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ベーシック 米国生保業界の概要(4)米国生保の負債構造-米国生命保険協会のファクトブック掲載データから-
松岡 博司
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3――その他の準備金
生命保険会社が引き受けた商品のうち、保険商品につきものの死亡リスクや疾病罹患リスクの発生率を商品設計に組み込んでいない契約は、預託型契約と呼ばれる。これらの契約に基づく給付金等の支払いは、生命保険や就業不能保険の場合のように、死亡や就業不能状態の発生状況に左右されることはなく、年金契約の場合のように生存者数に左右されることもない。
こうした要素を持つ預託型契約は、厳密には保険商品とは言い難いので、先述の通り、「保険契約準備金(責任準備金等)」の中には含まれず、「その他の準備金」の中に含まれている。また、預託型契約への現金の流入および流出は、収入または支出としては報告されない。その代わりそれらは準備金の増減として直接記録される。
各州の保険監督長官をメンバーとする全米保険監督官協会(NAIC:National Association of Insurance Commissioners)が定義している預託型契約の中には、GIC、生命関係の偶発債務のない補足契約、特定の年金、保険料その他の預託基金、積立配当・クーポン、宝くじ払い、ストラクチャードセツルメント(年金型払い型の賠償金支払い契約)が含まれる。
2017年中では、2,042億ドルがこれら預託型契約に預け入れられ、1,990億ドルが引き出し回収された。2017年末時点の預託型契約の準備金総額は5,304億ドルである。
「その他の準備金」の中には、保有する投資資産から生じる利益と損失を吸収し、資産変動の影響をなだらかにするための2つの法定準備金が含まれている。
「資産評価準備金(AVR:Asset Valuation Reserve)」は、確定利付き資産(主に債券)の貸し倒れ関連損失を計上するデフォルト構成要素と、あらゆる種類のエクイティ投資(主に株式)を対象とするエクイティ構成要素から構成されている。
「金利維持準備金(IMR)」は、確定利付資産の、金利変動に伴う価格変動による実現売却損益をすべて取得し、売却された投資資産の本来の残存期間にわたって、これらの損益を分割計上しインカム収益として償却していく。
2017年の米国生保業界のAVR総額は574億ドル、IMR総額は253億ドルであった。
米国生保業界の「その他の負債」には、保険契約等の支払事由が発生しており翌期に支払うことが確定している金額、翌年の保険契約者配当支払いのために積立てられた金額、保険契約者に直接配分できない費用に対する負債、前払いされた預託保険料などが含まれている。
4――自己資本比率とRBC比率
米国生保業界で生保会社の健全性を示す尺度の1つとして扱われる自己資本比率は純資産額とAVRを合算したものを一般勘定資産額で割り算することで求められる。分離勘定を加えた総資産の額で割り算するわけではない点はご注意いただきたい。理屈上は、自己資本比率が高ければ高いほど、生保会社が不利な投資成果や契約者の死亡状況に耐えることができることになるが、保険会社の種類やその事業種目の分布等によっては、会社間の比較や業界平均との比較の意味がなくなる。2017年の米国の生命保険会社全体の自己資本比率は10.6%であった。
RBC比率は、生命保険監督当局により創出されたもので、わが国生保業界におけるソルベンシーマージン比率のモデルとも言えるものである。RBC比率は、生保会社が負っている各種のリスクの総額と自己資本額を計算し、自己資本額がリスク総額の何%にあたるかを計算して得られる比率である。リスクベースの自己資本額が各生保会社が抱えているリスク総額と同じだけあればRBC比率は100%となる。RBC比率が100%あれば、その生保会社は健全性ありとして、監督当局による行政介入措置の開始を回避することができる。
米国生保会社がRBC比率の報告を開始した1993年以降、生保業界の平均RBC比率は着実に上昇し、今日では400%台を維持している(図表7)。また行政介入のしきい値である100%の2倍、200%を超えるRBC比率の会社が、社数ベースで95%を占めている。さらに、RBC比率が200%を超える生保会社の資産合計は生保業界全体の総資産の99.3パーセントを占めている。
このように米国生保業界の健全性は、良好な状態が続いている。
さいごに
今後も継続的に「ファクトブック」を材料とした米国生保の概況紹介を行って行くこととしたい。
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(2019年05月14日「保険・年金フォーカス」)
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