2019年02月08日

オフィス市況は一段と改善。REIT指数(配当込)は最高値を更新-不動産クォータリー・レビュー2018年第4四半期

金融研究部 不動産調査室長 岩佐 浩人

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3. 不動産サブセクターの動向

(1) オフィス
三鬼商事によると12月の都心5区空室率は前月比▲0.10%低下の1.88%、平均募集賃料は前月比0.7%上昇し60ケ月連続でプラスとなった。12月は新規供給がなく(都心5区)、空室率は1991年末以来27年ぶりの水準に低下し、賃料の上昇ペースは年率8~9%に高まっている。また、他の主要都市でもオフィスの新規供給が限定的で需給が逼迫するなか空室率は低下し、賃料も上昇している(図表-9)。三幸エステート公表の「オフィスレント・インデックス」によると、2018年第4四半期の東京都心部Aクラスビル賃料は39,468円(前期比1.2%)となった。空室率が1%を切る水準となるなか、Aクラスビル賃料は5期連続で上昇し4万円台への回復が視野に入りつつある。

CBREの調査によると、東京では今後2年間で合計50万坪の供給が予定されているが、2018年末時点のテナント内定率は、2019年竣工ビルで8割、2020年竣工ビルで3割程度とリーシングは順調に進捗している。
図表-9 主要都市のオフィス空室率
図表-10 東京都心部Aクラスビルの空室率と成約賃料
また、森ビルの「2018年東京23区オフィスニーズに関する調査」によると、新規賃貸する理由として「業容・人員拡大(36%)」や「立地の良いビル(32%)」、「フロア面積が大きなビル(27%)」が上位を占めるなど前向きな移転ニーズが広がる一方で、「賃料の安いビル(19%)」は全体の7位と調査開始以来最も低い順位となっている(図表-11)。
図表-11 新規賃貸する理由(2010年~2018年)
(2) 賃貸マンション
東京23区のマンション賃料は上昇基調を維持している。三井住友トラスト基礎研究所・アットホームによると、2018年第3四半期は前年比でシングルタイプが2.3%、コンパクトタイプが3.4%、ファミリータイプが5.5%上昇した。(図表-12)。また、高級賃貸マンション(2018年第4四半期)についても空室率の低下に伴い賃料は上昇し前年比3.4%の17,183円/月坪となった(図表-13)。
図表-12 東京23区のマンション賃料
図表-13 高級賃貸マンションの賃料と空室率
(3) 商業施設・ホテル・物流施設
商業動態統計などによると、2018年10-12月の小売販売額(既存店、前年比)は百貨店が▲0.6%、スーパーが▲1.7%、コンビニエンスストアが0.1%となった(図表-14)。2018年全体では百貨店が▲0.3%、スーパーが▲0.6%、コンビニエンスストアが0.6%となり各業態とも横ばいであった3
図表-14 百貨店・スーパー・コンビニエンスストアの月次販売額(既存店、前年比)
全国61都市のホテル客室稼働率(2018年12月)は前年同月比横ばいの77.8%となった。2018年は自然災害の影響を受けた大阪や札幌の稼動率が一時大きく落ち込んだもののその後は回復し、全国平均でも前年並みの水準(81.3%)を確保した4(図表-15)。2018年の訪日外国人客数は前年比8.7%増加の約3,119万人となった(図表-16)。昨年7月以降、自然災害の影響により東アジアからの訪日客が減少し前年比の伸び率は1ケタ台にとどまった。政府目標である「2020年4,000万人」を達成するには今後年率+13.2%の伸びが必要となる。2018年の訪日客の旅行消費額は過去最高の約4.5兆円5、1人当たりの消費額は15.3万円となった。
図表-15 ホテル客室稼働率の暦年月次ベース(全国)
図表-16 訪日外国人客数(年間)
また、2018年の外国人の延べ宿泊者数は前年比+11%増加し、日本人宿泊者数の減少(前年比▲2.0%)を補っている(図表-17)。
図表-17 延べ宿泊者数の推移(月次、前年比)
シービーアールイー(CBRE)によると、首都圏の大型マルチテナント型物流施設の空室率(2018年第4四半期)は前期比▲1.3%低下の4.8%、近畿圏は前期比▲2.0%低下の13.0%となった(図表-18)。引き続きeコマース市場の拡大や物流拠点の集約ニーズなどを背景に先進的物流施設への需要は旺盛で、これまで空室の目立っていた圏央道エリア(首都圏)や湾岸部(近畿圏)において需給バランスが改善し全体の空室率を押し下げた。また、一五不動産情報サービスによると、2018年10月の東京圏の募集賃料は前期比▲0.9%下落し4,220円/坪となった6
図表-18 大型マルチテナント型物流施設の空室率
 
3 新聞報道によると、「2018年の百貨店の免税売上高は前年比26%増の3,396億円と過去最高を更新した。ただし、足元では中国当局の規制強化により、1月の免税売上高が前年比で2~3割落ち込んだ店舗もある」(日本経済新聞朝刊、2019年1月24日)
4 STR社によると、2018年の平均客室単価(前年比)は、全国(+2.5%)、札幌(+4.4%)、東京(+3.5%)、横浜(+0.3%)、名古屋(▲0.4%)、京都(+2.1%)、大阪(▲4.3%)、福岡(+1.7%)、沖縄(+5.3%)となっている。
5 今回から調査方法を変更(対象にクルーズ船客を追加)。仮に従来ベースの方法で推計した場合、旅行消費額は4.8兆円(前年比8.7%)となる。
6 J-REITが所有する物流施設の賃料は強含みで推移している。GLP投資法人(2018年8月期)の賃料増額改定(全体の78%)における上昇率はプラス4.5%、日本プロロジスリート投資法人(2018年11月期)の改定賃料変動率はプラス0.5%である。
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金融研究部   不動産調査室長

岩佐 浩人 (いわさ ひろと)

研究・専門分野
不動産市場・投資分析

経歴
  • 【職歴】
     1993年 日本生命保険相互会社入社
     2005年 ニッセイ基礎研究所
     2019年4月より現職

    【加入団体等】
     ・一般社団法人不動産証券化協会認定マスター
     ・日本証券アナリスト協会検定会員

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