2019年03月29日

中国経済:景気指標の総点検(2019年春季号)~景気の悪化は一旦止まった模様、経済成長の勢いは横ばいへ!

三尾 幸吉郎

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(図表-9)景気評価点の推移 【景気評価点は 景気悪化が一旦止まったことを示唆】
以上で概観した景気10指標を、それぞれ3ヵ月前と比べて上向きであれば“○”、下向きであれば“×”として一覧表にしたのが図表-10である。需要面をみると、固定資産投資が3ヵ月連続で“×”、輸出も4ヵ月連続で“×”と、減速傾向が続いた一方、小売売上高は5ヵ月連続で“○”となり加速し始めている。供給面をみると、工業生産は“○”と“×”が交互に生じ一進一退だが、製造業PMIは9ヵ月連続で“×”と減速が続いた一方、非製造業PMIは2ヵ月連続で“○”となり加速し始めた可能性がある。その他の景気指標をみると、電力消費量と道路貨物輸送量が“×”で、工業生産者出荷価格と通貨供給量が“○”と、加速・減速のいりまじった状況となっている。
以上を“○=1点”、“×=0点”として集計したものを筆者は景気評価点と呼んでいる。評価に用いた景気指標は全部で10種あるので、景気が上向きか下向きかの分岐点は5点となる。19年2月はその景気評価点が5点となり、景気の悪化が一旦止まったことを示唆している(図表-9)。但し、“やや減速”から“横ばい”に戻ったに過ぎず、今後“加速”領域に入るか、それとも“減速”領域に戻るかを示唆するものではない。
(図表-10)景気評価点総括表(○×表)

3.「景気インデックス」は 4ヵ月連続で横ばい!

3.「景気インデックス」は4ヵ月連続で横ばい!

最後に、中国経済に関する「景気インデックス」を紹介したいと思う。かねがね読者の皆様からは、「中国経済の動向をひと目で分かるような指標は無いのか?」とのご質問を受けることが多かった。しかし、それに自信を持って紹介できるような指標はなかなか見出せなかった。そこで、そうしたご要望に少しでもお応えしようと微力ながらも開発したのが、この「景気インデックス」である。「景気インデックス」は、工業生産、サービス業生産、製造業PMIの3つを合成加工したもので、「月次の景気指標の動きを経済成長率に換算するとどの程度か」を表示する形式を採用している。

ちなみに、その推計結果と経済成長率の関係をみると(図表-11)、17年前半まで概ね6%台後半で推移していた「景気インデックス」が、18年5月の6.83%を直近ピークとして低下し始め、11月には6.38%まで低下した。しかし、その後は6.3%台後半で小動きとなっており、ここもと中国の景気悪化には歯止めがかかり、経済成長の勢いは「減速」から「横ばい」に移行したと見られる。なお、「景気インデックス」をアトリビューション分析すると、工業生産と製造業PMIは依然として低下傾向を続けているものの、サービス業生産が持ち直したことで、経済成長の勢いが「減速」から「横ばい」に移行することとなった。
(図表-11)景気インデックスと経済成長率
 
 

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三尾 幸吉郎

研究・専門分野

(2019年03月29日「Weekly エコノミスト・レター」)

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