2019年04月26日

2019年1-3月期の実質GDP~前期比▲0.0%(年率▲0.2%)を予測~

経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎

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●1-3月期は年率▲0.2%を予測~2四半期ぶりのマイナス成長~

2019年1-3月期の実質GDPは、前期比▲0.0%(前期比年率▲0.2%)と2四半期ぶりのマイナス成長になったと推計される1

海外経済の減速を背景に輸出は前期比▲1.8%の減少となったが、輸入が前期比▲3.5%と輸出以上に落ち込んだため、外需寄与度は前期比0.3%(年率1.3%)と4四半期ぶりに成長率の押し上げ要因となった。一方、公的固定資本形成は7四半期ぶりに増加したものの、民間消費が前期比▲0.1%の減少、好調が続いていた設備投資が企業収益の悪化を受けて前期比▲1.8%と大きく落ち込んだことから、国内需要のマイナスが外需のプラスを打ち消す形となった。

実質GDP成長率への寄与度(前期比)は、国内需要が▲0.4%(うち民需▲0.4%、公需0.0%)、外需が0.3%と予測する。
 
名目GDPは前期比0.4%(前期比年率1.7%)と2四連続の増加となり、実質の伸びを上回るだろう。GDPデフレーターは前期比0.5%(10-12月期:同▲0.1%)、前年比0.3%(10-12月期:同▲0.3%)と予測する。国内需要デフレーターは前期比▲0.1%の低下となったが、輸入デフレーター(前期比▲4.1%)が輸出デフレーター(同▲1.1%)以上に低下したことがGDPデフレーターを押し上げた。
 
なお、5/20に内閣府から2019年1-3月期のGDP速報が発表される際には、基礎統計の改定や季節調整のかけ直しなどから、成長率が過去に遡って改定される。当研究所では、2018年10-12月期の実質GDP成長率は前期比年率1.9%から同1.5%へ下方修正されると予測している。この結果、2018年度の実質GDP成長率は0.5%(2017年度は1.9%)、名目GDP成長率は0.4%(2017年度は2.0%)となることが見込まれる。
 
実質GDPは2016年1-3月期から8四半期連続でプラス成長となった後、2018年1-3月期からはマイナス成長とプラス成長を繰り返している。2019年1-3月期のマイナス幅は2018年1-3月期、7-9月期よりも小さくなるとみられるが、2018年中のマイナス成長が大雪、台風、地震など天候不順や自然災害による影響が大きかったのに対し、2019年1-3月期は天候が比較的恵まれている中でのマイナス成長である。また、成長率のマイナス幅が小さい理由は国内需要の低迷を受けた輸入の落ち込みであり、内容的にも悪い。

日本経済は2018年に入ってから横ばい圏の推移が続いていたが、2018年度末にかけて実態として大きく悪化したと判断される。
 
1 4/26までに公表された経済指標をもとに予測している。今後公表される経済指標の結果によって予測値を修正する可能性がある。
 

●主な需要項目の動向

●主な需要項目の動向

・民間消費~消費者マインドの悪化が消費を下押し~
 
民間消費は前期比▲0.1%と小幅な減少を予測する。

雇用所得環境は改善を続けているが、景気の先行き不透明感の高まりや食料品の相次ぐ値上げなどに伴う消費者マインドの悪化が消費を抑制したとみられる。
消費関連指標の推移 1-3月期の消費関連指標を確認すると、「鉱工業指数」の消費財出荷指数は前期比1.6%(10-12月期:同▲0.5%)と2四半期ぶりに上昇したが、「商業動態統計」の実質小売業販売額指数(小売業販売額指数を消費者物価指数(財)で実質化)は前期比▲1.5%(10-12月期:同0.8%)の低下となった。業界統計をみると、外食産業売上高が前期比0.8%(10-12月期:同0.6%)と堅調を維持したが、百貨店売上高が前期比▲0.8%(10-12月期:同0.3%)と2四半期ぶりの減少となった。
・住宅投資~駆け込み需要などから3四半期連続の増加~
 
住宅投資は前期比0.8%と3四半期連続の増加を予測する。
新設住宅着工戸数の推移 新設住宅着工戸数(季節調整済・年率換算値)は2018年1-3月期の89.7万戸から4-6月期に96.6万戸へと大幅に増加した後、90万戸台半ばの推移が続いている。利用関係別には、相続税対策需要の一巡から貸家は弱い動きが続いているが、持家、分譲住宅が持ち直している。

住宅は2019年3月末までに契約すれば、引き渡しが10月以降でも現行の8%の消費税率が適用される。このため、2018年度末にかけて一定程度の駆け込み需要が発生したとみられるが、前回の増税時に前倒しで購入した世帯が多かったこともあり、その規模は限定的にとどまった模様だ。
・民間設備投資~企業収益の悪化を受けて2四半期ぶりの減少~

民間設備投資は前期比▲1.8%と2四半期ぶりの減少を予測する。
設備投資関連指標の推移 設備投資の一致指標である投資財出荷(除く輸送機械)は2018年10-12月期の前期比1.9%の後、19年1-3月期は同▲5.8%の減少となった。また、機械投資の先行指標である機械受注(船舶・電力を除く民需)は2018年10-12月期に前期比▲3.2%と6四半期ぶりに減少した後、2019年1、2月の平均は10-12月期を▲4.8%下回っている。

好調な企業収益を背景に設備投資は堅調な推移が続いてきたが、海外経済の減速に伴う輸出の減少を主因とした企業収益の悪化を受けて、2018年度末にかけて弱い動きとなった。
・公的固定資本形成~2018年度補正予算の執行で7四半期ぶりの増加~
 
公的固定資本形成は、2018年度第1次補正予算の効果が顕在化したことから、前期比1.3%と7四半期ぶりの増加を予測する。
公共工事請負金額、出来高の推移 公共工事の先行指標である公共工事請負金額は、2018年10-12月期に前年比3.6%と増加に転じた後、2019年1-3月期は同5.9%と伸びを高めた。また、公共工事の進捗を反映する公共工事出来高(建設総合統計)は、2018年4-6月期以降、前年比で減少を続けているが、2019年1、2月の平均は前年比▲1.8%と、2018年10-12月期の同▲5.0%から減少幅が縮小した。

政府は、2018年度第1次補正予算に続き、2018年12月に閣議決定した「防災・減災、国土強靭化のための3か年緊急対策」に基づき、2018年度の第2次補正予算で公共事業関係費を大幅に積み増したほか、2019年度の当初予算でも公共事業関係費を2018年度当初予算比で9,310億円増(うち、臨時・特別の措置が8,503億円)、前年比15.6%の大幅増加とした。このため、2019年度入り後も公的固定資本形成は増加を続ける可能性が高い。
・外需~輸入が落ち込み、4四半期ぶりのプラス寄与~
 
外需寄与度は前期比0.3%(前期比年率1.3%)と4四半期ぶりにプラスになると予測する。財貨・サービスの輸出は前期比▲1.8%の減少となったが、前期の高い伸びの反動や国内需要の弱さを反映し、財貨・サービスの輸入が前期比▲3.5%と輸出以上に落ち込んだことから、外需は成長率の押し上げ要因となった。
地域別輸出数量指数(季節調整値)の推移 2019年1-3月期の地域別輸出数量指数を季節調整値(当研究所による試算値)でみると、米国向けが前期比2.6%(10-12月期:同4.3%)、EU向けが前期比▲1.7%(10-12月期:同5.0%)、アジア向けが前期比▲4.5%(10-12月期:同▲1.8%)、全体では前期比▲2.5%(10-12月期:同0.0%)となった。

米国向けは堅調を維持したが、景気減速が鮮明となっているEU向け、アジア向けが減少した。特に、アジア向けは2018年1-3月期以降、5四半期連続で前期比マイナスとなっており、2019年1-3月期は半導体電子部品などのIT関連の落ち込みを主因として減少幅が大きく拡大した。

 
日本・月次GDP 予測結果
 
 

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経済研究部   経済調査部長

斎藤 太郎 (さいとう たろう)

研究・専門分野
日本経済、雇用

経歴
  • ・ 1992年:日本生命保険相互会社
    ・ 1996年:ニッセイ基礎研究所へ
    ・ 2019年8月より現職

    ・ 2010年 拓殖大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2012年~ 神奈川大学非常勤講師(日本経済論)
    ・ 2018年~ 統計委員会専門委員

(2019年04月26日「Weekly エコノミスト・レター」)

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