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働く女性のメンタルヘルス-何より経済・体力・時間の余裕のなさが悩みやストレスを増やす。若いと独身、40代以上は既婚者で悩みは多い?
生活研究部 上席研究員 久我 尚子
1――はじめに~働く女性が増える一方で、女性の就労環境には課題も多い
また、仕事と家庭の両立環境も十分に整備されているとは言えない。両立に関わる制度の利用状況は、正規雇用者か非正規雇用者かといった雇用形態で異なり、出産後の就業継続率にも大きな差がある。国立社会保障人口問題研究所「第15回出生動向基本調査」によれば、第1子出産後の就業継続率は、育休取得率が順調に上がっている正規の職員では69.1%だが、正規の職員と比べて育休取得などが難しいパートや派遣では25.2%に過ぎない。一方で制度の整っている正規雇用者でも、3割は出産後に退職している。これは、職場の環境整備は進んでいても、家庭の環境は必ずしも整っているわけではないということだろう。確かに、夫婦の家事・育児の分担を見ると、特に日本の家庭では妻への偏りが大きい(図表1)。夫婦ともにフルタイムで働いていても、家事・育児は妻に偏りがちな家庭は多いのではないか。
このような中で、悩みやストレスを抱えながら働く女性は少なくないだろう。本稿では、働く女性のメンタルヘルスの状況、具体的には悩みやストレスの有無やその内容、属性による違いについて、ニッセイ基礎研究所が昨年7月に実施した女性5千人を対象にした調査1を用いて分析する。
1 「女性のライフコースに関する調査」、調査時期は2018年7月、調査対象は25~59 歳の女性、インターネット調査、調査機関は株式会社マクロミル、有効回答5,176
2――働く女性の悩みやストレスの有無
はじめに、就業状態による違いを確認する。就業女性と非就業女性で悩みやストレスの有無に違いはあるのだろうか。
職場の状況別には、全体と比べて+10%pt以上多いものについて順に見ると「セクハラやパワハラを受けても告発しにくい」「休暇が取りにくい」「上司や先輩より先に帰りにくい」「残業の必要がなくても終業時間直後は帰りにくい」「部下や後輩より先に帰りにくい」「産休や育休の制度はあるが利用しにくい」「結局、長時間働ける人が評価されやすい」「時短勤務や在宅勤務の制度はあるが利用しにくい」があがる(図表4)。
3――働く女性の悩みやストレスの内容
普段の生活の中で悩みやストレスが「常にある」「しばしばある」と回答した女性について、その内容を見ると、25~59歳の女性全体(就業・非就業合計)で最も多いのは「収入・家計・借金等」(25.7%)であり、次いで「家族との人間関係」(14.1%)、「家族以外との人間関係」(10.3%)、「自分の仕事」(9.2%)、「自分の病気や介護」(7.3%)と続く。
働く女性について属性別に見ても、おおむね最も多いのは「収入・家計・借金等」だが、29歳以下や大学院卒、年収300万円以上、経済状態にやや余裕がある層では「自分の仕事」が最も多い(図表6)。
このほか就業女性全体と比べて、年齢が高いほど「収入・家計・借金等」や「家族の病気や介護」などの家庭生活に関わる悩みが多く、若いほど「自分の仕事」や「恋愛や性に関すること」など自分に関わる悩みが多い傾向がある。なお、若い年代の多い未婚者でも「自分の仕事」が多い。
最終学歴別には高学歴ほど「収入・家計・借金等」が少ない傾向がある。高専卒で「家族の病気や介護」が多いが、これは高専卒の内訳を見ると年齢層が高いためだ。さらに、年収が高いほど「収入・家計・借金等」や「家族との人間関係」、「子供の教育」が少ない傾向がある一方、「自分の仕事」は多い傾向がある。つまり、高学歴・高年収のハイキャリア女性では経済的な悩みや家庭生活の悩みは少ないかわりに、自分の仕事に関する悩みが多い。
このほか「部下や後輩より先に帰りにくい」職場で「家族との人間関係」が多い(図表省略)。
03-3512-1878
- プロフィール
【職歴】
2001年 株式会社エヌ・ティ・ティ・ドコモ入社
2007年 独立行政法人日本学術振興会特別研究員(統計科学)採用
2010年 ニッセイ基礎研究所 生活研究部門
2021年7月より現職
・神奈川県「神奈川なでしこブランドアドバイザリー委員会」委員(2013年~2019年)
・内閣府「統計委員会」専門委員(2013年~2015年)
・総務省「速報性のある包括的な消費関連指標の在り方に関する研究会」委員(2016~2017年)
・東京都「東京都監理団体経営目標評価制度に係る評価委員会」委員(2017年~2021年)
・東京都「東京都立図書館協議会」委員(2019年~2023年)
・総務省「統計委員会」臨時委員(2019年~2023年)
・経済産業省「産業構造審議会」臨時委員(2022年~)
・総務省「統計委員会」委員(2023年~)
【加入団体等】
日本マーケティング・サイエンス学会、日本消費者行動研究学会、
生命保険経営学会、日本行動計量学会、Psychometric Society
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