2019年08月13日

認知症大綱で何が変わるのか-予防重視の弊害、共生社会の実現に向けた課題を考え

保険研究部 上席研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任 三原 岳

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参考:認知症大綱に盛り込まれた施策とKPI

本文では触れなかった部分を含めて、認知症大綱に盛り込まれた施策とKPIを以下で挙げる。
 
  1. 普及啓発・本人発信支援
  • 企業・職域型の認知症サポーター養成数400万人(認知症サポーター養成数1,200万人、2020年度)
  • 学び(社会教育施設での講座の受講等)を通じた地域社会への参画モデルの提示
  • 毎年、継続して表彰された小・中・高校生認知症サポーターの創作作品等を周知
  • 医療・介護従事者向けの認知症に関する各種研修における意思決定支援に関するプログラムの導入率100%
  • 自治体における、事前に本人の意思表明を確認する取組の実施率50%
  • 世界アルツハイマーデー及び月間における普及・啓発イベント等の開催
  • 厚生労働省老健局総務課認知症施策推進室のSNSを活用し、普及・啓発にかかる情報を発信
  • 広報紙やホームページ等により、認知症に関する相談窓口の周知を行っている市町村100%
  • 厚生労働省ホームページに全市町村の認知症に関する相談窓口へのリンクを掲載
  • 認知症の相談窓口について、関係者の認知度2割増加、住民の認知度1割増加
  • 市町村における「認知症ケアパス」作成率100%
  • 各市町村で構築される権利擁護支援の地域ネットワークにおける、法テラスの法的支援制度の円滑利用
  • 認知症本人大使(希望宣言大使、仮称)の創設
  • 全都道府県においてキャラバン・メイト大使(仮称)の設置
  • 毎年、世界アルツハイマーデー及び月間における総合的かつ集中的な普及・啓発イベント等を開催
  • 全都道府県においてピアサポーターによる本人支援を実施
  • 全市町村において本人の意見を重視した施策の展開
 
  1. 予防
  • 介護予防に資する通いの場への参加率を8%程度に高める
  • 成人の週1回以上のスポーツ実施率を65%程度に高める
  • 学び(社会教育施設での講座の受講等)を通じた地域社会への参画モデルの提示
  • 認知症予防に関する取組の事例集作成
  • 認知症予防に関する取組の実践に向けたガイドラインの作成
  • 認知症予防に関するエビデンスを整理した活動の手引きの作成
  • 介護保険総合データベースやCHASEによりデータを収集・分析し、科学的に自立支援や認知症予防等の効果が裏付けられたサービスを国民に提示
  • 認知機能低下の抑制に関する機器・サービスの評価指標・手法の策定
 
  1. 医療・ケア・介護サービス・介護者への支援
  • 認知症地域支援推進員の先進的な活動の横展開
  • 全認知症地域支援推進員が新任者・現任者研修を受講
  • 「患者のための薬局ビジョン」において示す、かかりつけ薬剤師としての役割を発揮できる薬剤師を配置している薬局数70%
  • 認知症初期集中支援チームの先進的な活動事例集作成
  • 初期集中支援チームにおける訪問実人数全国で年間40,000件、医療・介護サービスにつながった者の割合65%
  • 認知症疾患医療センター設置数を全国で 500カ所、2次医療圏ごとに1カ所以上(2020年度末)
  • 市町村における認知症に関する相談窓口の掲載100%
  • 市町村における「認知症ケアパス」作成率100%
  • 医療従事者に対する認知症対応力向上研修受講者数
    • かかりつけ医9万人
    • 認知症サポート医1.6万人
    • 歯科医師 4万人
    • 薬剤師6万人
    • 一般病院勤務の医療従事者30 万人
    • 看護師等(病院勤務)4万人
    • 看護師等(診療所・訪問看護ステーション・介護事業所等)実態把握を踏まえて検討
  • 介護人材確保の目標値(2025年度末に245万人確保)
  • 介護従事者に対する認知症対応力向上研修受講者数(2020年度末)
    • 認知症介護指導者養成研修2.8千人
    • 認知症介護実践リーダー研修5万人
    • 認知症介護実践者研修 30万人
    • 認知症介護基礎研修介護に関わる全ての者が受講
  • BPSD予防に関するガイドラインや治療指針の作成・周知
  • 認知症対応プログラムの開発
  • 患者・入所者の状態に応じた認知症リハビリテーションの開発・体系化
  • 認知症リハビリテーションの事例収集及び効果検証
  • 医療・介護従事者向けの認知症に関する各種研修における、意思決定支援に関するプログラムの導入率100%
  • 仕事と介護を両立しやすい環境整備に取り組む事業主を支援し、介護休業等を取得しやすくすることにより、介護離職の防止を推進
  • 認知症カフェを全市町村に普及(2020年度末)
  • BPSD予防のための、家族・介護者対象のオンライン教育プログラムの開発、効果検証
 
  1. 認知症バリアフリーの推進・若年性認知症の人への支援・社会参加支援
  • バリアフリー法に基づく基本方針における整備目標の達成(2020年度末)
  • 地域公共交通活性化再生法に基づく、地域公共交通網形成計画の策定件数500件
  • 全国各地での自動運転移動サービスの実現
  • 高齢者人口に対する高齢者向け住宅の割合4%
  • 住宅確保要配慮者の入居を拒まない賃貸住宅の登録戸数17.5万戸(2020年度末)
  • 全市町村で、本人・家族のニーズと認知症サポーターを中心とした支援を繋ぐ仕組み(チームオレンジなど)を整備
  • 居住支援協議会に参画する市区町村及び自ら設立する市区町村の合計が全体の80%(2020年度末)
  • 市町村の圏域を越えても対応できる見守りネットワークを構築
  • 全都道府県でヘルプカード等のツールを活用
  • 認知症バリアフリー宣言件数・認証制度応募件数・認証件数(認知症バリアフリー宣言、認証制度の仕組みの検討結果を踏まえて検討)
  • 消費者志向経営優良事例表彰の実施状況
  • 本人の意見を踏まえた商品・サービスの登録件数(本人の意見を踏まえ開発された商品・サービスの登録制度に関する検討結果を踏まえて設定)
  • 地域の実情に応じた食料品アクセス環境の改善(対策を必要とする地域における取組の実施割合)
  • 買い物しやすい環境整備(買い物しやすい環境整備に関する検討結果を踏まえ、必要に応じて設定)
  • 全預金取扱金融機関の個人預金残高に占める後見制度支援預金又は後見制度支援信託を導入済とする金融機関の個人預金残高の割合50%以上(2021年度末)
  • 成年後見制度の利用促進について(2021年度末)
    • 中核機関を整備した市区町村数=全1,741市区町村
    • 中核機関においてパンフレット等による成年後見制度や相談窓口の周知を行っている市区町村数=全1,741市区町村
    • 中核機関において後見人候補者を推薦する取組を行っている市区町村数=800市区町村
    • ・中核機関において後見人支援の取組(専門職の雇い上げ等により相談や手続支援を実施)を行っている市区町村数=200市区町村
    • 協議会等の合議体を設置した市区町村数=全1,741市区町村
    • 市町村計画を策定した市区町村数=全1,741市区町村数
    • 国研修を受講した中核機関職員や市区町村職員等の数=3,500人
    • 後見人等向けの意思決定支援研修が実施される都道府県の数=全47都道府県
  • 人口5万人以上の全ての市町において、消費者安全確保地域協議会の設置
  • 消費者被害に関する注意喚起の継続的な実施
  • 認知症の発症に備える民間の認知症保険を販売している保険会社の数
  • 認知症の人及びその監督義務者等を被保険者とする民間の損害賠償責任保険を販売している保険会社の数
  • 全若年性認知症支援コーディネーターが初任者研修・フォローアップ研修を受講
  • 全国若年性認知症支援センターがコーディネーターから受ける相談件数の増加
  • 若年性認知症の有病率・実態把握
  • 学び(社会教育施設での講座の受講等)を通じた地域社会への参画モデルの提示
  • 認知症地域支援推進員の活動状況を全国に横展開
 
  1. 研究開発・産業促進・国際展開
  • 認知症のバイオマーカーの開発・確立(POC取得3件以上)
  • 認知機能低下抑制のための技術・サービス・機器等の評価指標の確立
  • 日本発の認知症の疾患修飾薬候補の治験開始
  • 認知症の予防・治療法開発に資するデータベースの構築と実用化
  • 薬剤治験に即刻対応できるコホートを構築
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保険研究部   上席研究員・ヘルスケアリサーチセンター・ジェロントロジー推進室兼任

三原 岳 (みはら たかし)

研究・専門分野
医療・介護・福祉、政策過程論

経歴
  • プロフィール
    【職歴】
     1995年4月~ 時事通信社
     2011年4月~ 東京財団研究員
     2017年10月~ ニッセイ基礎研究所
     2023年7月から現職

    【加入団体等】
    ・社会政策学会
    ・日本財政学会
    ・日本地方財政学会
    ・自治体学会
    ・日本ケアマネジメント学会

    【講演等】
    ・経団連、経済同友会、日本商工会議所、財政制度等審議会、日本医師会、連合など多数
    ・藤田医科大学を中心とする厚生労働省の市町村人材育成プログラムの講師(2020年度~)

    【主な著書・寄稿など】
    ・『必携自治体職員ハンドブック』公職研(2021年5月、共著)
    ・『地域医療は再生するか』医薬経済社(2020年11月)
    ・『医薬経済』に『現場が望む社会保障制度』を連載中(毎月)
    ・「障害者政策の変容と差別解消法の意義」「合理的配慮の考え方と決定過程」日本聴覚障害学生高等教育支援ネットワーク編『トピック別 聴覚障害学生支援ガイド』(2017年3月、共著)
    ・「介護報酬複雑化の過程と問題点」『社会政策』(通巻第20号、2015年7月)ほか多数

(2019年08月13日「基礎研レポート」)

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