2020年04月10日

ドイツの民間医療保険及び民間医療保険会社の状況(1)-2018年結果-

中村 亮一

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2|給付額
総給付額(老齢化積立金(生命保険の責任準備金に相当)への繰入額や保険料返還を含む)の推移は、以下の通りとなっている。これまでは、老齢化積立金への繰入額の増加率が高かったが、ここ数年間は、高齢化の影響等もあり、老齢化積立金への繰入額は横ばいで、代わって保険料返還準備金(RfB)への繰入額の増加率が高くなっていた。RfB繰入額は、2016年は約3億ユーロ、2017年は約7億ユーロ増加していたが、2018年は約10億ユーロ減少している。
民間医療保険-給付額の内訳-
保険種類別では、医療費用保険(完全医療保険等)が全体の8割以上を占めているが、近年は長期介護保険の給付額の増加率が高い。
民間医療保険-給付額の内訳(保険商品別) -
長期介護保険以外の医療保険の給付タイプ別のシェアでは、通院給付が5割弱で最も高く、入院給付が3割弱で続いている。歯科治療給付は15.8%であるが、近年の増加率が高く、そのシェアが高くなってきている。
民間医療保険(長期介護保険以外)-給付額の内訳(給付タイプ別) -
なお、2018年給付額の男性・女性・子供別のシェアは以下の通りとなっている。
民間医療保険-2018年給付額のシェア(給付タイプ別・男性・女性・子供別) -
2017年ベース7の医療保険の給付額(老齢積立金繰入を含む)47,362百万ユーロは、生命保険・損害保険を含めた保険会社全体の給付額217,159百万ユーロの約2割に相当し、損害保険と並ぶシェアを占める形になっている。
民間保険会社における医療保険の位置付け(医療保険会社の給付額シェア)
 
7 このレポートの執筆時点で入手可能な最新ベース
(参考1)公的医療と民間医療の給付額(被保険者当たり)比較
公的医療(GKV)と民間医療(PKV)の給付額(被保険者当たり)を、給付別に2007年数値を100とした場合の推移は、以下の図表の通りである。

医療(Medical treatment)については、GKVの伸びが高いが、それ以外は、基本的にPKVの伸びが高くなっている。特に、歯科治療等での伸びの格差が最も大きくなっている。
公的医療と民間医療の給付額(被保険者当たり)比較
(参考2)医療保険普及率の国際比較
一人当たりの保険料及び対GDP保険料比率で見た医療保険の普及率(2018年)でみると、(1)保険密度を示す1人当たりの保険料は473ユーロで、欧州の中で、オランダの2,719ユーロ、スイスの1,146ユーロに次いでおり、(2)普及率を示す対GDP保険料比率は約1.2%で、オランダの6%、スイス、スロベニアに次いでいる。

医療保険の普及率等は、公的医療保険制度との役割分担が大きく影響しており、民間医療保険に大きく依存しているオランダやスイスが高いものとなっているが、ドイツもこれらに次ぐ国となっている。
民間医療保険-普及率の推移-

4―まとめ

4―まとめ

以上、2018年数値に基づいて、ドイツにおける民間医療保険の普及状況について報告してきた。

ドイツの民間医療保険は、公的医療保険制度の代替をその主たる機能としつつ、高まる医療保障ニーズに対応する観点から、補完及び補足的な機能を充実させることで、着実に保険料を増加させ、その位置付けを高めてきている。

次回のレポートでは、民間医療保険会社の市場シェア、経営効率及び財務面の状況について報告する。
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中村 亮一

研究・専門分野

(2020年04月10日「保険・年金フォーカス」)

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