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駐車場とまちの未来-自動運転の時代に駐車場は社会に必要なインフラとなり得るか?
社会研究部 都市政策調査室長・ジェロントロジー推進室兼任 塩澤 誠一郎
1――完全自動運転の普及に伴う課題
このような社会の到来を前提にすると、今更、駐車場を議論するのは無駄と思うかもしれない。しかし、不要になる駐車場をどうするのかということと合わせて、自動運転ドックの導入を視野にいれたときに、今から、駐車場をどのように整備していくかということが、現実的にまちづくりの課題となってくる。
2――需要を超えて整備される駐車場
国土交通省の調べでは、過去約20年間で全国の駐車場台数は約2.6倍に増加した。その一方で自動車保有台数は約1.3倍にとどまっている1。東京の区部に限れば、過去10年間で駐車場台数は約1.3倍の増加であるが、自動車保有台数は0.9倍と、むしろ減少している2。
駐車場台数増加の主な要因は、附置義務である。商業地など駐車場需要が見込まれる地域において、一定規模以上の建築物に対し、敷地内に必要台数の設置を義務づけるもので、自治体が駐車場法に基づき条例で定める。年間の駐車場増加数に占める附置義務駐車場の割合は、直近10年間の平均が約72%となっており、大都市部では、建物にビルトインされた機械式駐車場が主になる。つまり、実際の駐車場需要以上に、建築需要に応じて駐車場が増えてきた可能性があるということだ。
戦後モータリゼーションの進展によって、駐車場も社会を支える施設として必要とされたが、公共による整備では需要に追いつかず、民間の建築行為の中での整備に多くをゆだねてきた。しかし、現在ではそれによって自動車保有台数の伸びを上回る勢いで駐車場が整備されている。(以上図表1、2参照)
1 1991~2013年の23年間の経過。直近では図表1のとおり、駐車場台数2.8倍、自動車保有台数1.3倍とさらに広がっている。
2 「駐車施策の最近の動向」国土交通省都市局街路交通施設課平成30年2月2日より。2006~2016年の推移。
3――駐車場が散在することの弊害
一方、地方都市では、中心市街地であっても平場の駐車場を目にすることが多い。建物を除却した後の暫定利用として駐車場にするが、相対的に建物需要が低いことから暫定といっても長期になることがしばしばある。平場の駐車場は低コスト、低リスクで運営できるため、土地所有者にとっては手っ取り早い方法だ。
しかし、中心市街地全体の活性化という点で見ると弊害が大きい。虫食い的に発生した空き地を駐車場にすることから、この場合もエリア内に駐車場が散在することになり、さらにそこにパラパラとクルマが置かれている状態になって、まちの魅力を低下させる大きな要因になる。
4――駐車場の集約化を通じたまちづくり
集約化する場所は、エリアの縁辺部がよいだろう。そこまでクルマで来て、そこからは徒歩でまちを楽しむ。そこには歩行を阻害するクルマの出入りは無く、平場の駐車場だった場所は、定期的にマルシェが催されるなど、賑わいを創出する場所として活用される。不要になった駐車場は、物資の備蓄など他の用途に利用されるようになる。
また、集約化する駐車場は、そこに物理的に存在する以上、単なる駐車場ではなく、まちの付加価値向上に貢献することが期待される。例えば、防災性を高めたり、景観やアメニティを向上させたり、低炭素化に寄与したりといったことである。
つまり、建物に付随した設備としての駐車場や暫定利用としての駐車場から、今日的な、社会に必要なインフラとしての駐車場が求められているのである。
さらに、将来の自動運転社会においては、冒頭で説明したように自動運転ドックが必要になる。自動運転ドックは、移動サービスを提供するエリアの需要に応じた量の自動運転車が待機できればよい。それ以上のスペースはいらない。この点で、集約化した駐車場と求められる機能は一致する。
したがって、今から、駐車場の集約化に取り組めば、いずれその駐車場が自動運転ドックに代替することも十分考えられる。そこまで視野に入れて駐車場の集約化に取り組めば、完全自動運転が普及した社会にあっても、必要とされるインフラとしての存在意義を示していくことができるのではないかと思うのである。
03-3512-1814
- 【職歴】
1994年 (株)住宅・都市問題研究所入社
2004年 ニッセイ基礎研究所
2020年より現職
・技術士(建設部門、都市及び地方計画)
【加入団体等】
・我孫子市都市計画審議会委員
・日本建築学会
・日本都市計画学会
(2019年06月07日「基礎研レター」)
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