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- 2019・2020年度経済見通し-19年4-6月期GDP2次速報後改定
2019年09月09日
1. 2019年4-6月期は前期比年率1.3%へ下方修正
9/9に内閣府が公表した2019年4-6月期の実質GDP(2次速報値)は前期比0.3%(年率1.3%)となり、1次速報の前期比0.4%(年率1.8%)から下方修正された。公的固定資本形成(前期比1.0%→同1.8%)、政府消費(前期比0.9%→同1.2%)は上方修正されたが、4-6月期の法人企業統計の結果が反映されたことにより、設備投資が前期比1.5%から同0.2%へ大幅に下方修正されたことが成長率の下振れにつながった。その他の需要項目では、住宅投資(前期比0.2%→同0.1%)が下方修正される一方、民間在庫変動(前期比・寄与度▲0.1%→同▲0.0%)が上方修正された。
2019年4-6月期の2次速報と同時に2019年1-3月期以前の成長率が遡及改定され、2019年1-3月期の実質GDPは前期比年率2.8%から同2.2%へと下方修正された。基礎統計の改定や季節調整のかけ直しによって民間消費が前期比0.1%から同▲0.0%へ、設備投資が前期比0.4%から同▲0.2%へと下方修正された。この結果、2019年4-6月期の実質GDPの水準は1次速報時点から▲0.2%低下した。
2019年4-6月期の実質GDP成長率は下方修正されたものの、外需の悪化を堅調な国内需要がカバーするという構図に変わりはない。ただ、1次速報時に指摘したとおり、鉱工業生産、景気動向指数、企業や家計の景況感など他の景気関連指標に比べて、2019年入り後のGDPはやや強すぎる印象がある。景気の基調はGDP統計が示すほど強くないと考えるのが妥当だろう。
2019年4-6月期の2次速報と同時に2019年1-3月期以前の成長率が遡及改定され、2019年1-3月期の実質GDPは前期比年率2.8%から同2.2%へと下方修正された。基礎統計の改定や季節調整のかけ直しによって民間消費が前期比0.1%から同▲0.0%へ、設備投資が前期比0.4%から同▲0.2%へと下方修正された。この結果、2019年4-6月期の実質GDPの水準は1次速報時点から▲0.2%低下した。
2019年4-6月期の実質GDP成長率は下方修正されたものの、外需の悪化を堅調な国内需要がカバーするという構図に変わりはない。ただ、1次速報時に指摘したとおり、鉱工業生産、景気動向指数、企業や家計の景況感など他の景気関連指標に比べて、2019年入り後のGDPはやや強すぎる印象がある。景気の基調はGDP統計が示すほど強くないと考えるのが妥当だろう。
(製造業の悪化が鮮明に)
9/2に財務省から公表された法人企業統計では、2019年4-6月期の全産業(金融業、保険業を除く、以下同じ)の経常利益が前年比▲12.0%(2019年4-6月期:同10.3%)と2四半期ぶりの減少となった。製造業が前年比▲27.9%(1-3月期:同▲6.3%)と4四半期連続で減少し、減少幅が大きく拡大したことに加え、非製造業が前年比▲1.5%(1-3月期:同18.4%)と2四半期ぶりに減少した。製造業の経常利益(季節調整値)は2018年4-6月期のピーク時から3割以上落ち込んでいる。
9/2に財務省から公表された法人企業統計では、2019年4-6月期の全産業(金融業、保険業を除く、以下同じ)の経常利益が前年比▲12.0%(2019年4-6月期:同10.3%)と2四半期ぶりの減少となった。製造業が前年比▲27.9%(1-3月期:同▲6.3%)と4四半期連続で減少し、減少幅が大きく拡大したことに加え、非製造業が前年比▲1.5%(1-3月期:同18.4%)と2四半期ぶりに減少した。製造業の経常利益(季節調整値)は2018年4-6月期のピーク時から3割以上落ち込んでいる。
設備投資(ソフトウェアを含む)は前年比1.9%と11四半期連続で増加したが、1-3月期の同6.1%から伸びが低下した。非製造業は前年比7.0%と1-3月期の同5.0%から伸びを高めたが、製造業が前年比▲6.9%(1-3月期:同8.5%)と8四半期ぶりに減少した。
非製造業は、国内需要の底堅さを背景に企業収益が高水準を維持していることから、設備投資も増加が続いているが、製造業は輸出の減少に伴う企業収益の悪化を反映し、設備投資の減少基調が鮮明となっている。
4-6月期のソフトウェア投資が前年比43.7%の大幅増加となったことが示すように、人手不足対応の省力化投資など景気循環に左右されにくい需要は引き続き旺盛であるため、設備投資が大崩れする可能性は低いとみられる。ただし、米中貿易摩擦の激化などもあり輸出の回復が当分見込めない中、製造業の収益、設備投資は先行きも悪化傾向が続くことが予想される。
非製造業は、国内需要の底堅さを背景に企業収益が高水準を維持していることから、設備投資も増加が続いているが、製造業は輸出の減少に伴う企業収益の悪化を反映し、設備投資の減少基調が鮮明となっている。
4-6月期のソフトウェア投資が前年比43.7%の大幅増加となったことが示すように、人手不足対応の省力化投資など景気循環に左右されにくい需要は引き続き旺盛であるため、設備投資が大崩れする可能性は低いとみられる。ただし、米中貿易摩擦の激化などもあり輸出の回復が当分見込めない中、製造業の収益、設備投資は先行きも悪化傾向が続くことが予想される。
2. 実質成長率は2019年度0.6%、2020年度0.7%
2019年4-6月期のGDP1次速報後に公表された2019年7月の経済指標を確認すると、低迷が続いている輸出、生産はやや持ち直したが、消費関連指標は、賃金の伸び悩み、消費者マインドの悪化が続く中、長梅雨、低温の悪影響もあり総じて弱い結果となった。日本銀行作成の実質消費活動指数(旅行収支調整済)は2019年4-6月期に前期比1.0%となった後、7月は前月比▲2.4%の大幅低下となった。7月の水準は4-6月期を▲2.4%下回っている。
消費増税直前の9月には日用品を中心に駆け込み需要の発生が見込まれるため、7-9月期の民間消費は前期比プラスを確保することが予想される。ただし、軽減税率の導入、キャッシュレス決済に対するポイント還元などによって駆け込み需要の規模が抑えられることに加え、駆け込み需要を除いた消費の基調が弱いことから、前回増税前(2014年1-3月期:前期比2.0%)を大きく下回る伸びにとどまる公算が大きい(現時点では前期比0.8%を予想)。2019年7-9月期の実質GDPは前期比年率0.4%と4-6月期の同1.3%から減速し、前回増税前の成長率(2014年1-3月期:前期比年率3.9%)を大きく下回るだろう。
消費増税直後の2019年10-12月期は、前回増税時よりは小さいものの一定の反動減が発生すること、税率引き上げに伴う物価上昇によって実質所得が低下することから、民間消費が前期比▲1.9%の減少となり、実質GDPは前期比年率▲2.6%のマイナス成長となることが予想される。
2019年10月の消費増税は前回の増税時(2014年4月)に比べれば経済への悪影響は小さくなることが見込まれるが、民間消費を中心に国内需要が一定程度落ち込むことは避けられない。現時点では、グローバルなITサイクルの調整が2019年末までに終了し、日本の輸出も情報関連財を中心に2019年度末にかけて持ち直すことを見込んでいる。ただし、ITサイクルの底打ち時期については不確実性が高いこと、米中貿易摩擦の激化により世界の貿易取引がさらに縮小する可能性があることなどから、輸出の低迷は長期化するリスクがある。輸出の回復が遅れれば、2019年度後半の日本経済は内外需ともに悪化し景気の牽引役を失う恐れがある。
2020年度は東京オリンピック・パラリンピックが開催される7-9月期までは高めの成長となるが、オリンピック終了後の2020年度後半は、押し上げ効果の剥落から景気の停滞色が強まることは避けられない。消費増税対策の効果一巡がオリンピック終了と重なることで、景気の落ち込みを増幅するリスクがあることには注意が必要だろう。特に、キャッシュレス決済時のポイント還元については、制度終了(2020年6月)前後に駆け込み需要と反動減が発生する可能性がある。
消費増税直前の9月には日用品を中心に駆け込み需要の発生が見込まれるため、7-9月期の民間消費は前期比プラスを確保することが予想される。ただし、軽減税率の導入、キャッシュレス決済に対するポイント還元などによって駆け込み需要の規模が抑えられることに加え、駆け込み需要を除いた消費の基調が弱いことから、前回増税前(2014年1-3月期:前期比2.0%)を大きく下回る伸びにとどまる公算が大きい(現時点では前期比0.8%を予想)。2019年7-9月期の実質GDPは前期比年率0.4%と4-6月期の同1.3%から減速し、前回増税前の成長率(2014年1-3月期:前期比年率3.9%)を大きく下回るだろう。
消費増税直後の2019年10-12月期は、前回増税時よりは小さいものの一定の反動減が発生すること、税率引き上げに伴う物価上昇によって実質所得が低下することから、民間消費が前期比▲1.9%の減少となり、実質GDPは前期比年率▲2.6%のマイナス成長となることが予想される。
2019年10月の消費増税は前回の増税時(2014年4月)に比べれば経済への悪影響は小さくなることが見込まれるが、民間消費を中心に国内需要が一定程度落ち込むことは避けられない。現時点では、グローバルなITサイクルの調整が2019年末までに終了し、日本の輸出も情報関連財を中心に2019年度末にかけて持ち直すことを見込んでいる。ただし、ITサイクルの底打ち時期については不確実性が高いこと、米中貿易摩擦の激化により世界の貿易取引がさらに縮小する可能性があることなどから、輸出の低迷は長期化するリスクがある。輸出の回復が遅れれば、2019年度後半の日本経済は内外需ともに悪化し景気の牽引役を失う恐れがある。
2020年度は東京オリンピック・パラリンピックが開催される7-9月期までは高めの成長となるが、オリンピック終了後の2020年度後半は、押し上げ効果の剥落から景気の停滞色が強まることは避けられない。消費増税対策の効果一巡がオリンピック終了と重なることで、景気の落ち込みを増幅するリスクがあることには注意が必要だろう。特に、キャッシュレス決済時のポイント還元については、制度終了(2020年6月)前後に駆け込み需要と反動減が発生する可能性がある。
(物価の見通し)
消費者物価(生鮮食品を除く総合、以下コアCPI)上昇率は、エネルギー価格の上昇幅縮小を主因として鈍化傾向が続いている。エネルギー価格の上昇率は2018年10月の前年比8.9%をピークに2019年7月には同0.6%まで縮小したが、8月に2017年1月以来のマイナスとなった後、2019年末にかけてマイナス幅が拡大することが見込まれる。
外食、食料品を中心に原材料費、物流費、人件費などのコスト増を価格転嫁する動きが見られること、上昇品目数が増加していることなどを踏まえれば、物価の基調がここにきて弱まっているわけではないが、エネルギー価格下落の影響を打ち消すほどの強さはない。コアCPI上昇率は消費税率引き上げ前の9月にはゼロ%台前半まで鈍化する可能性が高い。
消費者物価(生鮮食品を除く総合、以下コアCPI)上昇率は、エネルギー価格の上昇幅縮小を主因として鈍化傾向が続いている。エネルギー価格の上昇率は2018年10月の前年比8.9%をピークに2019年7月には同0.6%まで縮小したが、8月に2017年1月以来のマイナスとなった後、2019年末にかけてマイナス幅が拡大することが見込まれる。
外食、食料品を中心に原材料費、物流費、人件費などのコスト増を価格転嫁する動きが見られること、上昇品目数が増加していることなどを踏まえれば、物価の基調がここにきて弱まっているわけではないが、エネルギー価格下落の影響を打ち消すほどの強さはない。コアCPI上昇率は消費税率引き上げ前の9月にはゼロ%台前半まで鈍化する可能性が高い。
2019年10月以降のコアCPI上昇率は、消費税率引き上げによって1%ポイント程度押し上げられる(ただし、電気代、ガス代、通信料(固定電話、携帯電話)などは新税率の適用が11月以降となる)一方、幼児教育無償化によって▲0.6%ポイント程度押し下げられる。これらの制度変更要因も含めたコアCPI上昇率は10月以降も1%を下回る水準で推移することが予想される。
また、前回増税時に比べると落ち込み幅は小さくなるものの、消費増税後に個人消費が一定程度減少することは避けられない。需給面からの物価上昇圧力が弱まることにより、物価は当面低空飛行を続けることが予想される。
コアCPI上昇率は2019年度が前年比0.6%、2020年度が同0.5%、消費税率引き上げ・教育無償化の影響を除くベースでは2019年度が前年比0.4%、2020年度が同0.4%と予想する。
また、前回増税時に比べると落ち込み幅は小さくなるものの、消費増税後に個人消費が一定程度減少することは避けられない。需給面からの物価上昇圧力が弱まることにより、物価は当面低空飛行を続けることが予想される。
コアCPI上昇率は2019年度が前年比0.6%、2020年度が同0.5%、消費税率引き上げ・教育無償化の影響を除くベースでは2019年度が前年比0.4%、2020年度が同0.4%と予想する。
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経歴
- ・ 1992年:日本生命保険相互会社
・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
・ 2019年8月より現職
・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
・ 2018年~ 統計委員会専門委員
(2019年09月09日「Weekly エコノミスト・レター」)
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