定申請書兼誓約書」(https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/downloadfiles/kenkokeieiyuryohojin2021_chusho_shinseisho_sample.pdf, 2020年9月2日最終閲覧)。
 

4――健康経営優良法人2021(中小規模法人部門) 認定申請書兼誓約書

4――健康経営優良法人2021(中小規模法人部門) 認定申請書兼誓約書

1|健康経営優良法人2021(中小規模法人部門)認定申請書兼誓約書の形式の変更
昨年度の認定申請書兼誓約書は記入する項目を選択して該当項目のみ記載する方式とされていたが、今年度は認定申請書兼誓約書の形式をQA方式に修正し、適合している項目のみで回答ではなく、基本的には全設問への回答を誘導する形式とされている7
 
7 経済産業省「第24回健康投資WG事務局説明資料②(今年度の健康経営顕彰制度について)」27頁-28頁(2020年7月16日) (https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/kenkoukeieido-chousa.html, 2020年9月2日最終閲覧)。
2|健康経営優良法人2021(中小規模法人部門)認定申請書兼誓約書の質問内容
(1) 新型コロナウイルス感染症の流行に関する質問内容
健康経営優良法人2021認定における新型コロナウイルス感染症の流行に伴う配慮・救済措置や取り組み内容の評価等について示されていることは、以前「健康経営優良法人 2021 認定に向けた申請スケジュール、認定要件8」において記した。

新型コロナウイルス感染症に関する点を中心に公表された認定申請書兼誓約書 (サンプル)9の内容を見てみよう。

大規模法人部門の健康経営度調査と同様に、申請にあたり同意する事項として、(1)新型コロナウイルス感染症の影響により、労働安全衛生法に基づく健康診断の実施を延期している場合は、厚生労働省の通知に従って実施すること、(2)新型コロナウイルス感染症の影響により、2019年4月1日以降において一部未実施となった定期健康診断を除く項目(保健指導、年数回実施のコミュニケーション増進のためのイベントや集合研修、継続的な取り組みが求められる食生活改善や運動等の取り組みなど)について、新型コロナウイルスの感染収束等の政府・自治体等通知・通達に基づき、ウイルス感染への安全性が確保された段階で、可及的速やかに実施することを誓約すること、(3)新型コロナウイルス感染症の影響により、2019年4月1日以降において一時中断された項目や中止となった項目については、新型コロナウイルス感染症の影響以前の実施状況および中止となったイベント等の実施予定・計画について、認定事務局からの求めに応じて根拠となる資料等を提出すること、といったことが記されている。

そのうえで、健康経営度調査と同様に、新型コロナウイルス感染症の流行の影響を鑑み、予定していた施策が実施できなかったこと等が考えられるため、一部設問には一定の救済措置を設けられている。例えば、設問によっては、回答の選択肢として、予定通り実施した・継続中といった選択肢に加え、実施を予定していたが、新型コロナウイルス感染症の影響により中止し実施できなかった、実施を予定していたが中止した・一時的に休止している、といった選択肢が設けられている。

また、新型コロナウイルス感染症の影響を受けて実施した取り組み、新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえたBCP(事業継続計画)の状況、新型コロナウイルス感染症の流行前後での在宅勤務の導入・拡大状況などについて質問が設けられていることも、健康経営度調査と同様である。
 
8 拙稿「健康経営優良法人2021認定に向けた申請スケジュール、認定要件」(2020年8月18日)(https://www.nli-research.co.jp/files/topics/65195_ext_18_0.pdf?site=nli)。
9 「健康経営優良法人2021(中小規模法人部門)認定申請書兼誓約書」(https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/downloadfiles/kenkokeieiyuryohojin2021_chusho_shinseisho_sample.pdf, 2020年9月2日最終閲覧)。
(2) 健康経営の評価・改善に関する質問内容
認定申請書兼誓約書 (サンプル)10では、PDCAのCAに該当する健康経営の評価・改善に関する取り組みについて、新たに設問されている。

それは、健康経営優良法人2021(中小規模法人部門)認定要件の「4.評価・改善」(大項目・中項目・小項目)の評価項目「⑮健康経営の評価・改善に関する取り組み」に係る質問(Q35)である。その内容は、健康経営の施策をどのように評価しているか、具体的に、健康経営の実施に対してどのような社内指標を定め、改善の検証を行っているか、具体的にどのような取り組みを行っているか、といった内容である。

なお、認定要件における健康経営の評価・改善に関する取り組みについては、来年度の必須化が検討されている。
 
10 「健康経営優良法人2021(中小規模法人部門)認定申請書兼誓約書」(https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/downloadfiles/kenkokeieiyuryohojin2021_chusho_shinseisho_sample.pdf, 2020年9月2日最終閲覧)。
 

5――健康経営優良法人2021に関する認定要件

5――健康経営優良法人2021(中小規模法人部門(ブライト500))に関する認定要件と健康経営優良法人 2021(中小規模法人部門)認定申請書兼誓約書の質問内容

健康経営優良法人2021(中小規模法人部門)の中から、「健康経営優良法人の中でも優れた企業」かつ「地域において、健康経営の発信を行っている企業」として、優良な上位500 法人に対して、新たに「ブライト500」の冠を付加して表彰される(正式名称は「健康経営優良法人2021(中小規模法人部門(ブライト500))」である。)ことは以前「健康経営優良法人 2021 認定に向けた申請スケジュール、認定要件11」において記した。

ここではその健康経営優良法人(中小規模法人部門(ブライト500))(以下、「ブライト500」。)の認定要件と公表された認定申請書兼誓約書 (サンプル)の質問内容を見てみよう。
 
11 拙稿「健康経営優良法人2021認定に向けた申請スケジュール、認定要件」(2020年8月18日)(https://www.nli-research.co.jp/files/topics/65195_ext_18_0.pdf?site=nli)。
1健康経営優良法人2021(中小規模法人部門(ブライト500))の認定要件
認定申請書兼誓約書(サンプル)12と健康経営優良法人 2021(中小規模法人部門)認定基準解説書13において、ブライト500の認定要件が記されている。

ブライト500の認定では、健康経営優良法人の中でも優れた法人であることを重視し、「3.制度・施策実行」および「4.評価・改善」における①から⑮の評価項目うち12項目以上を満たすこと(図表3参照14)、ならびに、「地域への情報発信の実態(任意回答)」へ回答すること、が必須とされたうえで、図表415のウエイトで配点し上位 500 法人を選定する、とされている。
〔図表3:健康経営優良法人2021 (中小規模法人部門ブライト)の選定の基準要件〕
〔図表4:ブライト500認定におけるウエイト〕
 
12 「健康経営優良法人2021(中小規模法人部門)認定申請書兼誓約書」4頁(https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/downloadfiles/kenkokeieiyuryohojin2021_chusho_shinseisho_sample.pdf, 2020年9月2日最終閲覧)。
13 次世代ヘルスケア産業協議会健康投資ワーキンググループ・日本健康会議中小1万社健康宣言ワーキンググループ「健康経営優良法人2021(中小規模法人部門)認定基準解説書」6頁-9頁(2020年8月25日) (https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/downloadfiles/kenkokeieiyuryohojin2021_chusho_kijyunkaisetsusho.pdf, 2020年9 月2日最終閲覧)。
14 「健康経営優良法人2021(中小規模法人部門)認定申請書兼誓約書」4頁(https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/downloadfiles/kenkokeieiyuryohojin2021_chusho_shinseisho_sample.pdf, 2020年9月2日最終閲覧)、次世代ヘルスケア産業協議会健康投資ワーキンググループ・日本健康会議中小1万社健康宣言ワーキンググループ「健康経営優良法人 2021(中小規模法人部門)認定基準解説書」6頁-9頁(2020年8月25日)(https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/downloadfiles/kenkokeieiyuryohojin2021_chusho_kijyunkaisetsusho.pdf, 2020年8月27日最終閲覧)より筆者作成。
15 次世代ヘルスケア産業協議会健康投資ワーキンググループ・日本健康会議中小1万社健康宣言ワーキンググループ「健康経営優良法人2021(中小規模法人部門)認定基準解説書」8頁(2020年8月25日)(https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/downloadfiles/kenkokeieiyuryohojin2021_chusho_kijyunkaisetsusho.pdf, 2020年8月27日最終閲覧)より筆者作成。
2|健康経営優良法人2021(中小規模法人部門)認定申請書兼誓約書における健康経営優良法人2021(中小規模法人部門(ブライト500))に関わる質問内容
ブライト500の認定に関しては、認定申請書兼誓約書(サンプル) 16において、ブライト500の選定のために使用するとされる、地域への情報発信の実態に関する質問が設けられ、ブライト500への選定を希望する場合は回答が必須とれている。

質問の内容は、健康経営関連の取り組みについて、主体的に行ったことがある情報発信の方法・内容・頻度・時期等(Q37)や、これまでに依頼されて実施した情報発信の状況・内容(Q38)についてである。
 
16 「健康経営優良法人2021(中小規模法人部門)認定申請書兼誓約書」26頁-27頁(https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/downloadfiles/kenkokeieiyuryohojin2021_chusho_shinseisho_sample.pdf, 2020年9月2日最終閲覧)。
 

6――おわりに

6――おわりに

2稿にわたり健康経営優良法人認定おける大規模法人部門の健康経営度調査と中小規模法人部門の認定申請書兼誓約書の質問内容等を紹介した。

健康経営優良法人認定おける大規模法人部門の健康経営度調査については、過去6回の回答企業数は毎回増加し、中小規模法人部門の過去4回の申請数・認定法人数も毎回増加している17

健康経営® に取り組む法人が、今後も引き続き増えていくこととともに、健康経営の取り組みがより浸透・進化していくことを期待したい。

なお、健康経営優良法人 2021 説明会については、新型コロナウイルス感染症拡大防止の観点から、例年開催されていた実地での開催は取り止めとなっている。代替として、制度概要や今回の変更点等の説明動画と説明資料が、現在、経済産業省ホームページにおいて公開されている18
 
17 経済産業省「健康経営の推進について」26頁・29頁(2020年4月)(https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/downloadfiles/180710kenkoukeiei-gaiyou.pdf, 2020年9月8日最終閲覧)。
18 大規模法人部門は経済産業省「健康経営度調査について」(https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/kenkoukeieido-chousa.html, 2020年9月14日最終閲覧)、中小規模法人部門は経済産業省「健康経営優良法人の申請について」(https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/kenkoukeiei_yuryouhouzin_shinsei.html, 2020年9月8日最終閲覧)。
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小林 直人

研究・専門分野

(2020年09月25日「基礎研レター」)

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