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- 「東日本大震災による被害・生活環境・復興に関するアンケート」2016年調査結果概要-福島県双葉町民を対象とした第3回調査
2020年02月07日
1――基本情報
アンケート調査の項目には、年齢や性別等の基本的な属性の他、人とのつながり(ソーシャル・キャピタル)や健康状態に関する項目が含まれ、アンケート調査用紙は、双葉町の広報が配布されているすべての世帯(2,900件)に配布させて頂いた。回答は、全国に避難されている双葉町民499名より頂いた(回答率約17%)。
本調査は世帯主の方を対象としており、年齢、性別の分布については図1、図2の通りである。このように、国勢調査の年齢・性別分布に比べると、回答者の年齢分布は60代、70代の方が多く、性別の分布は男性の回答者が多いという偏った分布である。加えて、震災という大変な状況が起こった後にご協力いただいた調査なので、回答者の傾向が一般的なアンケート調査とは大きく異なっている可能性も考えられる。そのため、本調査の結果が、必ずしも双葉町民全体の傾向を示すものではないことにご留意頂きたい。
本調査は世帯主の方を対象としており、年齢、性別の分布については図1、図2の通りである。このように、国勢調査の年齢・性別分布に比べると、回答者の年齢分布は60代、70代の方が多く、性別の分布は男性の回答者が多いという偏った分布である。加えて、震災という大変な状況が起こった後にご協力いただいた調査なので、回答者の傾向が一般的なアンケート調査とは大きく異なっている可能性も考えられる。そのため、本調査の結果が、必ずしも双葉町民全体の傾向を示すものではないことにご留意頂きたい。
1 本研究は、以下の研究助成によって実施されてきた。記して深謝する。
科研費(15J09313、26220502、LZ003)、日本経済研究センター研究奨励金
また、この調査は東京大学倫理委員会の承認(19-73)のもと実施した調査である。
2――健康状態について
K6の調査は、双葉町以外の被災地でも、震災後に国や自治体等により調査が行われ、結果が公表されている。図5で見られるように、本調査の回答結果を集計したK6の双葉町における値はこれらの他の被災地での調査の結果と比べても大きい可能性があることが示された。将来への不安感など、人災と呼ばれる災害が自然災害に比べてより大きな、そして長期的なこころのストレスをもたらす可能性があると私たちは考えている。また、主観的健康状態の分布では震災から5年が経過し、少し回復の傾向が見られたが、こころの健康状態の分布はほとんど変わっておらず、回復により長い時間がかかる可能性が示された。
また、調査時点で仮設住宅にお住まいだった双葉町民の方のK6の値を宮城県の仮設住宅にお住まいの方を対象とした調査結果と比較しても、双葉町民で仮設住宅にお住まいの方のK6の値は極めて高い可能性があることがわかった(図6参照)。さらに、双葉町の仮設住宅にお住まいの方のK6の値は2013年から2016年にかけて高くなっている傾向があることがわかる。長期的な仮設住宅での生活がこころの健康状態にストレスを与えている可能性がある他、こころの健康状態が悪化していると、仮設住宅から次の住まいへの移動が困難になっている可能性も考えられる。いずれにしても、長期的に仮設住宅に住まわれた方へのこころのサポートが重要であることが示唆された。
また、調査時点で仮設住宅にお住まいだった双葉町民の方のK6の値を宮城県の仮設住宅にお住まいの方を対象とした調査結果と比較しても、双葉町民で仮設住宅にお住まいの方のK6の値は極めて高い可能性があることがわかった(図6参照)。さらに、双葉町の仮設住宅にお住まいの方のK6の値は2013年から2016年にかけて高くなっている傾向があることがわかる。長期的な仮設住宅での生活がこころの健康状態にストレスを与えている可能性がある他、こころの健康状態が悪化していると、仮設住宅から次の住まいへの移動が困難になっている可能性も考えられる。いずれにしても、長期的に仮設住宅に住まわれた方へのこころのサポートが重要であることが示唆された。
しかしながら、この調査結果が必ずしもすべての双葉町の皆さまに当てはまるわけではなく、K6の値が高いからといって精神的な疾患があると断定されるものではない。あくまで、政策的な示唆を行政などに与えるための調査であることを申し添える。
3――社会関係資本の変化について
社会関係資本とは、信頼関係やネットワークなどを指し、「きずな」ということばであらわされることもある。この社会関係資本は震災復興の鍵概念として注目されている概念で、本調査でも重点的に分析を行ってきた。これまで実施させていただいたアンケート調査の分析からは、社会関係資本は震災後のこころの健康状態を保つために重要な役割がある可能性がある一方、双葉町では社会関係資本が震災によって弱められている可能性があることが示されてきた。
社会関係資本を図る指標として一般的に使われている指標はいくつかあるが、ここでは3つの項目に注目する。「一般的な人への信頼感」「近所の人との助け合いの頻度」「近所の人への信頼感」である。図7、図8、図9から、この3つの指標はどれも、震災前と比較して減少しており、また、2013年から2016年での回復はほとんど見られず、一般的な人への信頼感は震災後さらに減少傾向が見られる。このことから、震災で減少させられた社会関係資本の回復にはさらに長い時間がかかる可能性があることがわかる。
社会関係資本を図る指標として一般的に使われている指標はいくつかあるが、ここでは3つの項目に注目する。「一般的な人への信頼感」「近所の人との助け合いの頻度」「近所の人への信頼感」である。図7、図8、図9から、この3つの指標はどれも、震災前と比較して減少しており、また、2013年から2016年での回復はほとんど見られず、一般的な人への信頼感は震災後さらに減少傾向が見られる。このことから、震災で減少させられた社会関係資本の回復にはさらに長い時間がかかる可能性があることがわかる。
4――避難先の住民の方との関係構築について
長期化する避難生活の中で、避難先の地区の政策や避難先の住民の理解が様々に異なる中での、避難先の住民との新たな関係構築が課題であるというお話を様々な双葉町民の方からお聞かせ頂いた。そこで今回(2016年)の調査から、避難先の住民の方との関係に関する質問を追加している。図10に示されているように、避難先の住民の方との交流の機会がない方が約44%、避難先の住民に双葉町民であるということを隠した方が良いと感じたことがある方が約48%、ゴミ出しについて気が引ける思いをされたことがある方が約19%、避難先の地区の住民の方に双葉町民であるために悪口を言われたり、いたずらをされたりしたことがあるという方が約12%いらっしゃった。
さらに、避難先の住民との交流がない、悪口やいたずらをされた経験がある、また、ゴミ出しについて気が引けるような思いをされたことがある方はこころの健康状態が悪化しているリスクが高い傾向があり、避難先の地域の住民の理解、そして避難先の地域の住民との新たな関係構築がこころの健康状態の回復に重要な役割を果たす可能性があることが示唆された。また、県内避難、県外避難によるこころの健康状態の違い、福島県内の市町村、もしくは地区の違いによるこころの健康状態の違いにも注目して分析を行いましたが、これまでの分析では大きな違いは見られなかった。今後も、より具体的に政策提言につながる分析を続けていきたいと考えている。
5――これまでの3回の調査分析で示唆されたことのまとめ
(1) 双葉町民の方のこころの健康状態は他の被災地での調査と比較してもより深刻な状態にある可能性があり、震災5年が経過しても回復の傾向がほとんどみられていない。
(2) 震災と避難で双葉町民の社会関係資本が大きく減少させられ、その回復にはとても長い時間がかかる可能性がある。
(3) 震災前からのつながりを保つこと、震災後ボランティア活動や趣味の会に参加することによってこころの健康状態を良好に保つ助けになる可能性がある。
(4) 震災前後の生活を比較して、失ったものが大きい方ほど、こころの健康状態が悪化した可能性がある。具体的には、震災前と比較して居住空間が大きく減少した方のこころの健康状態が悪化した可能性がある。
(5) 避難先の地域の住民の理解や、避難先の地域の住民との新たな関係構築がこころの健康状態の回復に重要な役割を果たす可能性がある。
これらの結果は国内外の学会で発表し、また国際的な学術誌で発表をしてきている。今後も分析を進め具体的な提案につなげていく所存である。
(2) 震災と避難で双葉町民の社会関係資本が大きく減少させられ、その回復にはとても長い時間がかかる可能性がある。
(3) 震災前からのつながりを保つこと、震災後ボランティア活動や趣味の会に参加することによってこころの健康状態を良好に保つ助けになる可能性がある。
(4) 震災前後の生活を比較して、失ったものが大きい方ほど、こころの健康状態が悪化した可能性がある。具体的には、震災前と比較して居住空間が大きく減少した方のこころの健康状態が悪化した可能性がある。
(5) 避難先の地域の住民の理解や、避難先の地域の住民との新たな関係構築がこころの健康状態の回復に重要な役割を果たす可能性がある。
これらの結果は国内外の学会で発表し、また国際的な学術誌で発表をしてきている。今後も分析を進め具体的な提案につなげていく所存である。
本調査結果は、調査にご協力頂いた約17%の双葉町の世帯の方のご回答のみを集計・分析した結果であり、この結果が双葉町民の方全員の傾向を表すものではございません。震災という大変な状況が起こったあとにご協力いただいた調査であるため、回答者の内訳は一般的なアンケート調査とは大きく異なっている可能性もございます。その為、健康状態の自己評価についての集計や、こころの健康状態についての集計においても、過大評価がされている可能性がございます。結果の解釈には十分な注意が必要であり、この調査結果のみによる断定的な判断は避ける必要がありますことにご留意いただれば幸いです。
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経歴
- 【職歴】
2010年 株式会社 三井住友銀行
2015年 独立行政法人日本学術振興会 特別研究員
2018年 ニッセイ基礎研究所 研究員
2021年7月より現職
【加入団体等】
日本経済学会、行動経済学会、人間の安全保障学会
博士(国際貢献、東京大学)
2022年 東北学院大学非常勤講師
2020年 茨城大学非常勤講師
公式SNSアカウント
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