2020年07月14日

コロナ禍の10代で増えた行動、減った行動

第1回 新型コロナによる暮らしの変化に関する調査~10代編

生活研究部 上席研究員 久我 尚子

生活研究部 井上 智紀

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1――はじめに~新型コロナで変わる暮らし、15~19歳のスマートフォン世代を対象に調査を実施

新型コロナウイルスの感染拡大によって暮らしが激変する中で、ニッセイ基礎研究所では、消費行動や働き方、生活不安などの状況を把握し、ウィズコロナ・アフターコロナの行動を予測するために、20~60歳代の全国に住む男女約2千名を対象とする「新型コロナウイルスによる暮らしの変化に関する調査1」をインターネット調査にて、継続的に実施している。

本稿では、別途、スマートフォン世代である15~19歳の男女420名を対象とする調査にて、設問を限定した形で回答を得た結果2を報告したい3

5月に緊急事態宣言が解除され、現在、学校等では分散登校や時差通学、オンライン授業などの工夫がなされているところだ。外出や行動が制限される中で、15~19歳は日常生活において、どのような行動が増え、どのような行動が減っているのだろうか。
 
1 初回は2020年6月26日~29日に実施。詳細はニッセイ基礎研究所「第1回 新型コロナによる暮らしの変化に関する調査」(2020/7/6)調査結果概要を参照。
2 ニッセイ基礎研究所「第1回 新型コロナによる暮らしの変化に関する調査~10代編」、調査時期は2020年7月3日、調査対象は全国に住む15~19歳の男女、LINEリサーチのモニターを利用、有効回答420。
3 本稿に続き、今後何回かに分けてレポートを発信予定。
 

2――メディア視聴行動

2――メディア視聴行動~ネット動画やSNSなどのスマートフォンを利用して視聴するメディア利用が増加

1全体~スマートフォン世代のデジタルネイティブはテレビよりもネット動画やSNSが増加
まず、メディア視聴行動について捉える。15~19歳に対して、新型コロナ感染拡大前と比べて、メディア視聴行動で増えたものをたずねたところ、圧倒的に多いのは「YouTubeなどのネット動画を見る」(73.6%)であり、次いで、「SNSを見たり投稿する」(55.5%)、「テレビを見る」(51.0%)、「漫画を読む(電子書籍含む)」(32.9%)、「動画配信サービスで映画やドラマを見る」(32.6%)と続く(図表1)。

上位2つのネット動画やSNSは主にスマートフォンによる視聴と見られるが、これは、今の15~19歳がスマートフォン世代のデジタルネイティブであることが影響しているのだろう。

総務省「2019年通信利用動向調査」によれば、15~19歳のスマートフォン保有率は89.1%であり、親世代の40~50歳代をやや上回る(図表2)。

30歳代のデジタルネイティブが同年代の頃には、現在ほどスマートフォンが普及しておらず、携帯電話やパソコンなどを用いたテキストベースのコミュニケーションが主であった。一方で、今の15~19歳では、端末もアプリケーションも格段に進化し、スマートフォンによる動画を用いたコミュニケーションが容易な環境となっている。よって、コロナ禍においても、テレビをはじめとした従来のマスメディアよりも、ネット動画やSNSといった主にスマートフォンを利用したメディア視聴の増加が目立つのだろう。

なお、同様に、メディア視聴行動で減ったものをたずねたところ、「特に減ったものはない」(69.0%)が圧倒的に多く、「テレビを見る」(10.2%)を除けば、いずれも5%未満である。
図表1 15~19歳のメディア視聴行動で増えたもの(複数選択)/図表2 スマートフォン保有率(2019年)
2属性別~スマートフォン保有率の高い大学生はネット動画やSNSの利用が増加
メディア視聴行動で増えたものについて、性別に見ても全体と順位は同様だが、女性では「SNSを見たり投稿する」(63.8%)や「動画配信サービスで映画やドラマを見る」(41.0%)が全体を上回る(図表3)。なお、女性では「新聞を読む(電子書籍除く)」や「ラジオを聴く」を除けば、いずれも男性よりも選択割合が高い。

なお、総務省「2019年通信利用動向調査」にて、過去1年間のインターネット利用目的のうち、「SNSの利用」を選択した割合を見ると、60歳代未満では、いずれも男性より女性の方が選択割合は高く、女性ではSNS利用意向が高い傾向がある(図表4)。また、15~19歳の女性では、20歳代男女や30歳代の女性に次いで高い。
図表3 性別に見た15~19歳のメディア視聴行動で増えたもの(複数選択)/図表4 過去1年間のインターネット利用目的のうち「SNS利用」を選択した割合(2019年)
学生種別で見ても全体と順位は同様だが、専門学校・短大生では「テレビを見る」(60.0%)が、大学生では「YouTubeなどのネット動画を見る」(80.6%)や「動画配信サービスで映画やドラマを見る」(39.8%)で全体を上回る(図表5)。なお、大学生では「本を読む(電子書籍含む)」や「新聞を読む(ネットやスマホ含む)」、「ラジオを聴く」を除けば、いずれも他の学生種別よりも選択割合が高く、ネット動画やSNS、動画配信サービスの利用といった、主にスマートフォンを介したメディア視聴の増加が目立つ。これは、大学生では比較的スマートフォン保有率が高いためだろう。

家族との同居状態別に見ても全体と順位は同様だが、別居では「YouTubeなどのネット動画を見る」(80.0%)で全体を上回る。なお、家族と別居のうち、52.5%が大学生である。
図表5 学生種別・家族との同居状態別に見た15~19歳のメディア視聴行動で増えたもの(複数選択)

3――生活行動

3――生活行動~外出行動を家の中での行動で代替、大学生で比較的大きな変化

1全体~学校のかわりに自宅で勉強、外で会うかわりにメールやLINE、運動が減り、過半数で睡眠増加
次に、生活行動について捉える。15~19歳に対して、新型コロナ感染拡大前と比べて、生活行動で増えたものをたずねたところ、最も多いのは「自宅での勉強」(54.3%)であり、次いで僅差で、「睡眠」(51.0%)、「友人との交流(メールやLINE、電話等)」(49.0%)、「家族と過ごす」(43.8%)と続き、いずれも半数程度を占める(図表6)。なお、「特に増えたものはない」は9.8%を占める。

一方、減ったもので最も多いのは「友人との交流(会う、出かける)」(61.4%)であり、次いで、「外出(アルバイトや通学以外)」(55.5%)、「学校での勉強」(48.6%)、「部活やサークル活動(オンライン含む)」(34.5%)、「運動(部活等以外で)」(30.2%)と続く。なお、「特に減ったものはない」は13.3%を占める。

つまり、「学校での勉強」が減る一方で「自宅での勉強」が増える、「友人との交流(会う、出かける)」が減る一方で「友人との交流(メールやLINE、電話等)」が増えるなど、これまで家の外で行っていた行動を家の中で代替するようになった結果、家の中で過ごす行動が増え、外出を伴う行動は減っている。さらに、運動時間は減る一方、睡眠時間は過半数が増えている状況もある。
図表6 15~19歳の生活行動で増えたもの・減ったもの(複数選択)(n=420)
2属性別~影響が大きいのはオンライン講義への対応が進み、外出の自由度が高い大学生
生活行動で増えたものについて、属性別に見ても、おおむね全体と同様の傾向を示すが、女性や大学生では「自宅での勉強」や「睡眠」が、このほか女性では「家族と過ごす」が、大学生では「アルバイト」が全体を上回る(図表7)。
図表7 属性別に見た15~19歳の生活行動で増えたもの・減ったもの(複数選択)
生活行動で減ったものについても、属性別に見ても、おおむね全体と同様だが、女性や大学生、家族と別居では「友人との交流(会う、出かける)」が、このほか女性や大学生では「学校での勉強」、「アルバイト」が、また、大学生では「外出(アルバイトや通学以外)」や「部活やサークル活動(オンライン含む)」、「運動(部活等以外)」が、家族と別居で「家族と過ごす」が全体を上回る。

以上の属性別に見た生活行動の増えたものと減ったものをあわせると、大学生での増減が目立つ。つまり、コロナ禍で生活が比較的大きく変わったのは、15~19歳の中では大学生と言えるだろう。

図表8に、大学生について生活行動で増えたものと減ったものを図示すると、あらためて「友人との交流(会う、出かける)」や「外出(アルバイトや通学以外)」などの外出行動の減少や「自宅での勉強」の増加が目立つ様子が見える。

今年は多くの大学で卒入学式が中止された。また、大学では中学校や高校等と比べてオンライン講義への対応が進んでいる4。こうしたことから、平常時から外出行動の自由度が高く、行動や交流範囲も広い大学生では、中高生等と比べて、外出や通学機会等が比較的大きく減ることで、家の中での行動も比較的大きく増えたのだろう。
図表8 15~19歳のうち大学生の生活行動で増えたもの・減ったもの(複数選択)(n=108)
 
4 文部科学省「新型コロナウイルス感染症対策のための学校の臨時休業に関連した公立学校における学習指導等の取組状況について」(令和2年4月21日)より、オンライン指導への対応は公立小中高校等の5%。一般社団法人私学労務協会「緊急アンケート集計結果速報」(令和2年5月14日)より、私立のオンライン授業への対応は高校75%、大学87%。
 

4――おわりに

4――おわりに~10代は休校で大人より早くから生活が変化、次稿では10代の不安を捉える予定

3月初旬の政府による全国一斉休校要請によって、10代は大人より早くから新型コロナによる生活変化の影響を受けている。その変化にはスマートフォン世代らしさや、行動や交流範囲の広い大学生で影響が大きな様子が見えた。進学や就職を控える10代では社会情勢の急速な変化に対する不安も大きいのではないだろうか。

次稿ではコロナ禍での10代の不安について捉える。なお、本稿で用いた調査は継続して実施予定であり、行動変化の状況が今後も続くものなのか等を分析していく予定だ。
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(2020年07月14日「基礎研レター」)

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