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新しい生活様式による影響と今後の課題-「新しい生活様式」に関するSNS投稿データの分析
金融研究部 准主任研究員・ESG推進室兼任 原田 哲志
前節の分析で、新しい生活様式について、必要性について言及する投稿がある一方で、不便や不満を指摘する投稿もあり、賛否両論があることを述べた。そこで、極性分析により、投稿のネガティブさ、ポジティブさについて分析した。図表5は極性分析によるポジティブな投稿、中立な投稿、ネガティブな投稿の割合を示している。これを見ると、ポジティブな投稿が40%、中立な投稿が31%、ネガティブな投稿が29%を占めていた。ポジティブな投稿を見ると、「テレワークなど新しい生活様式が快適」、「自粛によって混雑が緩和された」といった投稿があった。一方で、ネガティブな投稿を見ると、「外出がしにくいことにストレスを感じる」、「感染対策についての社会や周囲による圧力、息苦しさを感じる」といった投稿があった。
テレワークなど新しい生活様式が快適と感じる人がいる一方で、感染対策を求める周囲の圧力に息苦しさを感じる人も多いようだ。
図表6を見ると、ポジティブな投稿の割合が多かったのは、「定額給付金」(81%)、「テイクアウト」(53%)、「オンライン飲み会」(46%)、「デリバリー」(45%)、「テレワーク」(44%)であった。
対面での対話や外食といった活動が制限される中でも、オンラインコミュニケーションツールやテイクアウト、デリバリーなどの代替手段を活用し、生活を楽しもうとする様子が伺える。また、「テレワーク」については、通勤の労力や時間が無くなり、効率的に働けるとの投稿があった。「定額給付金」については、81%がポジティブな投稿と、大部分の人が好意的な反応だったことが伺える。
ポジティブな投稿の割合が中程度だったのは、「ソーシャルディスタンス」(41%)、「新しい生活様式」(40%)、「マスク着用」(40%)、「手洗い」(37%) 、「三密」(36%)であった。感染予防の基本的な行動に関する事柄が挙がっている。感染予防の基本的な行動について、不満を述べる意見はそれほどは多くなかった。感染拡大防止のための必要性がある程度理解されていることが伺える。
ポジティブな投稿の割合が少なかったのは、「自宅待機」(33%)、「マスク配布」(28%)、「自粛」(22%)であった。「自粛」については、外出やイベントに参加しにくいことへの不満が見られた。「自宅待機」では、勤務ができないことによる時間や機会のロスへの不満が見られた。また、児童の自宅待機によって学習が遅れることを心配する投稿が見られた。
4――新しい生活様式による変化と今後の課題
消費・生活の変化について
SNS投稿からは、自粛によって娯楽や消費の機会が減少し、生活の満足度が低下する可能性が示された。また、児童の自宅待機によって、学習が遅れることを心配する意見が見られた。一方で、オンライン飲み会や、テイクアウト、デリバリーといった手段を活用することで生活を楽しむ様子が見られた。
感染対策により、従来の消費・娯楽活動が制限されている。そうした中で、オンラインコミュニケーションなど代替手段を活用することが、効率的な学習や業務や生活の質を向上することにつながりそうだ。
日本では、従来テレワークの実施・活用は限定的だった。パーソル総合研究所の調査3によれば、全国の正社員のテレワーク実施率は、2020年3月9日から3月15日の全国の正社員のテレワーク実施率は13.2%だったが、緊急事態宣言が発令された4月中旬(4月10日から4月12日)には、27.9%まで上昇した。
新型コロナウイルスの流行以前は、テレワークの活用している人は多くはなかった。実際にテレワークを行うにはセキュリティ、労務管理など様々なハードルがある。しかし、新型コロナウイルスの感染対策の必要から、テレワークの実施・認知が急速に進んだ。また、SNS投稿からはテレワークが労働者から概ねポジティブに受け止められていることが伺える。「働き方改革」のもと、働きやすい環境が求められている現在では、「テレワーク」の普及が進み、働き方の変化が加速するかもしれない。
3 パーソル総合研究所 「第三回・新型コロナウイルス対策によるテレワークへの影響に関する緊急調査」
SNS投稿の分析では、新しい生活様式について、ストレスを感じるという投稿もあった。外出や旅行の機会が減少することや、感染対策についての社会・周囲の圧力に、ストレスを感じる人が増えている可能性がある。感染対策が長引く中で、こうしたストレスや不安を感じる人々の心のケアが求められるだろう。
5――まとめ
SNS上の投稿からは、感染対策により、消費や娯楽の機会が少なくなることへの不満が見られた。その一方で、オンラインコミュニケーションやデリバリーを活用し、生活を楽しもうとする様子も見られた。従来の消費・娯楽活動が制限される中で、こうした代替手段を効果的に活用することが重要となっているかもしれない。
また、日頃の手洗い、テレワーク、イベント、熱中症対策など日常の様々な場面で、「新しい生活様式」が意識されている様子が見られた。こうした感染対策を実践するべきという意見がある一方で、不便さや感染対策を求める周囲の圧力に息苦しさを感じるという意見もあった。新型コロナウイルスの流行が長引けば、このような環境の中で少しずつストレスが蓄積していく恐れがある。こうした人々のストレスやメンタルヘルスのケアを適切に行っていくことが求められるだろう。
感染対策により、従来の消費生活や働き方が制約を受けている。こうした中で、新しい手段を活用し、状況に適応していくことが求められているだろう。
尚、以上のような分析手法はある程度の即時性が必要とされる調査には有効と考えられる。今後も同様な手法により、現在のコロナ禍で大きく揺らいでいる人々の心理状況等を分析していきたい。
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03-3512-1860
- 【職歴】
2008年 大和証券SMBC(現大和証券)入社
大和証券投資信託委託株式会社、株式会社大和ファンド・コンサルティングを経て
2019年 ニッセイ基礎研究所(現職)
【加入団体等】
・公益社団法人 日本証券アナリスト協会 検定会員
・修士(工学)
(2020年08月14日「基礎研レポート」)
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