2019年11月11日

人口減少社会データ解説「なぜ東京都の子ども人口だけが増加するのか」(下)-女性人口を東京へ一体なにが引き寄せるのか

生活研究部 人口動態シニアリサーチャー   天野 馨南子

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はじめに-少子化なのに20年以上子どもが増え続ける「多子化エリア」へ変貌した東京都

当シリーズでは、東京都において子どもが増え続けている実態とその原因をレポートしている。

これまで2回にわたってデータ分析結果を紹介した。

(上)では、「少子化指標の象徴」とされてきた出生率では圧倒的な低さの全国最下位で推移している東京都が、2015年国勢調査を基にした人口推計において、2045年人口が2015年人口の100%を超える「将来人口維持エリア」に47都道府県中、唯一転じたことを示した。また、それは単なる社会流入だけによる人口維持ではなく、子ども人口を近年大きく増加させることによって達成されていることも示した。

ポイントは東京都においては近年、「少子化問題はない」。

このことは、「少子化指標の象徴」とされてきた出生率だけで考えるならば、ありえない話になる。出生率を横にらみして脱少子化を競う考え方では、エリアの少子化問題は解決しない。このことを、2005年から2015年の10年間の「47都道府県の子ども人口増減と平均出生率の相関分析結果」において、『両者の間に相関なし』という分析結果が得られたことによって示した。

(中)では、一体何が47都道府県それぞれの子どもの数の増減に強い関係性を持っているかについて、合計特殊出生率の計算式にそもそも含まれるもう1つの要因である母親候補人口を用いた分析結果で示した。

そもそも、子ども人口は出生率だけで決まるわけではない。

統計計算の手法説明は省略するが、15歳から49歳の女性人口と出生率、この2つの変数から子ども人口は算出することができる。しかしながら、都道府県の子ども人口の増減と平均出生率の間には相関がないことが判明したことから、もう1つの変数である「女性人口」に注目することになる。そこで、もともとのエリアの女性人口規模が大きければ子どもが多いのは当たり前となるため、もともとの規模ではなく、10年間の47都道府県における女性人口の「社会純増減」と子ども人口の増減の関係性を分析した。そして『両者の間には強い相関がある』との分析結果となった。
 
以上、(上)(中)をまとめると、現在の日本においては、日本全体とは別問題として、47都道府県の子ども増減を決定している要因は出生率ではないことが明確となり、むしろ母親候補の社会増減が決定要因である、ということになる。
 
以上を実数ベースの推移でも確認してみたい。
【図表1】東京都における0~14歳子ども人口の推移
東京都の子ども人口が増加に転じたのは、国勢調査でみると2000年からとなる(図表1)。ちょうど東京都への女性の社会人口流出入が純減から純増に転じた時期(1996年:図表2)から数年での増加、というタイムラグである。

1997年に実施された国の調査によると、夫婦の当時の結婚までの交際期間が平均3.37年1となっているため、東京都に1996年以降流入超過し始めた若い男女の一部が、この交際期間を経て結婚し、1~2年で出産にいたるあたりと、子ども人口が増加に転じたスタート地点の2000年国勢調査の時期とが丁度、綺麗に重なってくる。

相関分析の結果からも、実数ベースでの推移を見ても、東京都の子ども人口の増加がいかに「東京都への地方女性の社会流入によって支えられているか」がわかる。
【図表2】東京都における人口の男女別流出入人口差の推移(1986年から2018年)
 
1 社会保障・人口問題研究所「第11回 出生動向基本調査」
 

1――2018年の「女性人口は何を誘引として動いたのか」

1――2018年の「女性人口は何を誘因として動いたのか」

(中)では、女性人口の社会移動によって東京都に2005年から2015年の10年間に、実に37万人を超える女性人口が社会移動だけで増加したことを示した。

この人口規模は長野県の県庁所在地である長野市の現在の男女合わせた人口規模に匹敵する。では、一体、これらの男性を上回る女性人口の東京都への移動は何を誘因として起こっているのだろうか。
1-1 分析の前提 (解釈上の注意)
 直近の女性人口移動である2018年の年間女性純増減データと、その移動に影響したであろうと考えられる2018年以前の社会統計的に代表的な指標データとの相関関係をみてみることとしたい。
 
移動要因を探る指標には、総務省の「社会生活統計指標 2019(社会・人口統計体系)」を使用した。同指標は人口・世帯、自然環境、経済基盤、行政基盤、教育、労働、居住、健康・医療、福祉・社会保障などに分かれている。
 
しかしながら、

・東京都の流出入を含め、社会移動が20代男女(4割超)に集中している
・平均初婚年齢が上昇を続け、女性29歳 男性31歳であり、第1子平均出産年齢も女性31歳、男性33歳である(2017年)
・2018年/女性人口の社会純増のうち92%が東京、神奈川、埼玉、千葉にて発生2

ことから、「20代前半後半で多く移動する独身の男女」が、現在の東京一極集中のマジョリティグループを形成していると見受けられる。

よって、社会統計指標のうち、特に独身20代にて発生している人口移動の多くが関与すると考えられるエリアの「労働」指標と、女性人口の2018年の社会増減との相関関係を本レポートでは取り上げることとする。

また、労働指標に関して人口増減との相関をみる場合、労働者の受け皿規模(実数)がそもそも大きいところに労働者需要を求めて労働人口が流れるのは当然であるので、受け入れに関する実数(規模)指標との相関はみない。実数を元に算出した「比率」との相関を重視する。

例えば、あるエリアの女性労働人口の母数と女性社会移動増減の関係性ではなく、「女性労働人口割合」との関係性をみる、などである。
 
2 20代独身男女の社会移動がマジョリティである、という前提を見失うと、関東以外の地方部での移住政策は奏功しない。
「移住=子育て世帯誘致」という関東(しかも千葉、埼玉、神奈川、という東京隣接関東)で奏功している関東型(女性純増エリア型)移住施策に目を奪われ、東京都から離れた「そもそも女性流出の激しい前提」のまま地方部が「子育て世帯誘致」を掲げても、その効果は関東に比べて大きく低くなる。
1-2 社会生活統計指標と女性人口移動数の相関結果
女性人口が何を誘因として、もしくは何と強い関係をもっているか相関分析を行なったところ、0.7以上の強い相関を見せた指標が3つあった。

各指標は、国によって測定した直近3年分が掲載されているが、指標によってある特定の年だけ女性の社会増減に強い関係をもつ1指標と、すべての測定年で強い関係をもった2指標にわかれた。
 
全ての調査年においての指標3と2018年の女性社会人口移動が強い相関をもった指標については、2018年における女性の社会移動に、その指標の状況が継続的にかなり強く関係していたことが予想される。
【図表3】2018年の各都道府県の女性の社会移動純増減と社会生活統計指標「労働」項目との関係性
 
3 直近の人口の移動が、そのまま直近測定年だけの労働指標の影響をうけるとは限らないため、測定年3年間にわたる「労働指標のトレンド」との関係も見ている。
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生活研究部   人口動態シニアリサーチャー

天野 馨南子 (あまの かなこ)

研究・専門分野
人口動態に関する諸問題-(特に)少子化対策・東京一極集中・女性活躍推進

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