2020年09月15日

健康経営優良法人2021認定(大規模法人部門)に向けた健康経営度調査の質問内容等-新型コロナウイルス感染症を踏まえた救済措置や健康投資管理会計ガイドラインに関する質問も設けられている

小林 直人

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1――はじめに

健康経営優良法人2020認定法人について、以前「健康経営優良法人 2021 認定に向けた申請スケジュール、認定要件1」において紹介したが、その時点では健康経営優良法人2021の申請から認定までの流れなどは公開されていなかった。

その後、経済産業省のホームページにおいて、健康経営優良法人2021認定に向けた申請のスケジュールが詳細化されたほか、申請から認定までの流れ、大規模法人部門の健康経営度調査(サンプル)や中小規模法人部門の認定申請書兼誓約書(サンプル)など、申請に関する情報が更新・公開された。健康経営優良法人2021の認定に向けては、大規模法人部門では健康経営度調査の実施が、中小規模法人部門では申請の受付が2020(令和2)年8月24日より開始されている。

本稿では、健康経営優良法人2021 認定(大規模法人部門)に向けたスケジュールや健康経営度調査(サンプル)の内容について、経済産業省のホームページ2をもとに紹介する。なお、中小規模法人部門については、稿を改めて紹介したい。
 
1 拙稿「健康経営優良法人 2021 認定に向けた申請スケジュール、認定要件」(2020 年8 月18日) (https://www.nli-research.co.jp/files/topics/65195_ext_18_0.pdf?site=nli)。
2 経済産業省「健康経営優良法人の申請について」(https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/kenkoukeiei_yuryouhouzin_shinsei.html, 2020 年8 月31日最終閲覧)。
 

2――健康経営優良法人2021認定に向けた申請スケジュール

2――健康経営優良法人2021認定に向けた申請スケジュール

大規模法人部門については、健康経営度調査が2020(令和2)年8月下旬から10月上旬とされていたが、2020(令和2)年8月24日(月)から10月16日(金)とされ、申請が2020(令和2)年11月中旬から12月上旬(変更なし。)、認定が2021(令和3)年3月頃(申請と認定は変更なし。)とされ (図表13上段参照(下段の中小規模法人部門も参考として記載しておく。))、健康経営度調査が開始されている。
〔図表1:健康経営優良法人2021認定スケジュール〕
 
3 経済産業省ホームページをもとに筆者作成。
 

3――健康経営優良法人2021の申請から認定までの流れ

3――健康経営優良法人2021の申請から認定までの流れ

〔図表2:健康経営優良法人2021(大規模法人部門(ホワイト500含む))の申請から認定までの流れ〕 健康経営優良法人2021の大規模法人部門の申請から認定に向けた流れを見てみよう(図表24参照)。

まず、「健康経営度調査」に回答する(健康経営度調査については後述。)。健康経営度調査の回答期間は既述の通り、10月16日(金)までとされている。

その後、健康経営度調査回答法人には「健康経営度調査フィードバックシート」が送付され、健康経営優良法人(大規模法人部門)認定基準に適合している場合は申請書および誓約書等が同封される。

申請書の提出は、主たる保険者との連名により、申請書類を健康経営優良法人認定事務局へ提出する。なお、加入する保険者により申請スキームが異なるとされている。

そして、健康経営優良法人認定委員会による審査がなされ、日本健康会議による認定が行われる。
 
4 経済産業省ホームページより筆者作成。
 

4――健康経営度調査

4――健康経営度調査

1健康経営度調査の概要
健康経営度調査とは、法人の健康経営の取組状況と経年での変化を分析することを目的として実施している調査で、健康経営銘柄5の選定および健康経営優良法人(大規模法人部門)の認定にも使用されている6

また、健康経営度調査は、単純に健康経営銘柄の選定および健康経営優良法人(大規模法人部門)の認定に活用されるだけではない。健康経営度調査は専門家による委員会において策定されているので、「健康経営について興味を持ったが何から始めれば良いのか」といった課題を持つ企業にとっては、まずこの健康経営度調査に回答することで、健康経営®7を実践するにあたって何が重視されるのか、何からどのように取り組めば良いのか、が理解できる、とされている。

当該調査自体は主に大企業を対象としているものではあるが、どういうポイントが重要なのかがわかるようになっているので、中小企業の方にとっても有益である。そのため、中小規模法人部門に該当する場合でも、健康経営度調査に回答することが可能である。実際に、自社の健康経営の取り組みが他社と比べてどのくらいの順位にいるのか、自社の取り組みの強みや弱点がどこなのかを測ることを目的として、当調査に回答する中小企業もあるようである8

また、この調査は、既に6回実施されており、統計データとして分析することで、国内企業の取組度合の推移の把握等様々な分析にも役立てることができる。

公開されている健康経営度調査 <フィードバックシート>のサンプルを見ると、認定基準適合状況のほか、総合評価、順位、評価の内訳(偏差値等)、評価詳細分析、主な課題への対応、評価の変遷といったことが記載され、業界における健康経営の実践レベルが分かるようになっており、健康経営を進めていくうえで参考となる情報が記載されている。
 
5 経済産業省は、東京証券取引所と共同で、従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に取り組む上場企業を「健康経営銘柄」として選定している(経済産業省「「健康経営銘柄2020」に40社を選定しました!」(2020年3月2日) (https://www.meti.go.jp/press/2019/03/20200302002/20200302002.html, 2020 年9 月7日最終閲覧))。また、経済産業省「『健康経営銘柄』」(https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/kenko_meigara.html, 2020年9 月7日最終閲覧)参照。
6 経済産業省「健康経営度調査について」(https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/kenkoukeieido-chousa.html, 2020年8月31日最終閲覧)。
7 「健康経営®」は、NPO法人健康経営研究会の登録商標です。
8 経済産業省「健康経営優良法人2021(中小規模法人部門)申請に係るQ&A」(NO28)(2020年9月7日掲載) (https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/downloadfiles/kenkokeieiyuryohojin2021_chusho_qa.pdf, 2020 年9月7日最終閲覧)。
2健康経営度調査の質問内容
(1)新型コロナウイルス感染症の流行に関する質問内容
健康経営優良法人2021認定における新型コロナウイルス感染症の流行に伴う配慮・救済措置や取り組み内容の評価等について示されていることは、以前「健康経営優良法人 2021 認定に向けた申請スケジュール、認定要件9」において記した。

まず、新型コロナウイルス感染症に関する点を中心に公表された健康経営度調査(サンプル)の内容を見てみよう。

申請にあたっての遵守事項として、(1)新型コロナウイルス感染症の影響で未実施となった取組については、実施を予定・計画していたことが説明できる資料を、申請期間最終日から2年間保存し、当該資料の提出を求められた際には応じること、(2)新型コロナウイルス感染症の影響により、労働安全衛生法に基づく健康診断の実施を延期している場合は、厚生労働省の通知に従って実施すること、(3)2019年4月1日以降において、新型コロナウイルス感染症の影響によりやむを得ず未実施となった項目(例:年数回実施のコミュニケーション増進のためのイベントや集合研修、継続的な取り組みが求められる食生活改善や運動等の取組など。ただし労働安全衛生法に基づく健康診断は除く。)については、新型コロナウイルス感染症の収束等の政府・自治体等通知・通達に基づき、ウイルス感染への安全性が確保された段階で、可及的速やかに実施すること、といったことが記されている。

そのうえで、新型コロナウイルス感染症の流行の影響を鑑み、予定していた施策が実施できなかったこと等が考えられるため、一部設問には一定の救済措置が設けられている。例えば、設問によっては、回答の選択肢として、予定通り実施した・継続中といった選択肢に加え、実施を予定していたが、新型コロナウイルス感染症の流行のため実施を延期した、とか、新型コロナウイルス感染症の流行を踏まえ、実施を予定していたが中止した・一時的に休止している、といった選択肢が設けられている。

また、新型コロナウイルス感染症の流行に伴う取り組み内容の評価に係る設問として、新型コロナウイルス感染症の流行を受けて実施した取り組み、BCP(事業継続計画)の状況、新型コロナウイルス感染症の流行前後での在宅勤務の導入・拡大状況などについての質問が設けられている。
 
9 拙稿「健康経営優良法人 2021 認定に向けた申請スケジュール、認定要件」(2020年8月18日) (https://www.nli-research.co.jp/files/topics/65195_ext_18_0.pdf?site=nli)。
(2)健康投資管理会計ガイドラインに関する質問内容
2020年6月12日に健康投資管理会計ガイドライン(以下、「ガイドライン」)が策定・公表10されたことに伴い、ガイドラインの健康経営顕彰制度への反映が行われている。

ガイドラインは、企業等における健康経営の取組をさらに促進するため、企業が健康経営を効果的に実施し、資本市場をはじめとした様々な市場と対話するための枠組みを示すものであり、健康経営度調査においても、ガイドラインの考え方や要素の反映を行うことで、健康投資や効果の見える化による健康経営の質を高める取組をさらに促進したい、としている11

それでは、ガイドラインに係る設問の変更・新設内容を、具体的に見てみよう。

社外への開示についての設問(Q13社外公開) では、ガイドラインで情報開示する方法(媒体)が示されたことに沿って、回答する開示媒体の選択肢が追加されている。開示媒体の選択肢として、昨年度に記載されていたアニュアルレポート、統合報告書、CSR報告書、コーポレート・ガバナンス報告書、海外投資家向けに多言語対応した各種開示文書、健康経営宣言・健康宣言、上記以外の文書・サイトの7媒体に加えて、有価証券報告書、株主総会資料、ディスクロージャー誌の3媒体が追加されている。

新設された健康経営の戦略に関する設問((新)Q70経営課題と健康課題のつながりの把握)については、把握している経営課題やその経営課題解決につながる健康課題から、期待する効果、健康の保持・増進に関する具体的な取り組みまでのつながり(結びつき)を整理し、健康経営の戦略として管理しているか、という質問が新設されている。そして、質問において、ガイドライン、健康経営戦略を策定する際のツールとしての戦略マップに言及し、戦略マップでは、「課題」、「期待する効果」、「具体的な取り組み」のつながりだけではなく、過去の取り組みの結果として企業内部に蓄積されている「健康資源」や、「社会的価値」、「企業価値」も把握する事が出来ると紹介されている。

アンケートとしての設問である、健康経営の各取り組みにおける費用に関する設問((新)Q74各取り組みの費用の把握状況)については、昨年度は「実施の仕方」として、実施者の分類(企業・保険者)と外部委託事業者の活用有無による4つの分類で金額を把握する形式であったが、今年度は、実施者の分類(企業・保険者)に加え、ガイドラインで紹介されている「外注費」、「減価償却費」、「人件費」、「その他経費」の4分類の内訳12を記入する形式に変更されている。

アンケートとして新設されたガイドラインの認知状況に関する設問((新)Q85健康投資管理会計ガイドラインの認知)では、ガイドラインの事を知っているか、ガイドラインを知ったきっかけはどのようなものか、ガイドラインを読んだ事はあるか・読む予定があるか、ガイドラインを活用しようと思うか・既に活用しているか、といった質問が設けられたりしている。

なお、アンケートとしての設問の回答結果は評価に使用されない、とされている。
 
10 経済産業省「『健康投資管理会計ガイドライン』を策定しました」(2020年6月12日) (https://www.meti.go.jp/press/2020/06/20200612001/20200612001.html, 最終閲覧2020年8月31日)。
11 経済産業省「第24回健康投資WG事務局説明資料②(今年度の健康経営顕彰制度について)」19頁-25頁(2020年7月16日) (https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/jisedai_health/kenko_toshi/pdf/024_10_00.pdf, 2020 年9 月2日最終閲覧)。
12 経済産業省「健康投資管理会計ガイドライン」16頁(2020年6月12日) (https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/healthcare/downloadfiles/kenkoutoushi_kanrikaikei_guideline.pdf, 最終閲覧2020年9月2日)。
 

5――おわりに

5――おわりに

本稿では、健康経営優良法人2021 認定に向けた大規模法人部門の健康経営度調査の質問内容を中心に紹介した。次稿では、中小規模法人部門の申請書の内容等について紹介する予定である。
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小林 直人

研究・専門分野

(2020年09月15日「基礎研レター」)

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