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新型肺炎だけじゃない 株価急落の本当の理由と今後の見通し
金融研究部 主席研究員 チーフ株式ストラテジスト 井出 真吾
■新型肺炎はきっかけに過ぎない
その結果、株価の割高/割安を示すPER(株価収益率)は、米中貿易摩擦が本格化して以降、最も高い水準となった。特に米国株の割高さが目立ち、連日のように史上最高値更新が伝えられたS&P500のPERは、貿易摩擦が本格化した2018年3月から昨年9月(株価が上昇し始めた直前)までの平均16.4倍に対して、1月20日には18.8倍となった。TOPIX(東証株価指数)も同様で、同期間の平均PER12.7倍に対して14.3倍となっていた。
恐らく、多くの投資家は株価の割高感を意識(警戒)していたのだろう。そこに新型肺炎という誰もがマイナス要因と考える事象が発生したため、一斉に売り注文が膨らんだのではないか。やや乱暴な言い方をすれば、新型肺炎は単なる「売りの口実」に過ぎないというわけだ。
■今後の展開・・・株価の戻りは鈍いと予想
というのも、そもそも昨年9月以降の株価上昇は、将来の景気や業績の回復に対する“期待”が先行したものだ。その期待が本物であれば、新型肺炎が落ち着くにつれて株価も上昇基調を取り戻すはずだが、残念ながらその期待は幻に終わるとみられる。
たとえば筆者の試算では、日経平均2万4,000円は2020年度の企業業績が12~13%増益しなければ正当化されない。しかし、証券アナリストの予想(通常、やや楽観的なことが多い)は7%程度の増益予想だ。いかに株価が期待先行で買われ過ぎていたかを如実に表している。
実際、足元で日本企業の2019年度第3四半期(2019年10月~12月期)の決算発表が本格化しているが、1月30日付けの日本経済新聞電子版1は「企業業績に先行き懸念」、「底入れ感が期待されていた2019年4~12月期の主要企業の決算は減益が目立ち、先行きに慎重姿勢を崩さない企業が多かった。」と報じている。ポイントは「企業自身が先行きに慎重」という点だ。過熱気味だった株式市場は、冷静さを取り戻すことになるだろう。
余談だが、1月26日(日)に開催された日経Wアカデミー「投資の学校」には多くの人が参加してくれた(参加費16,500円と決して安くないが)。講演の冒頭、筆者は「当面は守りを固めて下さい」と述べた。納得した人も懐疑的に思った人もいただろう。
気掛かりなのは、その後の株価下落があまりに急だったので、納得した人が守りを固める時間があったかどうかだ。
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03-3512-1852
(2020年01月30日「基礎研レター」)
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