2019年02月08日

オフィス市況は一段と改善。REIT指数(配当込)は最高値を更新-不動産クォータリー・レビュー2018年第4四半期

金融研究部 不動産調査室長 岩佐 浩人

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4. J -REIT(不動産投信)・不動産投資市場

2018年第4四半期の東証REIT指数(配当除き)は、12月中旬まで底堅く推移していたがその後は内外株式市場の大幅下落を受けて、9月末比▲0.2%下落した。セクター別では、住宅(+1.0%)とオフィス(+0.2%)が上昇する一方で、商業・物流等(▲1.1%)が下落した(図表-19)。12月末時点のバリュエーションは、純資産9.5兆円に保有物件の含み益2.9兆円を加えた12.4兆円に対して時価総額は12.9兆円でNAV倍率は1.05倍、分配金利回りは4.2%で10年国債利回り(0.0%)とのスプレッドは4.2%となっている。
図表-19 東証REIT指数(配当除き、2017年12月末=100)
2018年のJ-REIT市場を振り返ると、東証REIT指数(配当除き)は6.7%上昇し2年ぶりに反発した(図表-20)。配当を含めた総合リターンは2ケタのプラスとなり配当込み指数は史上最高値を更新した。業績面では1口当たり分配金(前年比6%増加)や1口当たりNAV(前年比5%増加)が順調に増加し、概ねファンダメンタルズの改善に沿った値動きだったと言える。また、需給面では米中貿易戦争への懸念などから株式市場が調整局面に入るなか、REIT市場はリスクマネーの逃避先に選ばれて海外投資家を中心に資金が流入したこともプラスに働いた。
図表-20 2018年のJ-REIT市場(まとめ)
市場規模も順調に拡大した。銘柄数は4社の新規上場と2社の合併消滅によって計2社増えて61社となった。時価総額は前年比13%増の12.9兆円となり、東証1部の不動産業セクターに並ぶ規模へと拡大している。また、運用資産額(取得額ベース)は約18兆円(前年比9%増加)となった。市場全体では過去3番目の水準となる約1.8兆円の不動産を取得する一方で、現在の価格上昇を好機と捉えて過去最高となる約3,720億円の資産売却を実行した。取得物件についてアセットタイプ別にみると、オフィスビル(26%→37%)と物流施設(25%→29%)のウェイトが前年と比べて拡大した(図表-21)。不動産売買市場において物件の品薄感が増すなか、REIT市場ではスポンサーパイプラインが豊富なアセットタイプの取得が増加している。また、デットの調達環境も引き続き良好で、長期の資金を低利で調達できている(投資法人債の発行要件:期間8.6年、平均利率0.55%)。
図表-21 J-REITによるアセットタイプ別の取得割合
ニッセイ基礎研究所が今年1月に実施した不動産投資市場に関するアンケート調査によると7、現在の景況感について「良い」または「やや良い」と答えた割合は約7割となり6年連続で大幅プラスとなった。また、6ケ月後の景況感について「変わらない」と答えた割合が7割を占める一方で、「良くなる」または「やや良くなる」の割合から「悪化する」または「やや悪化する」の割合を引いた値(DI)は▲10と再びマイナスとなった(図表-22)。昨年と比べて景況感に大きな変化は見られないが、先行きに対する警戒感がやや高まる結果となった。
図表-22 不動産投資市場の景況感DI(現況、先行き)
 
 

(ご注意)本稿記載のデータは各種の情報源から入手・加工したものであり、その正確性と安全性を保証するものではありません。また、本稿は情報提供が目的であり、記載の意見や予測は、いかなる契約の締結や解約を勧誘するものでもありません。
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金融研究部   不動産調査室長

岩佐 浩人 (いわさ ひろと)

研究・専門分野
不動産市場・投資分析

経歴
  • 【職歴】
     1993年 日本生命保険相互会社入社
     2005年 ニッセイ基礎研究所
     2019年4月より現職

    【加入団体等】
     ・一般社団法人不動産証券化協会認定マスター
     ・日本証券アナリスト協会検定会員

(2019年02月08日「不動産投資レポート」)

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