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2019年08月08日
1――はじめに
米中の対立が泥沼化の様相を呈してきた。中東や朝鮮半島情勢など地政学リスク、イギリスがEUから強行離脱する可能性も高まっている。世界経済が混迷を深めるかもしれない状況でも、しっかりと稼ぐ「貿易摩擦に負けない企業」を探る。
2――互いに譲らないアメリカと中国
追い打ちをかけたのが中国側の対応だ。8月5日、これまで中国当局が「防衛ライン」と位置づけていたはずの1ドル=7元を下回る人民元安を事実上容認したうえ、8月6日には「アメリカからの農産品の購入を一時停止する」と発表した。しかも農産品の購入停止はトランプ氏が第4弾発動を表明したことへの「報復措置」としている。
アメリカも応酬を続ける。中国が意図的に通貨安を誘導しているとして、25年ぶりに「為替操作国」に指定した。市場の警戒モードは一気に高まり、8月5日のNYダウは今年最大の下げ幅となる767ドル安を記録して節目の2万6,000ドル割れ、6日の日経平均は一時600円超下落して2万円割れ寸前となった。
来年の大統領選まで残り1年余りとなり、成果を急ぐため政治的ポイント稼ぎに走るトランプ氏と、人民元安で自国の輸出を支えつつ、長期戦に持ち込んだほうが得策と考えているとみられる中国側の隔たりは大きい。6月末のG20大阪サミットに合わせて開かれた米中首脳会談で“一時停戦”を合意した両者であったが、米中貿易摩擦の“落とし所”は再び見えなくなった。
アメリカも応酬を続ける。中国が意図的に通貨安を誘導しているとして、25年ぶりに「為替操作国」に指定した。市場の警戒モードは一気に高まり、8月5日のNYダウは今年最大の下げ幅となる767ドル安を記録して節目の2万6,000ドル割れ、6日の日経平均は一時600円超下落して2万円割れ寸前となった。
来年の大統領選まで残り1年余りとなり、成果を急ぐため政治的ポイント稼ぎに走るトランプ氏と、人民元安で自国の輸出を支えつつ、長期戦に持ち込んだほうが得策と考えているとみられる中国側の隔たりは大きい。6月末のG20大阪サミットに合わせて開かれた米中首脳会談で“一時停戦”を合意した両者であったが、米中貿易摩擦の“落とし所”は再び見えなくなった。
3――日本企業の業績にも打撃
特に、鉄鋼・非鉄、機械、電機・精密など米中貿易摩擦の影響を受けやすい業種は軒並み20%を超える減益だ。受注・販売環境の悪化に円高の影響も重なり、2018年度第1四半期と比べて利益が半分以下に減ったり、赤字に陥った企業も少なくない。
その結果、経常利益の進捗率(通期会社予想に対する第1四半期実績)も20%程度にとどまっている。季節性や景気の変動があるので一概には言えないものの、第1四半期時点では1年を4期に分けて25%程度が目安となるのに対して大幅未達の状況だ。第2四半期に業績が回復しないと、中間決算の時点で通期見通しの下方修正を余儀なくされるかもしれない。
その結果、経常利益の進捗率(通期会社予想に対する第1四半期実績)も20%程度にとどまっている。季節性や景気の変動があるので一概には言えないものの、第1四半期時点では1年を4期に分けて25%程度が目安となるのに対して大幅未達の状況だ。第2四半期に業績が回復しないと、中間決算の時点で通期見通しの下方修正を余儀なくされるかもしれない。
4――利益の進捗率で株価も明暗
ここ数年は業績に勢いのある企業の株が買われる傾向がある。そこで、進捗率30%以上の企業をさらに「進捗率の前年同期比」で細分化すると、前年より進捗率が5%以上改善した企業は株価がより大きく上昇しやすい傾向がある。
一方、前年より進捗率が5%以上悪化した企業はTOPIXよりもリターンが低い。直近の進捗率は30%以上と足元の業績は堅調でも、業績拡大ペースが鈍っている可能性があるため市場がマイナスに評価したのだろう。
2018年までの3年間を思い返すと、2016年頃からアベノミクスの限界がささやかれ始めたり、2018年7月にはトランプ政権が中国からの輸入品に制裁関税の「第1弾」を発動するなど、景気や企業業績の先行き不透明感が高まった時期である。こうした経済環境でもしっかりと利益を稼ぎ、その勢いが増している企業ほど株式市場が高く評価したことは納得できる。
一方、前年より進捗率が5%以上悪化した企業はTOPIXよりもリターンが低い。直近の進捗率は30%以上と足元の業績は堅調でも、業績拡大ペースが鈍っている可能性があるため市場がマイナスに評価したのだろう。
2018年までの3年間を思い返すと、2016年頃からアベノミクスの限界がささやかれ始めたり、2018年7月にはトランプ政権が中国からの輸入品に制裁関税の「第1弾」を発動するなど、景気や企業業績の先行き不透明感が高まった時期である。こうした経済環境でもしっかりと利益を稼ぎ、その勢いが増している企業ほど株式市場が高く評価したことは納得できる。
5――貿易摩擦に負けない企業
今後、米中貿易摩擦に加えて、本格化する日米通商交渉の行方も気掛かりだ。中東や朝鮮半島情勢など地政学リスクも燻り、不透明感が強い状況が続きそうだ。こうした状況でも進捗率が良好な企業は業績の安定・拡大が期待できる「貿易摩擦に負けない企業」といえるだろう。
2019年度第1四半期の決算から「経常利益の進捗率が30%以上、かつ進捗率が前年同期比5%以上改善した企業」を機械的に抽出した59社は図表5のとおりだ。やはり食品や情報通信・サービスなど内需関連の企業が目立つが、自動車や機械など景気敏感業種の企業も一部ある。
株式投資の観点からは、これらの企業は例年以上に買い安心感が強そうだ。図表4の「第1四半期の経常利益進捗率が30%以上、かつ進捗率が前年同期比5%以上改善した企業」は2018年度に33社が該当し、うち25社は8月~10月の株価がTOPIXよりも上昇した。
25勝8敗(勝率76%)と良好な結果だが、33社のうち8社は市場がネガティブに評価した点には注意が必要だ。実際に株式投資に活用する際は、今後も利益成長を持続できそうか、業績拡大期待が既に株価に織り込まれていないか等をよく確認することが必要だ。
2019年度第1四半期の決算から「経常利益の進捗率が30%以上、かつ進捗率が前年同期比5%以上改善した企業」を機械的に抽出した59社は図表5のとおりだ。やはり食品や情報通信・サービスなど内需関連の企業が目立つが、自動車や機械など景気敏感業種の企業も一部ある。
株式投資の観点からは、これらの企業は例年以上に買い安心感が強そうだ。図表4の「第1四半期の経常利益進捗率が30%以上、かつ進捗率が前年同期比5%以上改善した企業」は2018年度に33社が該当し、うち25社は8月~10月の株価がTOPIXよりも上昇した。
25勝8敗(勝率76%)と良好な結果だが、33社のうち8社は市場がネガティブに評価した点には注意が必要だ。実際に株式投資に活用する際は、今後も利益成長を持続できそうか、業績拡大期待が既に株価に織り込まれていないか等をよく確認することが必要だ。
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(2019年08月08日「基礎研レポート」)
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