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(続)コロナウイルス禍中の米国生保会社の個人生命保険販売-ソーシャルディスタンスと対面販売-
松岡 博司
2――申し込み経路の状況
「対面での申込み」は、減少したとする会社の割合が5月、6月は6割弱という高い水準で推移したが、経済が回るようになった7月になると31%に低下し、これを増加したとする37%がようやく上回った。
「オンライン/モバイルでの申込み」は、3か月の間、一貫して増加した会社の割合が高いまま推移しており、減少したとする会社の割合は極めて少ない。先述のように、ソーシャルディスタンスの環境下、伝統的な対面販売チャネルが機能不全に陥る中で、顧客と生保会社のほぼ唯一の接点となったオンライン窓口に、COVID-19でニーズ喚起された主に若い消費者が多く訪れた。
しかし伝統的な生保商品である終身保険(契約期間に満了がなく、被保険者が死亡した時に死亡保険金が支払われる保険)と定期保険は、6月と7月には保険料と件数の両方でプラスとなった。
残る3つの商品は、貯蓄部分と保障部分の組み合わせで構成されるユニバーサル保険系の商品である。その内、一定の利率を保証する定期預金的な貯蓄部分と死亡保険の組み合わせであるユニバーサル保険は、低金利状態の中、魅力的な利率を提供できないためマイナスが続いている。その落ち込みを埋め合わすように、株価指数等のインデックスに連動する投信的な貯蓄部分と死亡保険の組み合わせで構成されるインデックス連動型ユニバーサル保険が、6月に件数でプラス24%と高い伸びを見せ、7月には件数、保険料の両方で高いプラス進展となった。
投資要素の強い株式投信的な貯蓄部分と死亡保険の組み合わせ構造を持つ変額ユニバーサル保険も6月と7月、特に保険料の指標で高い伸びを見せている。ただし変額ユニバーサル保険の場合、前年の販売実績が極めて低調であったためにこのグラフでは高い伸びになっている側面がある。
インデックス連動ユニバーサル保険の販売好調が、ここでは特筆されるべきことかと思われる。
さいごに
ただし米国の生保業界が望んでいるのは、例年どおりの成長レベルに戻ることを超えた、生命保険の良さが実感された上での生保人気の高まりと、若者層、中間層への生命保険の浸透であるようだ。
米国の生保業界は、中間層への生命保険の普及を図っては跳ね返される経験を重ねてきた。筆者のうろ覚えでは、2004年に生命保険認知月間を9月としてキャンペーンが開始された背景の1つには、2001年の世界貿易センタービルへの自爆テロが9月11日だったからということがあったと思う。
9・11の後にもいっとき生命保険へのニーズが高まったとの報道が続いたが、やがて忘れられていった。はたしてC0VID-19が真の意味での生命保険認知を呼び覚ますきっかけとなったのか、今後の帰趨を見守りたい。
なお、今回は個人生命保険の動向を見たが、米国生保の最大の収益源である個人年金事業に目を向けると、また様相が違って、いまだ販売の回復とはいかない状況が続いている。次回はパンデミックと米国生保の個人年金の関係について見ることとしたい。
またパンデミックによる消費者の行動変容、景気の落ち込み等の中、米国生保業界でこれから本格的に生まれて来るであろう、リアルとデジタルが融合した対面販売のあり方についても注視していきたい。
松岡 博司
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(2020年09月09日「保険・年金フォーカス」)
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