2020年07月21日

コロナ禍の10代の見通し

第1回 新型コロナによる暮らしの変化に関する調査~10代編

生活研究部 上席研究員 久我 尚子

生活研究部 主任研究員 井上 智紀

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1――はじめに~新型コロナで暮らしが激変、15~19歳の見通しは?

これまで「コロナ禍の10代で増えた行動、減った行動1」と「コロナ禍の10代の不安2」において、スマートフォン世代である15~19歳の男女420名を対象とする調査3を用いて、新型コロナウイルスの感染拡大による生活行動の変化や不安を捉えた。

本稿では、最後に、新型コロナウイルスの感染拡大による暮らしの変化についての15~19歳の見通しについて捉える。
 
1 久我尚子・井上智紀「コロナ禍の10代で増えた行動、減った行動」、ニッセイ基礎研究所、基礎研レター(2020/7/14)
2 久我尚子・井上智紀「コロナ禍の10代の不安」、ニッセイ基礎研究所、基礎研レター(2020/7/16)
3 ニッセイ基礎研究所「第1回 新型コロナによる暮らしの変化に関する調査~10代編」、調査時期は2020年7月3日、調査対象は全国に住む15~19歳の男女、LINEリサーチのモニターを利用、有効回答420。
 

2――コロナ禍の見通し

2――コロナ禍の見通し~デジタル化の進行は消費行動では約7割、授業や友人付き合いでは4割前後

1全体~社会的距離の習慣化や消費行動のデジタル化は約7割、オンライン授業は35%が「そう思う」
新型コロナによる暮らしの変化について7項目をあげて、どの程度そう思うかについて5段階でたずねたところ、「そう思う」「ややそう思う」をあわせた「そう思う層」が半数を超えるのは、選択割合の高い順に「三密を避け、社会的距離を保つことの習慣化」(72.4%)、「店舗での買い物よりネット通販が主流になる」(67.2%)、「現金の利用よりキャッシュレス決済が主流になる」(66.4%)、「同様のサービスなら、対面よりオンライン対応が好まれるようになる」(57.9%)である(図表1)。

これらでは「そう思わない」「あまりそう思わない」をあわせた「そう思わない層」は2割以下であり、そう思う層との差は40%pt以上とそう思う層が大きく上回る。

一方、「家で過ごす時間が増え、家族との絆が深まる」(44.5%)や「友人との交流はメールやSNSなどが主になる」(43.4%)は、そう思う層は4割台である。また、「学校ではオンライン授業が当たり前になる」(35.0%)では、そう思う層が、そう思わない層(41.4%)を下回る(▲6.4%)。

つまり、15~19歳ではネット通販やキャッシュレス決済、各種サービスのオンライン対応など消費行動のデジタル化と比べると、学校のオンライン対応や友人とのコミュニケーションのデジタル化は進みにくいと考えているようだ。この背景には緊急事態宣言中の公立小中学校等のオンライン授業への対応がわずか5%に留まったという経験のほか4、学校での活動は必ずしもオンラインで対応できるものばかりではないためだろう。体育や音楽、美術などの実技形式の科目があるほか、部活動などの課外活動もある。そして、仲間と同じ空間で過ごしたいという気持ちから、オンライン授業が主流となって欲しくない、また、友達とのつき合いもメールやSNSが主流になって欲しくないという希望も含まれているのかもしれない。
図表1 15~19歳が新型コロナによる暮らしの変化に対して、どの程度そう思うか(単一選択)(n=420)
 
4 文部科学省「新型コロナウイルス感染症対策のための学校の臨時休業に関連した公立学校における学習指導等の取組状況について」(令和2年4月21日)
2性別~男性は女性よりデジタル志向が高い
性別に見ても全体と同様だが、「友人との交流はメールやSNSなどが主になる」(男性は女性+6.7%)や「現金の利用よりキャッシュレス決済が主流になる」(+6.2%)、「学校ではオンライン授業が当たり前になる」(+4.3%)などデジタル化の進行に関わる項目については、いずれも男性が女性を上回り、男性の方が女性よりデジタル化が進行すると考えている(図表2)。

この背景には性別によるデジタル志向の違いがあるのだろう。15~19歳のスマートフォン保有率は男性87.1%、女性91.2%で、女性が男性を4.1%pt上回るものの、ICTスキルを見ると、「インターネットを利用したソフトウェアのダウンロードやインストール」(男性は女性+6.2%)や「プログラミング言語を使用してコンピュータプログラムを作成」(+5.4%)といった比較的高度な作業では男性が女性を上回る(総務省「2019年通信利用動向調査」)。このほか、女性は男性より対面でのコミュニケーションを好むために、比較的デジタル志向が低くなるといった傾向もあるのかもしれない。
図表2 性別に見た15~19歳が新型コロナによる暮らしの変化に対して「そう思う」割合
3学生種別~専門学校・短大生はデジタル志向が高い?
学生種別に見ても全体と同様だが、専門学校・短大生では「現金の利用より、キャッシュレス決済が主流になる」や「同様のサービスなら、対面よりオンライン対応が好まれるようになる」、「学校ではオンライン授業が当たり前になる」(いずれも全体+7.9%pt)といったデジタル化の進行に関わる項目で、いずれも全体を上回る(図表3)。

大学生では「友人との交流はメールやSNSなどが主になる」(▲6.3%pt)や「現金の利用よりキャッシュレス決済が主流になる」(▲6.2%pt)、「店舗での買い物よりネット通販が主流になる」・「同様のサービスなら、対面よりオンライン対応が好まれるようになる」(いずれも▲5.1%pt)などコミュニケーションや消費行動のデジタル化の進行に関わる項目では、いずれも全体を下回る。一方、「学校ではオンライン授業が当たり前になる」(+0.2%pt)は、わずかに全体を上回る。

当調査の専門学校・短大生のサンプル数は十分とは言えないため、この結果からは一概に他と比べてデジタル志向が高いとは言い難い。ただ、専門学校・短大生ではデジタル志向が高い傾向を示す背景の1つには、例えば、オンラインでの代替が比較的容易は座学形式の講義が多いなど、大学生等とのカリキュラムの違いがあるのかもしれない。一方で、大学生では、例えば実験や実習の必要な理系の学科など、専攻によっては実技形式の講義が学びの根幹を担っている。また、専門学校・短大生と比べて、スポーツをはじめとしたサークル活動などが活発な印象もある5
図表3 学生種別・家族との同居状態別に見た15~19歳が新型コロナによる暮らしの変化に対して「そう思う」割合
 
5 なお、当調査のサンプルでは、専門学校・短大生は男性40.0%、女性60.0%、大学生は男性45.4%、女性54.6%であり、性別の分布が学生種別の特徴へ影響を与えているといったわけではないようだ。
4家族との同居状態別~1人暮らしの若者は「店舗よりネット通販が主流になる」が7割超
家族との同居状態別に見ても全体と同様だが、別居では「店舗での買い物よりネット通販が主流になる」(全体+5.4%pt)で全体を上回る(図表3)。なお、別居では、「友人との交流はメールやSNSなどが主になる」(▲13.3%pt)や「学校ではオンライン授業が当たり前になる」(▲10.0%pt)、「現金の利用よりキャッシュレス決済が主流になる」(▲6.4%pt)では、いずれも全体を下回ることから、デジタル志向が高いというわけではないようだ。

家族と別居で一人暮らしの若者では、コロナ禍でも食料や日用品の買い物は自分でしなければならない。店舗での買い物に対する不安感などから、ネット通販の進行へ肯定的なのかもしれない。

また、別居では、特に「友人との交流はメールやSNSなどが主になる」や「学校ではオンライン授業が当たり前になる」で全体を大きく下回るが、一人暮らしの場合、仲間と同じ空間で一緒に過ごしたいという気持ちがより強いのだろう。
 

3――おわりに

3――おわりに~デジタル化が進行しても、仲間とのリアルのコミュニケーションも求めている

スマートフォン世代の10代では、買い物など消費行動のデジタル化は多くが進むと考えている。しかし、友人づきあいや学校生活でもデジタル化が進むと考えるのは必ずしも多数派ではなく、仲間と同じ空間で過ごすようなコミュニケーションを求めている様子も垣間見られた。

3回に渡ってコロナ禍の15~19歳の状況を捉えてきた。現在、感染拡大の第二波の懸念が強まる中で、生活行動や不安、見通しは、これから変容する可能性がある。今後とも継続的に調査を実施することで、それらの状況を丁寧に捉えていく予定だ。
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生活研究部

井上 智紀 (いのうえ ともき)

(2020年07月21日「基礎研レター」)

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