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新型コロナウイルスと各国経済-コロナ禍を上手く乗り切っているのはどの国か?49か国ランキング
経済研究部 主任研究員 高山 武士
5――ランキング上位国の特徴
中国の次に大きなクラスターが発生しニュースとなったイタリアでは初期感染者が確認されるかなり以前にウイルスが持ち込まれて拡大していたとも言われている。
東南アジア諸国の初動の早さが水際対策を効果的に働かせ、そもそも国内への輸入感染を抑制してきた可能性がある。
もちろん、初動対応が早くてもインドネシア(感染拡大率と致死率が高い)やシンガポール(人口当たりの感染者が多い)のように順位を落としている国もあるが14、当局のモニタリングと早期の対策が初期の感染拡大を抑え、その後の蔓延を低コストでコントロールできた可能性は高いと思われる。
一方で、封じ込め政策自体の厳しさ(図表5では丸印の大きさ)は今回のランキングとはほぼ相関がなかった。厳しい政策導入がコロナ禍抑制に効かないという意味ではないが、欧米などは大規模な感染が発覚した後、強固なロックダウンを実施したものの早期に対応を実施した東南アジアほど良い結果にならなかった15。
11 例えば、挨拶の際に人との接触が少ないことなどが感染防止に寄与しているなど。
12 香港については、https://www.info.gov.hk/gia/general/201912/31/P2019123100562.htm を参照。なお、台湾はOxCGRTでは1月2日からとしているが、CDCによる通知は12/31時点ですでに実施されている(https://www.cdc.gov.tw/Bulletin/Detail/zicpvVlBKj-UVeZ5yWBrLQ?typeid=9 )
13 日本の初期の対応としてはhttps://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_08787.html など。
14 タイのようにOxCGRTでは初動対応が遅かったにも関わらず、コロナ禍を免れている国もあるが、メディアによればタイでは1月5日時点では検疫体制を強化していたと思われ(https://www.bangkokpost.com/thailand/general/1829219/arrivals-from-chinas-wuhan-scanned-for-pneumonia)。OxCGRTにおいて、こうした対応が考慮されていないだけの可能性もある。
15 震源地の中国では、強固なロックダウンでの封じ込めが奏功したと思われるが、他国では中国ほどの成果が上がらなかったと思われる。
6――おわりに
ただし、今回の評価における先行きの被害の織り込み方は「コロナ被害」では足もとの感染拡大率を、「経済被害」では国際機関の見通しを利用しており、実績とは異なる。いったん感染者数が減少に転じた国でも第二波のリスクは常に抱えており、今後も継続的なコロナ対応が必要である。実際の「コロナ禍被害」と「経済被害」の動向はこれからのコロナ対応への巧拙で大きく変動しうる。
そして現在は、厳しい封じ込め政策の経済への影響が甚大であり、財政出動の余地も限られていることから、強固な行動制限に対する反発も強くなっている。今後の対応では、感染者の早期発見と隔離などの医療体制を整えて、行動制限を行う場所・業種を極力限定しつつ封じ込めをするという、これまで以上に難しい舵取りが求められていると言えるだろう。
16 エジプト、インド、パキスタンの集計期間は年度単位。本稿では、インド・パキスタンは財政年度をそのまま用いており、他国と対象期間が3か月ずれている。また、パキスタンは2か年度分(19年7月~21年6月)を「GDP損失」の対象期間としている。
(お願い)本誌記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本誌は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものではありません。
03-3512-1818
- 【職歴】
2002年 東京工業大学入学(理学部)
2006年 日本生命保険相互会社入社(資金証券部)
2009年 日本経済研究センターへ派遣
2010年 米国カンファレンスボードへ派遣
2011年 ニッセイ基礎研究所(アジア・新興国経済担当)
2014年 同、米国経済担当
2014年 日本生命保険相互会社(証券管理部)
2020年 ニッセイ基礎研究所
2023年より現職
【加入団体等】
・日本証券アナリスト協会 検定会員
(2020年07月03日「基礎研レター」)
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